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成り代わって蛇  作者: 馬伊世
第一章 成り代わり編
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完全変態って怪しい響きだよね

ブクマしてくださった方、ありがとうございます。たいへん励みになっております!

 てか、ラスボスの進化前になっちゃってたわけじゃん。

 だんだん思い出してきたけど、カガチノミコト=ラスボスって結構悲惨な人生、いや神生送ってんのね。んで、それに加えてドぎつい行いでヘイト集めまくってたわけね。


 ……きっとその末路は、さぞかし悲惨なのでしょうねぇ。




 それはさておき、たしかラスボス爆誕の手順は、弱ったカガチノミコトを核に霊力目当てでやって来た蛇さんがメタモルフォーゼして覚醒するってな感じだったはずだ。

 つまりこの時点でカガチノミコトは蛇さんに乗っ取られてるっていうか、融合して精神汚染された状態になる。

 莫大な霊力と憎悪の念が合体、お互いに悪い方に影響を与えあって、最悪の変態を果たすんだよなぁ。


 その後は確か、まずはメタモルフォーゼ直後のこと。

 ラスボス君は、呪いで一族郎党皆殺しにして、豪族の納めていた土地一帯にまで及ぶ凄まじい祟りをブッ放つ。その後呪詛を垂れ流しながら山を進み環境破壊しまくっていたら、天界に目をつけられて討伐されたかに思われたんだよね。

 でも弱体化しながらも命からがら生き残って、それからしばらくは穏やかに呪を飛ばしつつ、とある山に引っ込んで配下を増やしつつ、人間不信気味にご隠居生活を送っていたはずだ。


 しかし、あるとき人間に一方的に襲われて負けて、山に結界を張られて閉じ込められて激おこぷんぷん丸になる。

 そのまた何年か後に、またもや人間がケンカ吹っ掛けてきて、結界内を侵略されたあげく、住処にしていた池まで奪われて、ムカ着火ファイヤーしたヤトノカミは怨念マキシマム充填、怒りのままに人も妖怪も喰らいまくり、力をつけて都を攻め落とそうとしたものの、その時代の凄腕陰陽師に封印されるんだった……はず。


 でもその封印が何でかは忘れたけど不完全で、体は勾玉に封印されるけど、意識は完全に封じられなかった……んだったっけな。あー、あやふやだなぁ。


 その後は千年以上勾玉のなかの体を求めつつ、意識だけとなって現世に存在し続けることになって、完全復活を目論んでさまよい始めるんだ。

 どこぞの魔法界の例のあの人状態だね。


 その千年間は意識だけで弱い呪いをとばし続けて宿主探しに奔走、人や妖怪に憑りついて操っては外にある程度干渉しつつ、安倍晴明との戦いで石にされてから同じように恨みを募らせ続けていた九尾の狐も配下につけて、こいつがラスボスのダミーの役割を果たすんだよな。物語序盤から、ずっとこいつがラスボスってな感じで物語が進んでたからね。


 で、それら配下たちに力を集め続けさせてる間に、色々他の妖怪や神々とかからもヘイトを集めまくるんだったよな。


 ラスボス君はラスボス君で、ずーっと術士らからS級モンスターとして狙われ続けて濃縮還元され続けた恨みが、最早人類絶対滅ぼすマンに変貌を遂げて、「やらかす→恨まれる→反撃される→恨む→やらかす(以下エンドレスループ)」の負のスパイラルにどっぷりつかって、あら泥沼。


 んで、俺の元の世界の文明より少し進んだ近未来の主人公の世代で、ようやく解き放たれて完全体になったラスボス君は激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態となって人間全体を滅ぼそうとするも―――


 って、この続きが分からないんだなー。でもどうせラスボス君的にはバッドエンドになるんでしょ? 俺知ってる。






 俺の頭、よく頑張ったな。これだけ思い出せれば上出来だよ。火事場の馬鹿力ってのーみそにも影響すんのかなぁ。

 でも改めて振り返ってみて思ったよね。ヤダァ、こんなドロドロ神生!!


 考察班の考える展開的には、強さがエグいから倒すことは不可能だと大多数の意見が一致、再封印説が濃厚だったな。

 登場キャラクター全員が息を合わせるであろう胸熱な展開を妄想して、当時はワックワクだったんだけどさあ。もしそうなったとしたら、結局、最後も封印されてんじゃん? つまりはさ、死んでないんだよラスボス君。


ということは、”ラスボス君の人生はまだまだ続く。To be continue……”ってことじゃん。どんなホラーだよそれ。またいつかは復活するって暗示じゃんね。それでまた再封印されて、復活して……。


 そんなの最悪だよ。生き地獄じゃん。大体、ずっと人を恨んだまま生きていくなんてヤダね。


 俺の夢は健康長寿、家族に見守られての大往生。最後の瞬間は幸せでありたいんだ。それまでの人生を振り返って、ああ、楽しかったなあって満足できるような一生を送りたいんだ。


 確かに、一の兄上に対して憎しみを感じてるけども、だからって血縁繋がりのパッパを殺したいとは思わない。

 俺が憎む人はアイツ一人。それが巡り巡って全人類恨むことになるとか、絶対に嫌だ。そんなお先真っ暗人生なんて、こっちから願い下げだ。




 というかそんなことは正直どうでもいい、いや、夢についてはどうでもよくないが本題はこっちだ。


 チクショウめぇ! あの自称神が最後に言ってた不穏なセリフって絶対にこのことだよなぁ! 正直兄上に対する怒りよりあっちに対する恨みの方が増幅され続けてえげつないことになってんぞ。俺はこの十七年間片時も奴のことを忘れちゃいねぇ。姿は覚えちゃいねぇが、存在は魂に刻み込むくらい覚えてんぞ。


 あの日、俺はやっとこ就職が決まったところだったんだ。

 今まで女手一人で育ててくれた母さんにやっと恩返しができると意気込んでたところにアレだからな。ブッコロリ優先度は断然向こうが上だわバァーカ! 俺は結構ひきずるタイプなんだよぉ! マジで覚えとけよアノヤロー!!






『我と一つにならば、貴様の憎む人間達を、たちどころに殺すことができよう』


 現れたソレは、明らかに人の形をしていないのに、確かな”声”が聞こえてくるのだ。


ってか、この状況やばくね? メタモルフォーゼ寸前じゃん? つまりは、「我と契約して、祟り神になってよ!」ってことでしょ? アァ~~その誘いにゃ絶対に乗っちゃアカンのや~~!!


 アレでも待って、これって回避不可能な感じ? 恨みは十分、カガチノミコト()の体(豊富な霊力)、資本の蛇さんまで揃っちゃってラスボス街道へ頭からズッブズブ突っ込んでる状態ってことスカ?




 イィヤァァア!! もっと前の時点で気づくべきでしたよ!! こうなったら回避もクソもないじゃんね! 物理的に動けないもんね!!

 バカ! ホント俺バカ!! 体がハイスペックになっても、”俺”自身はやっぱりポンコツだったよ! そりゃあ俺ですもんね! 俺ですからぁ?? つかまじ本気であの自称神許さねぇ!! 次見つけたら敵わなくたって一発殴る! 絶対に殴ってやる!!


『さあ、御身を寄こせ』


 うわぁ、蛇さんが丸呑みしようとしてくるよぉ。ふわぁ、おくち、おっきぃねぇ!


 じゃ、ねぇんだよ。イヤアアア!! 喰われる! 最凶の祟り神の原料にされる!! メタモルフォーゼしちゃうぅ!!




 しかし、抵抗しようにも無駄だった。ピクリとも動かない体は、為すすべなく蛇の腹の中へと呑み込まれてゆく。


 ゆっくり、ゆっくりと。

 頭の先から、足の指の一かけらに至るまで。

 全部、全部―――


 呑み込まれてゆく。






 真っ赤に熟した瀕死の太陽が、ゆっくりと西の地平線へと呑み込まれてゆく。ずるりずるりとその身を沈み込ませんとする。

 刹那、太陽は最期の断末魔とばかりに、目を刺さんばかりの鋭い緑閃光を放った。


 光が消え去りし頃、昼世界をを照らした日輪の影は既に無く、ただその残火が西の空を錆色に染め上げるのみ。それはまるで、西に引きずり込まれし御身の流した血の道がごとく。その弱弱しき残存も、東から迫る闇に徐々に呑み込まれて、次第に黒く塗りつぶされてゆく。





 その時、一柱の神が生まれた。




 名をば、ヤトノカミと言い、小山ほどもある黒蛇の姿をした祟り神である。

 鎌首を高く高くもたげて、西の地平線を見つめるそのまなこは、地上の者の目にはもう映ることのない、天の主の姿を捉えて緋色に煌めいていた。


 光る毒の刃が頸から背を通って尾の先までずらりと並び、そのかしらに聳え立つ、鋭くも長い二本の大きな角と、下顎の両端から延びはためく絹の帯のような髭とが、それぞれ呼応するように、怒りを体現したがごとき赤光に輝いていた。




 蛇はゆったりとした動作でその首を下にやると、三つある内の真ん中の、まん丸のその瞳の中に、地面に倒れ込むちっぽけな人間を写し込んだ。


 そして、それをばくりと一呑みにした。刹那の出来事である。






 ずるりずるりと大きな図体をくねらせて、蛇は何処へか這ってゆく。刻々と迫る夕闇の中、赤い光を明滅させながら。


 その蛇腹が触れた傍から、全ての生きとし生けるもの、ただ在るものどもが腐れ落ちてゆく。草木は枯れ、鳥虫獣は死に、土は汚泥となり、岩は砕け崩れ、蛇の通った後は呪われた道となって毒素をまき散らし瘴気を燻らせていた。




 蛇は進む。ひたすら進む。

 燃ゆる眼差しに、とある一点を見定めて。

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