19. 水族館っていいよな〜
晴れ渡る青空。太陽が肌を照りつけるほど暑い今日このごろ。
俺達は水族館に来ていた。
「うわー。綾ちゃん。おっきいね!」
「本当に大きいですわ。うちよりも少し大きいですわね。」
あの地獄のお説教のあと、真希さんのハーレム入りはかなり否定されていたが、俺のすきなところの言い合いになった際、通づるところがあったようで、ハーレム入りが許されたのだ。恥ずかし。
「マジででかいな。ちょっとテンション上がってきた〜。」
アレから二週間。今日は本来、俺の自由日。まあ、やらかしたから俺に拒否権はなかったけど。でも、せっかく来たからには楽しむしかないが?
俺は水族館がすきだったりする。あの魚の顔とかかわいいし、まだ5月にも関わらず例年より暑い今日に、冷房の効いた水族館は天国だ。でも、なんといっても水族館といえばイルカ。ジャンプとかかっこいいしな。
「やっぱ水族館といえばイルカだよな!」
「綾斗くん。ちょっと子供っぽい。そんなところも可愛くてしゅき..........」
なんか真希さんが言っているがスルーしよう。子供っぽい?俺はこのメンツじゃ一番年上っぽいと思うんだが?
まあそんな感じで俺達は水族館に入る。
◆
水族館特有の薄暗い空間。水槽にはカラフルなライトが取り付けられており、ただでさえ幻想的な雰囲気を加速させている。今日は明日が月曜ということもあり、そこまで人が多くない。
「この魚、かわいいな。このおちょぼ口とか。」
「すいません、美玲さん。私にはこの魚の可愛さがわかりません。」
あいかわらず美玲先輩と望海は仲が良い。この前もピンスタにいっしょにスラバを飲みに行ったとストーリー上げていたし。まあ、美玲先輩。俺にも可愛さがわかりません。
「みてみて!あの魚、そこでフニャッとしてて可愛い〜。」
「本当ですわね。」
結は夢といっしょに行動しているようだ。純粋✕純粋のあのペアは見ていてなんだか微笑ましい。あの周りだけ明るい気がするのはきっと気のせいだろう。
そして、当の俺はと言うと...........
「先輩!あっちに見に行きましょう!」
「綾斗、私、あっちの魚が見たい..........」
「綾斗く〜ん!かわいいお魚といっしょに写真取らせて〜。」
うむ。騒がしい。みんなやりたいことが違うのに全部に俺を誘ってくる。あ、俺が分身すればいいのか。忍法分身の術!そういえば俺忍法使えなかったわ。
「わかった!わかったから!順番に行こう。な?」
そう提案すると、みんなは納得したように頷いてくれた。
「じゃあまずは日向の方から行こう。」
そういって俺達は熱帯魚が泳ぐコーナーに向かった。
一方その頃............
「あれ?お兄ちゃんがいない...........」
「どこに行った?」
「あれ?あやちゃんは?」
「お母様たちもいませんわね。」
「抜け駆けされた!?」
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「うわあ、綺麗.........」
日向が目の前の光景に感嘆をこぼす。かく言う俺も、このきれいな景色に圧倒されていた。
皆さんは水族館の熱帯魚といえばどんな光景を想像するだろうか。俺は腰くらいにある土台に自分の方くらいの高さまである水槽を想像した。だがこの水族館は、俺の想像を遥かに上回ってきた。
足元から俺の身長の二倍はあるであろう水槽には、色とりどりの魚たちが優雅に泳いでいる。地面にはさまざまなサンゴが植えられており、まるで南の島の海に潜っているようだ。しかも、手前にあるボタンによって、照明をカラフルライトに変えられるというおまけ付き。この水族館がこの熱帯魚エリアに力を入れているのは、誰の目に見ても明らかだった。
「まじですげえな。いままでそこそこ水族館には行ってきたけど、熱帯魚がここまで綺麗に見れるところは初めてだ。」
「サンゴも綺麗ね。あ、綾斗くん。これを背景にみんなで写真を取ったら?私とるわよ?」
真希さんが俺にそんな提案をしてくる。でも、だめだ。それではいけない。俺は決断するときまで、みんなを公平に扱うって誓ったんだ。だから、ここで正しい選択は..........
「真希さん。」
「ええええぇぇぇぇ!?」
俺は真希さんを抱き寄せる。
「なに自分だけ遠慮してんですか。」
「だ、だって、私はあとからきた邪魔者じゃない。わがままを言っていい立場じゃないわ。」
俺と付き合いたいって行ったときはあんなに積極的だったのに、真希さんは真希さんなりに負い目を感じていたんだな。
「遠慮なんてしなくていいんすよ。俺が真希さんのことも好きになったんだから。」
「/////」
「それに、みんな幸せならそれが一番ですからね。」
そう言って俺はそこにいた見知らぬ人に近づいていき.........
「あのー写真撮ってもらってもいいですか?」
「あ、いいですよ~。」
快く了承してくれたので、俺達四人はポーズを取り始める。
俺は無難にピースを選択。と横から真希さんと灯が抱きついてくる。日向は俺の前で体重をかけるようにしてピースをしている。
「はい。チーズ。」
パシャッ
シャッターを切る音が聞こえて、俺達は体勢を戻す。
「これで良かったですか?」
「あ、はい!バッチリです!ありがとうございました。」
その写真には、満面の笑みの真希さんが写っていた。
写真を取ってもらったあと、もう一度熱帯魚を見て楽しんでいると、俺はあることに注意を惹かれた。
一匹のオスと思われる熱帯魚の周りに、メスっぽい熱帯魚が七匹寄り添っている。最初こそ、みんな仲良く泳いでいたものの、一匹のメスが周りのメスを追い払うような動きをし続けて、ついにメスは一匹になってしまった。魚の感情などわからないというのに、俺には追い払われた六匹のメスがとても落ち込んでいるように見えた。
「かわいそうだな。」
俺の心臓が鼓動を早くする。こころなしか胸が苦しい。わかっている。俺はこの魚たちに俺達の関係を重ねているのだ。
もし、3年生になって。
俺が選択することを余儀なくされたとき。
俺は、いったいどんな答えを出すのだろう。
みんなを幸せにすることができるのだろうか。
そんな不安のような、弱気な心がおれを支配する。
だが..........
『みんな、お兄ちゃんに救われたんだよ』
『あんたは優しい人。』
『私達のヒーローなんですわ。』
俺の頭に、かつて言ってもらった言葉が頭に響く。
俺はグッと拳を握りしめる。
いや、幸せにする。
みんなと約束したんだから。
どんな結果になっても、みんなを幸せにしてみせるって。
そうして俺は、みんなを幸せにする方法を考えるのだった。
一方その頃.........
夢、結side
「い、いない!」
「ほんとうですわね。はあはあ。」
「でもさすがに変なことはしないでしょ。」
「いえ、灯さんや日向さんはまだしも、お母様ならどこか暗いところに連れ込んで押し倒すくらいならしそうですわ。」
「それやばいじゃん!綾ちゃんの初めては私のなのに〜。」
「それは聞き捨てなりませんね。綾斗さんの初めては私のものですわ。」
「なにを〜?」
綾斗の知らないところで初めて争奪戦争が勃発していた。
美玲、望海side
「美玲先輩、相談があるんですけど........」
「ん?どうしたんだ?」
「実は.............お兄ちゃんのこと監禁しようかなって。」
「ちょ、ちょっと待った。聞き間違いか?監禁って聞こえたんだが........」
「はい。監禁です。みんなのことは私も大好きなのでいいんですけど、真希さんの例みたいにこのままにしておくとお兄ちゃんに堕ちちゃう人が出てくるのは不可避。なのでもういっそのこと監禁して、女の子に近づけさせないようにしようかと...........」
「待ってくれ。考え直してくれないか?それはちょっとまずいっていうか。」
「でも美玲先輩だって不安ですよね。真希さんが加わるとき、一番焦ってたの美玲先輩ですし。」
「うぅ。それはぁ.............」
「じゃあなんの問題もないですよね。みんなもお兄ちゃんも幸せになれますし♪」
「うぅ。綾斗〜。こいつを止めろ〜。」
水族館内に、生徒会長の助けを呼ぶ声が響いた。
水族館の暗い雰囲気は、陰キャな俺の領域展開なんだぜ?
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