第114話 ナバラとの稽古(カレン編)
楽しんでいってください。
朝。武道場に行くともうカレンさんは待っていた。私も、約束の時間より1時間早く来たはずだ。
それより前に待っていることに驚きを隠せなかった。
「おはようございます」
「おはよう。ロードから聞いてたけど、1時間前から来てるなんて偉いね」
カレンさんは、今日はとても元気そうで嬉しそうな表情をしている。
連日のトップとしての仕事で疲れていると思っていたが、そうでもないんだと改めて思う。
「ナバラ!!今日から2日間よろしくね。ビシバシ行くからね」
「望むところです。よろしくお願いします」
完全に打ち負けている状況が続く。どう挑んでも完膚なきまでに叩きのめされている。
強い。これだけで説明が付くレベルで強い。たった数分戦っただけで心が折れそうになってしまっている。
ダメだ、ダメだ。弱気になってたら勝機を見逃してしまう。どう攻撃する、どう動く、考えろ、考えろ。せっかく時間を作ってくださったカレンさんにも失礼だ。立ち向かわないと何も得られない……。
そんな時だった。
背筋がゾクっとしてハッと考えを辞めた。
繰り出されようとしている右ストレート、あれ喰らったらダメだ。
死という文字が頭を一瞬で支配した。
思わず、私は「加速」と叫んだ。
怖かった、今の一撃に恐怖した。段々と息が速くなる。
「ごめんね、今の一撃怖かったでしょ」
「はい……」
「ロードに頼まれたのよ。ナバラは圧倒的な実力差を誇るやつでも、飛び込んでいってしまうって」
確かにそうだ。スケルトンの時も防御で皆んなを逃すのを優先させた。あの時の最適解は転移だ。
転移をしてから、テレパシーで助けを呼べば良かった。あの時の自分は、自分の実力を過信して行動をしていた。
そして、私は怪我を負った。ロードさんたちの到着が遅ければ、全員死んでいた可能性があったのだ。
私は、無自覚みんなを危険に巻き込んでしまった……。
「はい!暗くなるのはそこまでにしなさい。貴方は今回私の一撃で死というイメージで逃げた。それを大切にしなさい」
「でも、それでは他の人に迷惑を掛けるのでは」
「逃げるのも立派な戦略だよ。それを報告、連絡、相談することは大事なことなんだよ。ちなみにこれを報連相という」
逃げるのも戦略。そこから立て直すことだって出来る。そして誰かを頼り信頼するのも大切。
「カレンさん、もう一度お願いします!!」
1日目。最初は、完全に私のペースだったけど教えてから逃げる所は逃げる、それからどう立ち向かうかを上手くやれていたと思う。
ナバラは、あの環境下で逃げることが出来なかった。最終的には、正気を奪う行動に移ってしまってた。それで彼女の平穏は、保たれたかというと違う。
でも、今のナバラは本当に学校に来させて本当に良かったと思っている。
今日の出来事を話すとロードは、安堵した表情を浮かべた。
明日は、もっと実践的な動きでやろうと思い早めに眠りにつくのだった。
翌日。今日は生憎の雨模様。まぁ稽古にはなんら影響はしないが、多少なりとも心は沈んだりする。
武道場では、雨になんか負けないぞと言わんばかりな元気な声を発しながら、準備体操をしている姿がある。
「ナバラ、おはよう。今日は一段と早いね」
「カレンさん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」
ナバラは、拳も足も両方いい攻撃が出来ている。どちらかだけを伸ばすこともできるだろうし、両方とも鍛えることが可能。
「ナバラは、拳も足も強いから両方とも攻撃、防御どちらでも使えるように稽古しようと思うわ」
「わかりました」
早速、組み手をしてみた際すごく良いコンボで繰り出してきており、つい熱が入りすぎて強くやりすぎてしまった。
だが、防御、受け身をとっておりまだまだやれますと、言わんばかりで構え直していた。
私もそれに応えなければ、指導者失格だ。
一気に詰め、右ストレートを繰り出す。ナバラは、すぐさま下がりタイミングを見て詰めよりカウンターを決めた。
ナバラにとっては、初めて与えられたダメージだ。それを過信せず、一旦様子を伺ってから攻撃に入った。
そうして続けていき、初めて組み手をした時よりも成長して終われたと思う。
明日は、ロードとの対決日。
ロードのことだから、明日は稽古とは違って手を抜かないだろう。
だから私は、ある提案をしてみることに。
「ナバラ、今日はここまで。明日はロードとの一戦でしょ。今日は、早く寝て体調を整えるのはどう」
「そうですね。ありがとうございました
「あ、何個か言っておくけど、修行とかしたらダメだからね。後明日は、時間通りに来なさい。朝練も禁止だからね」
「わかりました……」
そうして武道場を後にしたナバラだった。
ナバラ、やる気だったなあれ。忠告しておいて良かったと思う。
まだ、若いから無理は禁物だしね。まぁ私やロードが言っても説得力ないか。なんならブーメラン飛んできて心が痛い。
そう思いながら、カレンは宿の方に向かうのだった。
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