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成り代わって蛇  作者: 馬伊世
第二章 神代編・前
36/116

”タカマガハラ”って母音が全部ア音

 あ、そうそう。自称神と言えば、結局タカマガハラにはいないようだった。

 会見が終わった後くらいに縁チェックをしてみたが、結果は芳しくなかったんだ。それと思われる不審な縁が確かに俺につながっていたものの、途中でふつりと気配が追えなくなってしまったのだ。まるで、見えない壁に阻まれているかのように。


 同じく探っていた母さんとの縁も同じような有様で、次元を超えてきてしまっているから、それが壁として立ちはだかってしまっているのではという結論に至った。つまり、母さんも自称神のヤローも、この世界の存在ではなく、異なる世界の存在であるから、コンタクトが取れないということなんだと思う。駅の地下に携帯の電波が届かないのと同じこった。


 その考えに至った時、「残念だ」とそれ以外の言葉が見つからないほどには絶望した。

 自称神をハンバーグにできないことに対する思いももちろんあるが、母さんに会いたかったというのが大きい。せめて自分で何か感謝の一言でも伝えたかった。


 だけど俺はまだあきらめていない。だって次元超えてもまだ縁がつながってるんだもの。そこで切れていない時点で、望みはまだあるということだ。

 しかも、俺はアノヤローの何かしらの術で確かに次元を超えてやって来ているのだから、次元を超える術ってのはは確実にあるのだ。ただ、それが今の俺には扱えないだけで。


 いつか必ずその方法を見つけてやる。俺の人生計画もとい、神生計画の目標の中に、クエスト:”幸せ大往生”に加えて、”次元を超える方法の入手”が新たに仲間入りを果たした。

 おニューな目標もゲッツしたところで、祟り神生も受け入れて生きて行こうという覚悟も定まった。無理やり定めた。


 もうこうなっちまったらしょうがねぇ。俺には自殺願望なんてないし、あったとしても、スサノオクラスの神に消し飛ばしてもらうより他に方法がない。もう祟り神として在ることについて受け入れてしまった方が気持ち的にもずっと楽だろう。




 ただし俺はラスボスには絶対にならねぇ。絶対にだ。封印乱用ダメ。ゼッタイ。

 宣誓! 俺はァ! 品行方正で倫理感ある、道徳精神に満ち満ちた祟り神であることをモットーに生きて行くことを、誓いまァす!






 そんなこんなで進んだ会見のその後は、とんとん拍子にスサノオの折檻が決まり、最高神(姉上)直々に弟に罰を行うんだか何だかで、暴れながらも連れ去られてゆくスサノオを何をするでもなく見送り、ぽつねんとその場に取り残された。


 すると周囲で野次馬をしていた神々たちが寄ってたかって集まって来て、またこのの対応にドキドキしっぱなしで冷や汗もダラダラ垂れ流すこととなった。

 どうやら、会見での対応で無事に無害だと判別されたらしい俺は、無害な祟り神という物珍しさから、好奇心の塊である神々に散々イジり倒されることとなったのである。




 まずはその場のノリで、一部のウェイウェイ系の神々に連れられて、タカマガハラ観光としゃれこんだ。

 神々の想像を絶するエッグイ身体能力に、まだこっちは体の動かし方もよく分っていないのに頑張って着いていく羽目となり、正直いっぱいいっぱいだった。Mの字がトレードマークの配管工かっての。物理法則はどうなってんだって感じだった。

 まぁそのおかげで、現時点で俺自身がどんな動きができるか、ってな体の具合も分かったんだけれども。


 金の雲の地を越えていくと、ザ・天国! みたいな場所に出た。

 こう、言葉にできないようなキレーですっげぇ空間と言いますか、なんというか……一言で言えば極楽。


 そんな素敵な天国観光地をいろいろ回った挙句、元気の有り余る神々プレゼンツ、”暇を持て余した神々の遊び”大会が唐突に開催されることになった。


 美しいネイチャーに囲まれて、自然のウッドアスレチックを駆使してSASUKE的に森を爆走したり、草原のステージでは術アリ・大規模破壊無しの、神々の本気の鬼ごっこで千里を駆け回ったり(ちょびっと破壊してしまったところは、自然を司る系の神々の隠ぺい工作でキレイに修復された)、剣を持った神々による剣闘技大会では忖度したらブチ切れると脅されたものだから、本気で戦ったところまさかの俺が優勝してしまったり、そこに乱入してきた武神に逆にコテンパンにやられたり、それに猛った神々のバトルロワイヤルが開かれて周辺がボッコボコになって、大会に参加していなかった自然系の神々に怒られるなどいろいろあった。(ちなみにこのヒトらは老人の姿をしていたので、若い姿のウェイ系男神たちにクソジジイなどと揶揄されていた。同意を求められたが、茶を濁してやり過ごした)


 そうして自然神たちが環境修復に気合を出し過ぎた結果、一帯が森と化した挙句どっさり実った森の作物で木の実パーティーが開かれた。そこら辺に当たり前のように湧いていた、湧き水ならぬ湧き酒を汲んできての即席の大宴会である。


 ワーワー騒いで、酔った勢いで一発芸大会が開かれ、祟り神なのだからそれっぽいことをやって見せろとうるさく絡まれたので、「怒んないでクダサーイ」と釘を刺してから、少し瘴気をプスッと解き放って周辺を黒く染め上げて見せたところ、リクエストしてきた神に悪かったからやめてくれと泣きながら土下座されたものだから、こっちも慌てて瘴気回収して土下座して、謎の土下座大謙遜大会が始まった。


 その後成り行きで俺の正体が大蛇であることが知れ、蛇型になって、その場にいたすべての神々を乗せてリクエストに応えての物見遊山としゃれこんだ。

 蛇型になっても、周囲を呪うことはもう完全になくなった。俺はやり遂げました! 本日のMVPは俺です! 誰か褒めろ下さい。


 そして酔った勢いそのままに御殿の近くまで帰ってきたら、御殿勤めの神々にみんなで怒られた。爺型自然神たちもいっしょに怒られたもんだから、ウェイ系神々が密かにガッツポーズを決めて喜んでいたのは見なかったことにする。




 その場解散で宴会が終了した後、ヒトガタに戻って大人しくしていたら、通りすがりの天女さんたち数名に機織り工房に連れ込まれた。


 キレーな天女のおねぃさん達のスサノオのグチ祭りに、赤べこのようにカクカクと首を振って聞き役に徹していれば、盛り上がったおねぇさんたちに新しい衣を仕立ててもらえることになり、体中を触られ採寸をとられたときは正直ごほうb……ゲフンゲフン、ありがたいことに衣をもらったのである。


 そこにあった姿見で、ようやく俺のヒトガタ形態の詳細が知れた。これは完全に人外ですわ。


 まずカオよ。なんか目が三つあんの。額に第三の目が開眼してた。虹彩は全部真っ赤で、瞳孔なんか縦に裂けちゃってまぁーコワイ。

 口を開ければ鋭い牙がこんにちは。舌も先っちょが二股に裂けてーら。さすがは蛇がモチーフなだけある。


 全体的に、原作のラスボスである大蛇の姿にあった、パーツパーツが残っているように見える。なんだろ、擬人化って感じ?

 当たり前のように頭頂部からツノが鎮座していたし、魚のヒレみたいな耳の後ろからは、触手が生えている。因みに今の色は黄緑色だ。

 頬には黒い鱗が隈の模様として配列していて、この黒い鱗軍団は顔以外にも首、腕、足に生えており、それぞれが”なんたらウォーマー”を着用しているかのようにびっちりとおおわれていた。装甲が固そうだなと思いました。


 俺の蛇型の姿も、見える範囲ではイルミネーション部分以外ラスボスの姿と一致していたし、成り代わってるんだから原作そのままのデザインであるのだろう。ヒトガタについては、俺が読んだところまでは原作では触れてなかったからよく分かんないんだけど。

 あーあ。続きが本当に知りたい。俺の今後のためにもマジで。


 さて服装のほどは多少変わってはいたものの、概ね刺された時(メタモルフォーゼ前)の恰好そのままであった。そう、髪型もみずらでなく、ツインテールのままだったのである。

 古墳男たるもの、みずらはおしゃんてぃな嗜みなのである。慌てて結い上げようとしたものの、王族のみずらの位置って結構高めなわけですよ。で、その辺りにツノが生えているわけなのですね。みずらがツノに当たってへしゃげちゃって、こりゃもう大変不格好なこと限りなし。泣く泣く諦めたよ。




 姿見から一歩離れて、ため息をついた。


 それにしてもな。控えめに言ってオバケだね。

 コレと普通に会話して見せた村の衆って、豪傑の集団なのでわ? 揃いも揃ってとんでもねぇ鋼の精神の持ち主だったんだなぁ……

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