29. ハイキングにて
「ふぁぁ〜............」
眠い。
それはそれはもう眠い。
まあ理由は単純に俺の心の友(自称)佐々木と夜遅くまで駄弁っていたからだ。
おもに恋愛面で。
そして面白いことを聞いた。
「佐々木、起きろ」
そういって佐々木の体を揺するが一向に起きる気配はない。
ならばと.............
「あ、奈々ちゃんじゃん」
「え!?奈々ちゃん!?」
佐々木はこれでもかというくらいに飛び起きた。
すげー。
魚がピチピチしてる時みたい。
「うっそでーす」
「古賀.........おまえ..........」
「お前が起きないのが悪い」
全くそのとおりである。
ちなみに奈々ちゃんというのは、古賀の好きな子の名前である。
クラスでもなかなかに美人と言われていて、落ち着いた雰囲気で優しそうなところがいいんだと。
ちなみに俺の目から見てみれば、奈々ちゃんも明らかに佐々木のことを意識しているので、告ればいけると思うのだが。
「そんなわけ無いだろ」
と、突っぱねられてしまった。
嘘じゃないのに............
まあそんな感じで、林間学校三日目が始まった。
◆ ◆ ◆
「よろしくお願いしますね!先〜輩?」
マジか。
「マジか」
「心の声が漏れてますよ?」
おっといかんいかん。
俺としたことがつい心の声が漏れてしまった。
まさかな。
あんだけあった班の中でたまたま日向と同じになるなんて。
「先輩!これって運命じゃないですか!?」
「あーはいはい」
「興味ないですね!」
偶然ではあっても運命ではないだろ。
そんなわけで、やかましい後輩と一緒な三日目が始まった。
◆ ◆ ◆
最初は森の中をハイキングする。
方向でいうと旅館から西に行った方角だな。
このハイキングというのは、厳密に言えばスタンプラリーである。
要所要所に問題がおいてあるので、事前に配られる用紙に答えを書いていくというもの。
班で動くため、班のみんなでの協力が必須になる。
「せんぱーい!」
そして俺の隣を日向が元気に歩いている。
相変わらず元気だなお前............。
そんな感じで俺達は森を歩く。
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「ふふん♪」
私、井上 日向は、これ以上ない幸福を噛み締めていた。
なぜかというのはいうまでもない。
あの先輩と同じ班になれたからだ!
もう嬉しすぎて思わず声を上げてしまったほどだ。
ちなみにめっちゃはずかしかった..........
そんなわけで、先輩と一緒にハイキングをしていた。
森と言っても、このあたりはしっかり整備されていて道があるため、危険はない。
「あ!ここから崖があるから気を付けてって書いてありますよ?」
私が見つけた看板は「ここから先崖あり。落下注意!」と書かれた看板だった。
「ほんとだな」
「先輩、落ちないでくださいよ?」
「落ちるかよばーか」
「あー!バカっていったほうが馬鹿なんです〜」
私はそんな何気ない幸福を噛み締めていた。
それからしばらく経ち...........
「あと2個くらいですね!」
「ああ、意外と長かったな」
私達は順調に問題を解いていき、残すところ2つになっていた。
「あ!あそこに一個ありますよ!」
「おい日向。危ないから走るな」
「大丈夫ですよ」
私は浮かれていたんだと思う。
先輩と長い時間一緒に入れてとても楽しかったから。
だから油断していたんだ。
でも、それに気づいたときには遅かった。
「日向!」
走りながら木の根に躓いた私の体は宙を舞い、先輩の声を最後に聞きながら急斜面に消えた。
あれからどれくらい経ったのかわからない。
一分かもしれないし1時間かもしれない。
それくらい私の時間感覚は麻痺していた。
たくさんの草があったおかげで、私は運良く木にぶつかることなく一番下まで転がり落ちた。
足がいたい。
体中が痛い。
まともに動くことができない
折れている感じではないが、良くても捻挫はしているだろう。
今が昼で良かったが、木に光を遮られあたりは薄暗かった。
私の頭に不安が募る。
「先輩に注意しといて、何やってんの私。バカみたい。はは......は......」
強がりを言って、余計に悲しくなる。
「先........輩........助けて......」
私の頬に一筋の涙が流れる。
「日向!」
ああ、ついに幻聴まで........
「大丈夫か日向!」
体を揺さぶられ、私は驚きの光景を目にする。
一番いてほしかった人。
声を聞きたかった人。
辛いとき、いつも一緒にいてくれた人。
綾斗は手を差し伸べる。
「先.......輩.........」
私の目に涙が溢れた。
ブクマまじでしてー




