第309話 決着の時
楽しんでいってください。
フェンは、立ち上がり剣を強く握る。
いつでも、攻撃をできるように構えてきた。それが開戦の合図となったのだ。
剣と剣がぶつかり合う。フェンの剣は、何度も弾き飛ばされながら、なんとか食らいついてるような動きだ。
「極・剣斬」
フェンの攻撃は、簡単に流され、攻撃が決まらなくなっている。それどこらか、手を抜かれているような感覚に陥ってしまうほどだ。
そして後悔したのだ。あの魔法を撃ったことを。
最初は、ロードと邪魔されずに戦えると喜んでいた。それなのに、体は思った以上にボロボロだった。
「どうした、もう終わりか?」
何も言い返すことができなかった。それは、身体的にもきついのもあったが、われの不甲斐なさに絶望していたのだ。
……
先ほどからフェンの様子がおかしい、それどころか剣にまるで力が入っていない様子である。
そんなことは、わかっていたつもりだ。仲間たちが必死に繋いでくれたバトンなのだ。
それを無駄にすることはできないのだ。
「フェン、今の俺はすぐにでもお前を殺せる」
これは、紛れもない真実だ。
それは、フェンもわかっているはずなのだ。
「そんなことわかってる。だがな、これでも魔王と呼ばれた存在なのだ、こんな簡単にはくたばれないのだ」
フェンのプレッシャーが一気に跳ね上がる。これが最期になると覚悟しているかのような、プレッシャーだ。
その覚悟を無碍にすることなど、あってはならない行為。
「その心意気、受けてたとう」
「感謝するぞ、ロード!!」
フェンの剣が一気に、魔王らしい一撃を放つようになっていく。
それに完全に応えるかのように、剣技で返す。
それは、今後一生味わえない感覚だと、この時理解したのだ。
この戦いがずっと続いてほしいと、願ってしまいたくなる心地よい時間だ。
それでも、時は残酷なのだ。
だからこそ、これは美しいのだと思うのである。
「神速式・ソードインパクト」
「極・龍突」
真っ向からのぶつかり合い、それに耐えきれずフェンの体から、血が放出される。
傷が開き、目が霞んでいるような動きになっていく。
「まだ、くたばるじゃないぞ! まだまだこれからじゃねか!」
フェンも、ニヤリと笑いそれに応えるかのような一撃がロードを襲うのだ。
「――痛いな、やっぱり。それでもまだ足りねぇんだよ」
血が騒ぐ。
もっと、もっと、戦い足りない。
「フェンとメグには感謝しないとな。こんなこと村ではできなかったから」
ロードは、高らかに笑う。テンションの情緒がおかしくなっている。
「お前たちはイカれてるよ」
「ありがとさん、聖女の願い発動!」
ロードのプレッシャーは跳ね上がり、全てにおいて魔王フェンを上回る強さで圧倒していく。
「――まだ負けるわけには行かないんだ」
フェンは、必死に抵抗していくがそれは虚しいほどまで決まらない。
完全に、立場が逆転していた。
「フェン、これが最後になりそうだ」
ロードの剣が凄まじい光が、覆っている。
頭の中でソードメモリー使用可能と何度も呟かれている。
「まだ終わらせねぇぞ! 極・斬!!」
「楽しかったぜフェン、ソードメモリー!!」
フェンの技ごと斬り裂き、フェンは胴体真っ二つになった。
下半身は消滅し、上半身だけが地面に落ちる。
「ロード、オマエと戦えてヨカッタ、ありがとう」
「俺も同じだよ。また地獄でもあった時は、その時はサシで殺ろう」
「あぁそれもいいな。マモノ狩りをシヌマデタノシムガヨイ。さらばだ」
そうして魔王フェンは、消滅した。
そして扉から、久々に聴く彼女の声が決戦の部屋に響く。
「ロード!! 倒したんだね、楽しかった?」
「あぁそれはもちろん」
メグは、俺を抱きしめた。
ただ、抱き返す余力は、これっぽちもない。
そして、体は限界を迎える。
柔かな胸に沈み込んでそのまま意識を失うのであった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
極・龍突、龍が全速力で突進してくるような勢いの技。
極・斬、ただ、剣を振り下ろした技。ただそれは、全てにおいて基本となる技なのだ。




