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10. 調味料は慰めと恋だけで

俺は綾斗に救われた一人だ。


結も夢さんも灯も日向も望海ちゃんも、会長も。


みんな綾斗の優しさに触れて、綾斗のことが大好きになったからそばにいる。


だからうれしいんだ。俺のヒーローがずっとヒーローやってて。


たくさんの人を救っているって。


それだけで嬉しくなる。


俺が救われているわけじゃないのに心が暖かくなる。


俺はみんなに綾斗のことについてもっと知ってほしいんだ。


とてつもなく優しくて、他人のためなら自分を犠牲にする。そんな自慢の親友のことを.......。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜の小道は、もう春だが少し肌寒い。


半袖で来たけれど、上着を持ってくるべきだったか。


俺はふと、空を見上げる。


星が綺麗に光っている。あれは1等星、いや2等星だな。


中央に、ひときわ目立つ1等星。その周りには、2等星や3等星が星屑のように散りばめられている。


「なんか、俺達みたいだな。」


ふと、思ったことを言葉にする。


すると、みんなも空を見上げる。


「ほんとだね」


「綺麗.......。」


みんなが次々に感想をつぶやく中、俺は一つのことについて考えていた。


(1等星とか2等星とか、どっちが劣っているとかじゃなく、どちらも良さがあって悪さがある。この風景は、1等星がなくても2等星がなくても成り立たない。俺達もそんなふうになれたらいいな。)


そんな突拍子もない事を、俺はなぜか心から思っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一週間後、ついにテストの日が訪れ、今日は返却の日。


木々のざわめきがいつもよりも一層うるさい気がする。


今日の天気は快晴。窓の外には晴れやかな青空が広がっており、まるで俺の心の中を表しているようだ。


きっと俺の満点のテストを歓迎してくれているのだろう。


同じクラスなため、みんなの様子がうかがえるが、灯と一樹以外は緊張しているようだ。ん?俺?してないけど?


まあそんなわけで、順調にテストは返されていき......


放課後。


「「「せ〜の!」」」


3人は答案用紙を一斉に出す。


今ここにいるのは、俺、灯、一樹とバカ三兄弟だ。


机に一斉に広げられる答案用紙たち。


3人は食い入るように答案用紙を見ている。まるで肉食獣の目だ。


遥斗は余裕をもって平均60くらい。やればできるのだあいつは。やらないけど。夢もそこまでやばいのはない。問題は結だが.......危ない教科が3教科くらいあるものの、赤点は取っていなかった。


「「「や、やった」」」


3人はまだ答案を見ていなかったらしい。三者三様安堵の息をついている。


一区切りついたようなので、俺は声を上げる。


「これで、安心して遊びに行け.........。」


そこで俺は固まった。理由は簡単。灯が急に肩を掴んできたからだ。それもそこそこ強い力で。


「ど、どうしたんだ。灯。」


「ごめん。」


灯は唐突に謝る。


俺は、灯に謝られるようなことをされた覚えはない。強く掴んできたことだろうか?


灯は無言のまま俺に答案用紙を突き出し見せてくる。社会29点。惜しくも赤点だった。


「なんで.......。」


窓の外の風は、強くなり、木々が枝を盛大にしならせている。朝まで快晴だった青空は少しづつ曇りつつある。


あの頭の良い灯だ。普通にやってこの点数になるとは思えない。何かきっと理由があるはずだ。


「なんでこんな点.......。」


「書く欄を一個飛ばしちゃってたの〜。」


灯は明るく言った。


答えは全部合ってるのに。本来なら100点だったろうに。なのに何でなんで、灯は笑っているのだろう。きっと悔しいはずなのに、悲しいはずなのに。灯は笑顔で俺達へという。本人は隠しているつもりかもしれないが、顔に影がさしているのに俺は気づいている。


「だからごめん。私は行けないけど、みんなで楽しんできて。」


灯は笑っている。でも、つよがりであるのは俺の目から見れば明白だった。


「灯。」


俺は少し声のトーンを落として言う。


「強がらなくていい。お前を残して俺達だけ遊びに?そんな事するわけないじゃねえか。お前は俺達の大事な友だちだ。信頼できる仲間だ。ちょっとむず痒いが、お前の努力を一番近くで見てきたのは俺だ。あんだけがんばって報われないだなんて。そんなの悲しいじゃないか。」


「そうですわ。あなたは私のライバル。こんなところでへこたれる女じゃないはずですわ。」


「綾斗、夢。」


他のみんなも頷いている。灯は今にも泣き出しそうだ。


「大丈夫。俺も一緒に補修に行くよ。一人だったら辛いかもしれないけど、二人だったら楽しいだろ?」


「うぅ、ありがとう綾斗。みんなも。うぅぅうあああぁあぁぁん。」


ああ、この人はいつもいつも、なんでこんなに優しいんだろう。少しも嫌な感じを出さず、いや、実際嫌じゃないのだろう。当たり前のように救いの手を差し伸べる。たとえ自分が犠牲になろうが、他人の幸福を考える。今回だってそうだ。綾斗だって遊びたいに決まっている。なのに、なんでもないかのように.........。


ああ。


想いがあふれる。


とめどなく溢れてくる。


もう止まらない。


「すき。綾斗。大好き。すきすきすき。付き合って。」


「へ?」


思わず告げてしまった。私の気持ち。


私の気持ちを聞いて、綾斗は困惑している。そんな顔も今は愛おしい。


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