10年前の私へ。ついに薄皮クリームパンの内容量が1個から0個になりました。
薄皮クリームパンをこよなく愛し、主食が薄皮クリームパンであるあなたにとっては信じたくない知らせでしょう。よりによって薄皮クリームパンの内容量が4個になってしまった日にこんな残酷で凶悪な未来を告げるなんて、血も涙もない最低の人間だと絶叫しているかもしれません。
ですが、薄皮クリームパンの内容量が4個になってしまったことによる深く大きな悲しみを十分に消化できていない今だからこそ、この事実を伝えてもあなたは正気でいられたのです。もし薄皮クリームパンの内容量が5個の時点で知ってしまったら、過去の私はおそらく衝動的に舌を噛み切ってしまっていたに違いありません。
どうか気を確かに持ってください。まだ未来を変えるチャンスはあります。薄皮クリームパンの香りだけが詰められた袋を握りしめて虚しく涙と涎を流す、そんな最悪の未来が訪れないよう、ただちに行動しなければなりません。私は……間に合いませんでした。
同じように未来からの警告を受け取ったのに、ショックのあまり戦うことなく無様に逃げ出したのです。ただ何もせず、迫りくる未来に怯えながら薄皮クリームパンを頬張るだけの日々。一つ、また一つと薄皮クリームパンの内容量が減っていっても、現実から目をそらすように大人買いをして自分をごまかし続けました。そして最悪の未来が実現してしまった……。
このメールを受け取った時点で、私とあなたの時間軸は二度と交わりません。時の流れが枝分かれすることで干渉できなくなってしまうのです。これからあなたが歩んでいく未来は、あなたの力で切り開かなければなりません。
……私は今からタイムトラベルを試みます。これは非常に危険な賭けです。データではなく生身の人間を過去に送る実験は、まだ一度も成功していません。成功する望みは薄皮クリームパンの薄皮よりも薄いでしょう。
それでも、あなたなら理解できるはず。薄皮クリームパンの存在しない世界で、私はこれ以上生きていられないのです……どうかせめて無事を祈っていてください。
あなたが永遠に薄皮クリームパンと共にあらんことを。
10年後の私より。