18. 意外な対応
「また来ちまったな.......」
俺と夢は今、煌喜家の前にいる。どうしてこうなったのか?それを知るには今日の朝まで遡らなければなるまい。
◆
朝。窓から降り注ぐ光と柔らかい感触に覆われて、目を覚ます。だが、俺はそこでおかしなことに気付いた。
体が..........動かないのだ。正確には起き上がろうとしても起き上がれない。何事かとあたりを見回すと、俺の横には整った顔が、グースカ寝ていた。
「そっか。夢が来てたんだったな。」
だが、それは問題ではない。問題はこの状況だ。夢が俺に抱きついている。まるで抱き枕のごとく。すばらしいほど豊満に育った胸が俺の右腕に、遠慮なく押し付けられている。やばい。柔らかい。意識していないのに、右腕に全神経が働いてしまう。
「おい、起きろ。」
「むにゃむにゃ。」
むにゃむにゃて。現実世界でそんな寝言言うやついるんだ。夢は、心臓バックバクの俺の気なんていざしれず、めちゃくちゃ心地よさそうに眠っている。なんか起こしたくないような、でも理性的に起こさなきゃだめなような。そんな意見が俺の頭の中で飛び交う。結果................
(二度寝するか)
俺は再び眠りに落ちることを選択するのだった。
◇
みんなが起きて朝食。ちなみに、夢が起きて顔を真っ赤にして慌てふためいたのは言うまでもない。
「そういえばだけど、夢は今回は何で喧嘩したんだ?もちろん、言いたくないなら言わなくていいが........」
「お母様に綾斗さんがみんなに告白されて、保留にしていることがバレてしまったんですわ。それで綾斗さんを家につれてこいと.........」
なるほど?まあ、要するに娘が好きな男がたくさんの男といるのが許せないのだろう。あの夢大好き星人のことだしな。
「じゃあ行こうぜ。」
「いいのですか?」
「誤解を解くだけだろ?まあ実際今の状況はカオスそのものだからな。」
「わかりました。」
◆
そして現在。
放課後に煌喜家に来ているというわけである。今日は望海の日だったのだが、俺の唯一の自由日に遊ぶことで手を打ってもらった。
「はあ、ちょっと怖いなあ。」
「きっと大丈夫ですわよ。あの時から、お母様は見違えるように優しくなりましたから。」
まあ、最近の夢から話を聞いている限り、とても優しくなっているようだった。あれから一度も会っていないがきっと大丈夫だろう。大丈夫だよね?
「じゃあ、行くか。」
「はい。」
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「お茶をどうぞですわ。」
俺は今、リビングのお客ようのソファに座っている。対面には真希さんが。夢は今お茶を出してくれて俺の隣りに座った。
あたりを見回すが、このリビングのレイアウトもずいぶんと変わっていた。あのときにあった、堅苦しいいるだけで緊張するような気配は消えており、どこかほんわかとした雰囲気が漂っている。白を基調としていた壁はピンクに変わっており、まるでファンタジーの世界に入ったようだ。
「こんにちは、綾斗くん。」
「こ、こんにちは。」
真希さんが挨拶してくる。怒っている様子は.............ない。正直あんだけ好き勝手に言ったのだ。怒っていてもおかしくはない。
「さっそく本題に入らせてもらうけど...........」
その一言で、場の空気が一気に重くなった気がした。夢も貧乏ゆすりをして落ち着きがない。
「あなた、夢だけじゃなくたくさんの女の子から告白されてそれぞれとイチャイチャしているそうね。」
「は、はい。」
今聞かされてもかなりすごい状況だな。我ながら。
「お母様!綾斗さんは3年生に上がるときに誰と付き合うか決めるだけですわ!決してたらしこんでいるわけではありませんし、みんなのことを大切にしてくれていますわ!」
「夢は黙ってて。」
夢がとっさに俺のことをフォローしてくれるがどうやら効果がないようだ。
「綾斗くん?その話は本当なのよね?」
「は、はい。間違いありません。」
「そう、じゃあ..........」
真希さんはここで一度言葉を切って、再び話し出す。
「とても心苦しいのだけど...........その..............」
なんかもじもじしている。やはりこういう事を言うのは緊張するものだろうか。
「わ、私も!綾斗くんの彼氏に立候補するわ!」
...............................................
「へ?」
「はい?」
俺と夢は困惑の声を上げていた。
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「お、お母様!どういうことですか!」
「どういうことも何も私も綾斗くんが好きってことよ。だって、仕方ないじゃない。私達の問題を解消してくれて、夢の幸せを思ってくれて、しかもしかも、私の幸せまで思ってくれるなんて............。こんなの好きにならないわけないじゃない。」
「で、でも!お母様と綾斗さんでは年も離れていますし............」
「最近年の差婚なんてよくある話だわ。それに.............」
そういって真希さんは夢に、そして俺に小悪魔的な笑みを浮かべる。
「私の幸せはあなたの幸せなのよね?それに夢も綾斗くんも私に幸せになりなさいって言ったわよね?だったら私は綾斗くんが私と結婚してくれたら幸せだわ。」
「それは............」
「綾斗くん。だめ?」
うっ。でた。上目遣い。この人、前にあったときはよく見ていなかったけど、メッチャ美人だ。正直、俺が会った女性の中で一番かも。多分普通に俺の好みにどストライクなのかもしれない。黒髪でロング。凛とした佇まいで、大人っぽい。うん。最高。
「でも.................」
「別に無理なら無理でいいの。でも、私にもチャンスがほしいのよ。幸せになるチャンスが...........」
真希さんは、急に悲しそうな表情を浮かべる。でも、それも仕方のないことかもしれない。これまで自分のしたいことをたくさん我慢してきたんだから。だったら..........
「わかりました。いいですよ。」
「本当!?」
「綾斗さん!?」
俺は、この人のことが好きだ。夢のためを他人のためを心から思える人だっていうのは知っているし。それに..............
「俺、ずっと不幸だったから。でも、沢山の人に支えられて、今はメッチャ幸せだから。だから、誓ったんだ。俺と同じ不幸な人が、俺の行動で幸せになるなら、絶対に幸せにしてやるって。だから、その.........お母さんさえ良ければ。」
「もちろんよ!あと綾斗くん。お母さんはダメ。これからは真希って読んで。」
真希さんが頬をふくらませる。カワイ。
「は、はい。あの、真希さん。」
「ふふ、なあに。」
やばい可愛すぎる。もう今すぐに抱きしめたい。と思っていたら、思いが通じたのか真希さんの方から抱きついてきた。
「あーやとくーん。」
「うわ!」
「うふふ、綾斗くんすきすきー。」
かわよ!なんかいつも凛としていて大人っぽい分、こういうふうに甘えてくるのがマジで可愛い。ギャップ萌えってやつだ。
「..........これは、皆さんに報告しなければ。」
なんか夢がボソボソ行ってたが、まあ、大丈夫だろう。
そうして、俺は真希さんと心ゆくまでキャッキャウフフしたのであった。
3時間後。
「お兄ちゃん?」
「綾斗さん?」
「綾ちゃん?」
「綾斗?」
「先輩?」
「あ~や〜と?」
俺は、オールスターズに囲まれていた。その円の外には真希さんがいる。俺は.............人生で一番の殺気を感じた。
ついに増えましたねぇ。ヒロイン。お母さん属性大好き。




