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成り代わって蛇  作者: 馬伊世
第一章 成り代わり編
28/116

えぇ……(困惑)

祝、10万字をついに超えました!!! 全てに感謝!!!

これからもがんばります! よろしくお願いします!


(ブクマ、感想、評価などをぽちっと下さると、作者が喜びの舞にブーストされます|д゜)チラッ

 たかまがはらって……タカマガハラ!? え、今、タカマガハラと仰いましたかアナタ!?

 えっ……え!? た、たかまッ!?!?


 せっかく真面目に話を切り出そうとしたらコレだよ。何言っちゃってんだこのヒト。


 TAKAMAGAHARA……SO、それはタカマガハラ……

 処理落ちしそうな衝撃で殴り込みに来てくださいましたワード・オブ・タカマガハラってところは、”神話に出てくるようなすごい神様たちのビバリーヒルズみたいなもの”として原作で扱われていた。俺みたいな小市民が行っていいような場所では決してないのだ。


 いや百歩譲ってだよ、祟り神パワーがそのすごい神様たちにも匹敵していたんだとしよう。腐ってもラスボスぼでぇですから、力だけなら基準を満たしててもおかしくはないとは俺も思う。


 でもな。その力、祟り神パワーなんだよ。

 むしろその高い基準点を、こんなヤベーパワーで満たしちゃってる時点で討伐対象になりこそすれど、そんなところにお呼ばれされていい存在じゃないだろうよ、俺は。


 奉られてない野良祟り神なんて、原作でもゲテモノ扱いされてたヤベーもんを連れていこうってんだから、とんでもねーなこのヒト。

 まあそのゲテモノ、人畜無害な俺のコトなんですけど。この世界の住人たちよ、感謝しろよ。俺がこの体の中身に成り代わった時点で、諸君らは原作世界線のような地獄の未来を歩まなくてよくなるんだからな。さあさ、この俺を崇め奉れ~!




『……私が言うのもなんだが、正気か?』


『至って正気である』


 即レスでござるよ。真顔で言われたでござるよ。やっぱこのヒト、ヤベーヒトなんだなぁ。

 原作でも破天荒で勢いあるキャラとして描かれてたけどさ、原作本編の時系列である近未来の現世では、強さ調整のためか制限掛けられてて弱体化してたわけよ。でもそんな性格に強さが兼ね備えられちゃったら、もう有言実行なのよ。何か突拍子もないことを言い出したとしても、力でゴリ押しし出来ちゃうってわけなんだよ。


 しかもスサノオって、タカマガハラ在住神様権威ランキングで絶対TOP5に入ってるやん。だって最高神のアマテラスの弟ですよ。もうチートだよこのヒト。存在がバグだよ。今回こんだけ破壊活動したんだから、せいぜいお姉さまに怒られてください。


『私は祟り神であるぞ。しかも未だ奉られてもおらぬ、つい数刻前に成ったばかりのだ。

 御身が許せど、タカマガハラに住まう神々には私を厭う方々の方が多いだろう』


 それとなーく拒否の姿勢でいこう。そんなところへ行ったが最後、ありとあらゆる神々にタコ殴りにされる運命しか見えん。

 我ラスボスぞ? 討伐対象ぞ? 中身は小市民の一般人ぞ? チキン結構、作戦名は「いのちだいじに」がモットーなんだよ!


 問いかければ、スサノオは東の地を見つめたまま黙り込んだ。その視線の先を追うように見れば、東の地がうっすらと色づき始めていた。




 薄く空に掛かった雲は紫立ちたり、地平線の彼方より黄金の光が差す。遮るものの何もかもが無くなった今、その姿は日頃よりもとてもよく見えた。

 煌めく日足が幾筋も東雲をかき分け、空を輝きで満たして行く。冷え込む外気に、柔らかな光はやさしい暖かさでもって地上を照らしてゆく。


 夜明けだ。

 あけぼのの、日の出でもって告げられる一日の始まり。


 自分の置かれた状況も忘れ、その美しさに思わず感動して浸る。この光景を前にしては、何度見たって心が打ち震えるのを止めることが出来ない。

 昔、現代の世に生きていたころは、日の出なんて見たことがなかった。テレビの番組で、ご来光の映像が映し出されたときに感心した覚えがあるが、それまでだ。実際に自分の目で新しい朝が生まれるところを見ることはなかったし、都会のコンクリートジャングルの中で、分刻み秒刻みの暦に操られる生活を送る上では、自然に目をかけることもなかったから。


 昔の人が自然に対して大きな尊敬と畏怖を抱いていた感慨は、今となってはよく解るんだ。




 一方、同じく太陽を眺め、何かしら考え込む王なそぶりを見せていたスサノオであったが、突然何の前触れもなくこちらを振り返ると、にいと歯茎までむき出しにして笑った。

 なんですその顔ぉ……嫌な予感しかしないんですけどぉ?


『姉上より許可は貰った。さあ、来い!』


 嘘だろ姉様そりゃないよ!? こんな危険因子の持ち込みだなんて、よく許可出したよ。てかどうやって今の短時間で連絡とったんだ……

 あ、太陽? 太陽となんか交信でもしてたん? そっか、天照アマテラスって太陽の神様だったもんね。便利だね??


 え、ちょっとまってよ。俺だよ? 祟り神だよ? しかも超ド級の……原作世界線では総力を結集して消そうとしてた相手ですよ、ラスボスなんですよ!?

 はえぇ……もしかして自分のフィールドに呼んで抹消しようとしてます? こわ……


『安心しろ。貴様が妙な気を起こさぬ限り、姉上が制裁をなさることはない。姉上も貴様に興味をもっておられるのだ。さあ、大人しく着いて来い』


 ヒェ、心読まれたァ!? え、まさかまさか、今までの貫通してたとか言わないよね? いやでも結構失礼なこと考えてたけど、なんにも言われてないってことは、そんなことはないだろう。きっと。そうだって信じてる。


 え……ナニコレ外堀埋められた感じ? もうこれ絶対行かないといけなくなったやつ? え、やだコワイ……こんな展開、原作の話の路線から見事に外れてるよぉ……何が起きるか全くの未知の領域だよぉ……

 ちょっとまて、原作修正力さんどこいった? まさか、俺がこの世界を「この世界」だと認識した時に弱まっちゃったとかないよね?


 いやでもスサノオが殴り込みに来たのは原作通りだし……あ、でもスサノオが来た理由は俺が原作通り、大規模環境破壊活動をやったからで、今回全く遺憾の意ではあるけれど発生してしまった戦闘イベントでは、原作ラスボス君は「スサノオをぶっ殺そう」の一念で動いてたけど、俺は祟り神のくせして村を守ろうと動いたから、そこで何か分岐点でもあったのかなぁ。


 ……ブゥワァッハイィ!! 考えても分からんわ! きっとこれは答えのない戦い! 哲学の領域よ! それを考えるのは哲学者のお仕事、そして俺は一般ピーポー。よし、もうじゃあ諦めて行くか! ゴートゥーヘヴンやぁ!!




 若干現実逃避しながらも覚悟を決めた時のことである。背後から衝撃を感じて固まった。


 下を見れば、腰に小さな腕が回されていた。

 横目がちに後ろを見やれば、子供が一人、俺の腰にぎゅうぎゅうと必死な様子で抱き着いていた。




 ……ッブネー!! もう少しで剣振りぬいて首飛ばしちゃうところだったよ!!

 いきなりどうしたのよこの子。危ないじゃないの。こんなヤバイおじさんの前に現れたりして……どうやらもう危険度はあんまりなくなったみたいだけどさ。

 というか俺、背後への警戒おろそか過ぎないかな? ここ数時間で後ろ取られ過ぎじゃね? おまけに内二回は心臓を刺されてるというのはどういうことだ。


 ってこの子、「豆摘まみゲーム・下民部門」現チャンプの少年じゃん。初大会で優勝してからずっとトップの席を譲らず豆を摘まみ続けた、大豆の申し子君じゃん。居館から脱走して遊びに行った時に、イナゴや妖怪を捕ったりしてよく一緒に遊んだりしてた時もあったな。そういえばこの子ったら、罠の使い方も伝授したら、その日のうちに一つ目の節足ワサワサオバケを捕まえて来たんだよな。要領がいいというか、なんというか。

 最近は村に帰れなかったから遊べてなかったんだけど、ちょっと見ないうちにまーた大きくなっちゃって。




「……なよ」


 俺の鎧に顔面を貼り付けたままに、少年はくぐもった声を出した。正直聞き取れなかったから、そのまま固まっていると、今度は顔を上げて大きな声で叫んだ。


「いくなよぉ!!」


 予想外の言葉過ぎて、初めは何を言われたのかよく分らなかった。だけれど、ゆっくりと言葉が沁み込んで来てその意味を理解することが出来たのと同時に、思わず息を呑んだ。

 腰に回されていた小さな手を取ろうとすれば、何気に力が強くて外すのに苦労したが、振り返ろうと体を捻ると自分から緩めてくれたので、その隙に体を回して、しっかりと少年と向き合った。


『どうした、小童』


 スサノオの前なので口調は変えられないが、なるべく優しい声音で問いかけた。

 すると、少年は首をいやいやと横に振って言うのだ。


「もっとおれ達のとこにいろよ! いやだぁ、いなくなるなぁ!」


『ここにいるわけにはいかぬのだ』


「なんで! いやだぁ!!」


 やんわりと否定すれば、少年はついに大声で泣きだした。

 俺と離れるのが嫌だと言って泣き叫んで、地団駄まで踏んで。何とか引き留めようと、俺の触手まで鷲掴みにして。




 うわぁ~~~どうしよ、こまっちゃったなぁ! ふふ。

 こんな時だけれど、心の中がポカポカしてくる。少年には悪いなァなんて思いながらも、小さな手に捕まえられた触手は正直で、それはそれはきれいな薄桃色に染まっていた。


「嫌だ嫌だよミコにいちゃん! それにそんな喋り方じゃなくて、いつもので喋ろよぉ!」


 あぁ~~、今スサノオ居るんだけどなァ! でもそんな涙目で言われちゃどうしようもないよねぇ! パッパ、許せよ。今から俺はタメで話す!




 しゃがみ込んで目線を合わせ、しっかりと少年と向き合った。

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