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葵の修羅  作者: シト
第一部 初陣
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1話 普通の日常にさよならを

追記:9月1日 加筆修正が始まりました。見ていくと加筆修正が間に合ったところと間に合っていないところがあります。面白がりながら読んでください。

 荒廃した世界の中、1人だけで倒れている者がいた。その者は、瀕死の重傷を負っており、今にも死にかけている。

 その者は、今、走馬灯を見ていた。その結果が、この死にかけている状態だ。これがハッピーエンドなのか、バッドエンドなのかも分からないし、決めることもできないでいる。

 物語を始める前に1つ、これはある1人の男の走馬灯だ。必死に戦って、大きな犠牲を払いながらも、生き抜いた男の。戦った期間は、彼の人生の中では、短いが、それがほとんどの彼の人生の意味と言っても過言ではないような、そんな物語だ。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 九州のどこか、1人の高校生がいた。彼の名前はあおいさかきという。榊は、この春から高校生1年生になった男子高校生だ。榊に自分のことを言わせてみると曰く


「俺は顔もそこそこ、頭もそこそこ、運動神経もそこそこの普通の男だ」


 なのだそうだ。ただこれはあくまでも本人の談であり、周りから見れば違うのである。顔は世間一般的に見ればなかなか整っている方であるし、成績も常に一桁の順位をキープしているし、運動神経に至っては、帰宅部なのに部活動生に、その種目で勝ってしまうという普通で収めるには少々難しく思える様な人だ。


 そんな彼は、5月に入り、高校にも慣れてきて友達もできてきて、やっと学校が楽しくなってきたところだ。

 そんな頃のことだ。


 その日もいつも通り、榊は学校で0限から7限まで授業をみっちり受けて、疲れ果てつつ、家に帰っていた。

 いつもならば、友達と寄り道して帰るところではあったが、今日は父親から早く帰ってくるよう言われたので、いつもより1、2時間早く帰っていた。


 その時、榊は違和感を感じた。


「あれ? 5月ってこんな暑かったっけ?」


 と思わず呟いてしまったようだった。だが、その感情は、曲がり角を通り過ぎ、自分の家が見えたところで、驚きと困惑に変わる。


 何故なら、彼、榊と家族の家が燃えていたのだ。その炎は、とてもきれいな色をしていた。


(は? え? なんで俺の家が燃えてんだ? しかもあの炎の色、めっちゃキレイ……、いやいやそんな場合じゃないだろ)


 榊が思わずそう思ってしまうほどだった。だが、ふと我に返る。


(あれ? 今日お母さん仕事休みだよな。ヤバい。急いで無事か確かめないと!)


 榊は急いで燃えている自分の家まで走った。


 数分後、榊が家に着いたとき、そこには天使がいた。それはまさしく、天使以外に形容しようがない程に天使だった。女に見えるような顔、古代ギリシャのような真っ白な服、そして背中の純白の翼。その天使は、笑っていた。しかも、燃えている榊の家を見て、だ。


(え? 天使? でもなんで笑ってる? 何なんだよ、アイツ!)


 榊は明らかに疑問と怒りを覚えた。


「おい! お前何笑ってんだ! 人の家が燃えてんのがそんなに面白いか! お前は誰だよ」


 榊は怒りをそのままその天使にぶつけた。


 すると天使はこちらを向いた。


「ん? あぁ、この家はあなたの家でしたか。てことは、君は……」


 そう言うと、途中から黙り込んでしまった。


「はぁ? お前人の話聞けよ。人の家が燃えてんのがそ

んなに面白いかって言ってんだ。」

「あぁ、すみません。いや、別に面白いとかそんなことは無いですよ。笑うしか無いだけで」


 榊か再び天使に問い掛けると、天使ははぐらかして碌に答えなかった。


 榊は困惑した。


「はあ? 意味が分かんねえよ!」

「いや、まぁこれには事情がって言ったところで意味もないですね。 私達の目的はこの家の家族を皆殺しすることですし。家にいた1人はもう殺しましたから、あとは、4人か。いや、目の前にいるからあと3人か……」

「は? お前何言ってんの? 皆殺し?」

「それはもうあなたには話しても意味がないか……どうせ殺すし」


 榊は、今しがた天使が言ったことを考える。


(うん? 今、家にいた1人は殺したって言ったか? ってことは……)


 そこで榊は、本人に聞いてみることにした。確実に、これだけは確かめないといけない。


「今、お前家にいた1人は殺したって言ったよな。どういうことだ?」

「どういうこともそのまんまの意味ですよ? 中にいた女性は殺しました。叫び声すら上げる間も与えず、私が喉を掻き切りました」


 天使は笑いながら答えた。


「は? マジかよ……」


 それを聞いた瞬間、目の前が反転したような、そんな感覚に陥った。榊の頭の中では、今朝の母親のことを思い出していた。


 いってらっしゃいと出かける前に言ってくれたこと。

 弁当を作って持たせてくれたこと。


 だが、それは、その日々はもう戻ってこない。目の前の何かに壊されてしまったのだ。


 近くのきれいな色をした炎が燃え上がった。

 自分でも頭に血が上っているのがよく分かる。手のひらに爪が食い込む。今すぐに目の前のコイツを殴りたい。その一心だった。


「クソが……お前だけは、絶対に許さねぇ」

「いや、別に許してもらおうとかは全く考えていないですし。まぁ、もうそろそろいいでしょう。あなたの母親と同じところに送ってあげますよ。」


 その瞬間、榊の体が吹っ飛び、家の塀に叩きつけられた。塀がミシミシと音を立てる――これは間違いだ。これは榊自身から出る音だった。

 塀にはヒビが放射状に入った。


 榊は地面にズルズルと倒れ込むと、そのまま蹲った。身体中に痛みが走っている。


「かはっ……ぐっ」

「まぁ、流石にこの程度じゃ死にませんよね」


 天使は、そう言って、腕を組んで頷いた。


「は? お、お前、今何を……」

「まぁ、見えませんよね。普通の人間ですし……」


 榊はヒビが入ってしまった塀と急に飛ばされた身体に驚き唖然とするが、天使はただ頷くばかりだった。


(くっそ! 体が動かない! 今すぐにコイツを殴りたいのに……)


 榊は動かない体をぎこちなく無理やり動かしながら、こう思った。


「そりゃ、あなたはこちら側の人でもないですし……うん? 不味いな……掌上の土岐か。ここで一戦交えるのは分が悪いですね……ここは退くことにしましょう。貴方はいずれ、私が殺しますよ」


 それだけ言い残し天使は、消え去って行った。


「え? 消えた?」


 榊は死を覚悟していたようだったが、生き延びていたことに驚いていた。それと同時に、逃してしまった自分に怒りを覚えた。


「生きてる方〜。どなたかいらっしゃいませんか〜」


 何処か間延びした様な声が聞こえた。

 燃えている家は一軒だけだというのに、周りには沢山生きている人がいるだろうに、そう尋ねる声が家が燃える音と共に聞こえる。


「あ、いましたね。うん、骨折数か所だね。これぐらいなら安い安い。さて、君を襲ったのは何だった?」


 どこからともなく現れた優男風の男性がそう言った。

 榊は唖然として答えることが出来なかった。


「まぁ流石に話す余裕は無いか。さて、僕は対幻魔防衛隊九州支部壱番隊隊長の土岐ときながれだよ。君の名前は?」

 初投稿でありますので、少々甘めに見ていただけると幸いです。

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