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葵の修羅  作者: シト
第一部 初陣
4/99

4話 流's class1

「あ、うん。分かった。そうしてみるね」


 凛桜は榊の言葉に、笑顔で頷いて返した。


「おい、そこの黙ってる2人も話に入ろうぜ。流石に親睦は深めとかねーと、これから長い付き合いするかもしれねぇし」


 焔がそう言うのに周りの3人も頷いて同意を示した。


「そうだな。これからは一緒に戦うってこともあるかもしれないから……」

「そう言えば、そんなニュアンスだったな、あの……土岐とかいう人の話だと」


 少し物憂げな表情で白亜は言った。その言葉に、前を思い出す様に上を向きながら、焔がそう呟いた。


(こっちはそれが前提で来てんだよ……)


 榊はその呟きにそう考えたが、特に言葉にするはなく、ただ焔に視線を送るだけに留めた。


「え、えっと何を話せば良いんでしょうか……」


 澪は困った顔でオロオロとしながら話しかけてきた。やはり、どこか怯えている様だった。


「うん、そこでみんな困ってるんだよね。何話そうか。 これが決まらない」


 榊は澪の言葉に、腕を組んで頷いた。澪は目を見開いて榊を見つめるだけだった。

 そんな榊に、焔が脇腹を肘で突いた。


「お前が何か出せよ! 話題!」

「じゃあお前も少しは考えろよ。俺だけじゃ普通に無理だわ何か案出すの」


 焔の言い振りに、榊は半目になって睨みながら反論した。


「えーっと、一応聞くけど君たち本当に初対面? その

ノリはただの友達のノリだけど……」


 白亜は言い合っている2人に眉間を揉みながらそう言った。どう扱うべきか悩んでいる様だった。


「あ、それ私も思った。こんなすぐに仲良くなれないよ普通は」

「あ、えっと、私もそう思います」


 凛桜と澪も白亜に同意を示した。

 榊と焔は顔を見合わせた。


「「全然、初対面だけど! 何か?!」」


 榊と焔は示し合わせたかのように、同じタイミングで凜桜達の方を向くと、声を合わせて言った。


「仲良いな。君たち」


 白亜は思わず笑いながらそう言った。その反応に、焔と榊は笑い合う。


「やっと笑ったな」

「ずっと固い顔してたからな」


 榊と焔はそう言うと、ハイタッチして喜んだ。

 そんな二人に、白亜は毒気を抜かれたようで、すっかり肩の力が抜けていた。


「まぁ、それは置いといて、青影は、何か話そうぜ」


 榊は久龍に話しかけた。

 久龍はそんな誘いに首を振った。


「いや、僕はいいよ。話すの苦手だし……。初対面の人とは結構キツい」


 久龍は一瞬だけ顔を上げたが、また下を向いた。


「う〜ん……。まぁ、そのうち仲良くなれるか!」

「そうしとくか……」


 焔と榊は仕方なさそうにそう頷き合った。

 すると、部屋のドアがガラガラと音を立てながら開た。


「さて、仲良くなれたかな? それでは、こっちの世界での常識について、授業をしていきたいと思います!」


 流が笑顔で部屋に入ってきた。


「あ、やっぱり、学校とかそういう感じのテンションな感じですか? ここって教室みたいな感じですか? 先生って呼んだほうがいい感じですか」


 榊は先生のように何やら書類を持ちながら入ってきたのを見てそう言った。


「呼び方は君たちの自由で良いよ〜。好きな呼び方で。隊長でも、流さんでも、先生でもどんとこ〜い。」


 流はその質問に、変わらず笑顔で答えた。


「じゃ、流さんでいっか。これが1番呼びやすいような気がするんで」


 榊はあっさりと自分で呼び方を決めて落ち着いたようだった。

 そんな折に、焔が言葉を挟んだ。


「僕もそれで良いです。でも、本当にいいんですか? そんなふうに呼ばせて……」


 焔は、優等生モード全開にして流に言った。

 榊たち五人の顔は、よくやるなと苦笑気味だった。


「あ〜焔くん? 別に僕の前でそんな優等生の振りしなくて良いからね? もう分かってるし。君、そういうキャラじゃないでしょ?」


 流は苦笑しながら焔にそう言い返した。


「な! 俺の優等生風な外面が、バレた、だと? 学校とかじゃバレなかったのに!」


 焔はショック受けたようで、頭を抱えた。長らく使ってきた外面らしい。


「いや、君たちの会話は、外で全部聞いてたから。そりゃ分かるよね。うん……、何かゴメンね」


 申し訳無さそうに謝りながら流は頭を下げたのだった。。


「そんなことはさておき」

「さておかれた!」

「こっちの世界での話をしていきたいと思います。みんな薄々気付いてると思うけど、元の生活には戻れません。というか、向こうでは君たち死んだことになってるから、普通に知り合いと出会ったら大変なことになるからね。気をつけてね」


 焔の叫びを意にも介さず、いつも以上のキラキラな笑顔で流は伝えた。


(コイツ、今更めっちゃ大事なことを笑顔で話し始めやがった!)


 これがここにいた彼らの総意であった。


「さて、こっからは防衛隊になるに当たって、とっても大事だからよく聞いてね? じゃないと君たち死ぬよ?」


 これも流は笑顔で言った。

 この瞬間彼らにはある種の諦めが浮かび上がってきた。


(あ、この人思ってる以上にヤバい人だ……)


 最初に関わり、助けられた人がこんな様子では、こうなるのも仕方ないと言えよう。


「この対幻魔防衛隊っていうのは、君たちの家族が殺されたり、襲われたりしたような天使や普段はあまり出てこないけど、悪魔や妖怪などから一般人を守るために作られた組織だ。そういった者たちの総称を幻魔と言うんだ。そして、ここはその対幻魔防衛隊の九州支部、通称"朱雀隊"と呼ばれている所だよ。」

「流さん、なんで朱雀隊って呼ばれてるんですか?」


 流にこう質問をしたのは、焔だった。


「いい質問だね。それはだね、ここの敷地は、聖獣である朱雀の加護を受けているからなんだ。あと、ここの壱番隊隊長は、その聖獣の術を使って戦うからね。それはこの僕だ!」


 流は自慢気に言った。


「あ〜、はい。すごいすごーい」


 茶化したような反応を示したのは、榊だった。


「うわ、ひど! 君たち今までにないような辛辣さだよ…… まあ、それは置いといて、他にもこんなふうに呼ばれていて、中国・四国支部が"白虎隊"、中部・関東支部が"青龍隊"、東北・北海道支部が"玄武隊"、近畿本部が"鳳凰隊"って呼ばれてるんだ。これはまぁ、方角に則ってるていうのもあるらしい。どうだ! なかなかカッコいい名前でしょ」

「そうですね。めっちゃ厨二病みたいだ!」


 流が目を輝かせて言うのに元気な反応を返したのは、焔だった。


「またヒドイな〜。でも君たちもこれからは、こちら側の人間なんだから、厨二病とか言ったら、殺されるよ? 冗談抜きで」


 真顔で流が言った。最後だけは殆ど声のトーンが一定だった。


「またまた〜。嘘でしょ?」


 榊が笑い飛ばしながらそう返す。

 流は真顔のままで、黙ったまま何も返さない。

 流石に心配になった榊は、身を乗り出して流に尋ねる。


「え、マジで?」

「マジで……」


 流は榊の確かめる質問に、ただ頷くことで返した。


 部屋には、沈黙が下りた。


 流による授業は、まだまだ続く。

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