歳下の野球バカは好きですか?
僕はナオト、野球部に通う高校2年生。今はちょうど部活が終わったところだ。
グラウンド整備も終わり片付けをしていると、3年生のマネージャーであるアカネ先輩がいつものようにタオルとスポーツドリンクを渡してくれた。
『ナオト、お疲れ』
『あ、アカネ先輩!お疲れ様です!』
『…ん?ねぇナオト、最近ボーっとしてるけど大丈夫?』
『えっ?は、はい…大丈夫です。』
『ならいいんだけど。ま、試合も近いし、体調には気をつけてね。』
『はい、すみません…ゴクゴク…』
…ボーっとしている理由もわかっている。僕はずっとアカネ先輩が好きだ。でもそんなこと決して言えない、言えるはずもない。
俺はただただ先輩への気持ちが揺らぐばかりでため息しか出なかった。
そんな時だ、僕の後ろからどこか聞き馴染みのある声が聞こえた。クラスメートのユキだ。
『おーい、そこの野球バカー。』
『へっ?』
『へっ?じゃないでしょ。もう、元気ないから声かけたのに。』
ユキはそう言いながら俺の顔を覗き込んだ。たまらず俺はユキから顔をそらす。
『なんだよお前かよ。ってか別になんもねーよ。』
俺ができる精一杯の強がりだった。だが、そんな俺の姿でも彼女には俺が何を考えいるのかお見通しだったようだ。
『…どうせ、先輩の事考えてたんでしょ。』
『⁉︎』
クラスメートと言えど幼なじみでもあるユキ。前にひょんなことから先輩のことを話してしまったことを思い出し、今さらながら少し後悔している。
『ねぇナオト。いいかげん、告白してみたら?』
『お、お前⁉︎何言って…』
そう言いかけたが、ユキが続ける。
『あのさ、こんだけ自分の気持ちが揺らぐってことは、そういうことなんじゃないの?せっかくなんだしさ、一度は気持ちを伝えてみなよ。』
『……。』
彼女の優しい声が俺の背中をゆっくりと押してくれるのがわかる。
『ナオト、言ってみなよ。それでさ、もしダメだったら…』
『ダメ、だったら…?』
『その時は、私が思いっきり慰めてあげる!』
ユキの発言に俺は思わず吹き出してしまいそうになった。
『アハハ…なんだよ、それ。』
『何事も勝負あるのみ!ホームラン打つつもりで行ってこい!』
そう言ってユキはある方向へ視線を向ける。その視線の先にはアカネ先輩がいた。
ユキはまるで『行ってこい』と言っているかのように俺の背中を軽く手で押した。ただ一つ気になる一言を残して…
『…そろそろ気づけ、野球バカ。』
ユキの後押しに奮起した俺は走りながらアカネ先輩の元へ向かう。周りには誰もいない、今がチャンスかもと言う気持ちで俺はアカネ先輩に話しかけた。
『ハァハァ…せ、先輩。ハァハァ、あ、あの…』
『どうしたのナオト、そんなにハァハァ言って。とりあえず私のスポドリあげるから落ち着きなよ。』
そう言ってアカネ先輩はスポドリを渡そうとしてくれたが、僕は思い切って想いを伝えた。
『あ、あの!…僕、ずっとアカネ先輩の事が好きでした。』
俺の初めての告白
『先輩…俺、こんなに野球バカな奴だけど…付き合ってくれますか?』
(おわり)