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美波は超特急~異次元の扉を駆け抜けた少女~  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
2/15

美波、小学四年生になる


時がち、美波も今年四月で小学四年生。

今はさくらが満開の季節。



小学校でも美波は運動会で大活躍。

徒競走では三年連続ダントツ一位。


クラス対抗リレーでもアンカーに選ばれ、

他の選手をごぼう抜き。


上級生も先生たちも驚いた。



美波が走ると、


「あのスゲー!」


「マジか、ちょうえー!」


とか、会場内もどよめいた。



小学校に入って三年もつと、美波もだいぶ落ち着いて、腕白わんぱくして友達を泣かせることも少なくなった。


でもたまに、自分が納得なっとくいかないと、れい

短気・勝気・生意気スイッチがオンになり、

徹底てっていてきに友達をやっつけてしまう。



いまだにママの心配のたねきない。



◇◇



美波には保育園から仲良なかよしの未央みおちゃんと

彩芽あやめちゃんという二人の友達がいた。


美波はお絵書えかきとかがみ、おママゴトなどはだい苦手にがて


保育園では男の子とばかり遊んだが、この

二人とは、よく一緒にお泊り会をした。


近所のお祭りや、地区ちくのハロウィン集会にも

参加した。 


二人がイジメられたら、美波は絶対ぜったいゆる

ない。


相手があやまるか、泣くかするまで徹底的てっていてきにやっ

つける。



そして最後に、


「未央と彩芽をイジメたら、私が絶対ぜったいゆるさないから!」


啖呵たんかった。



◇◇



こういうと、何だか美波がおにのようにおそろしい女の子に思えるが、美波にも女らしいところはある。


二重瞼ふたえまぶたで色白で、黒いひとみはいつもいたずらっぽくかがやいて魅力的みりょくてき

 

かたまでびたゆたか黒髪くろかみは、活動的かつどうてきなので、

いつもポニーテールにしている。 


鼻筋はなすじとおっていて綺麗きれい


笑った顔が可愛かわいいし、かなりいいせんいってる

感じ。


背丈せたけはクラスのなかくらい。


しいて美波の容姿ようし欠点けってんげるとすれば、

ぶかてんかな。


あと、よく見るとふとモモとふくらはぎが少し発達はったつし過ぎてるかも。



「ねえねえ、ママ。私って、なんでこんなに毛深けぶかいのかな。眉毛まゆげふといし、もういやんなっちゃう。今日も学校でイジられたんだ。あのね、男子がね、私の腕のうぶを見て野生児やせいじって言うのよ。すぎて、 そのうちおおかみ少女しょうじょにでも変身へんしんしちゃうんじゃねえの、なんてね。私、きそうになってね、何も言い返せなかった。ママ何とかして! この毛カミソリでってもいい?」


ある時、美波が言った。


駄目だめよ。そんなことしたら、ますますくなるわよ。大人になったらだんだんうすくなるから我慢がまんしなさい。ママも子供の頃は毛深けぶかかったけど、今はそうでもなくなったのよ」


ママは美波をなぐさめた。


「あーあ、私、未央ちゃんみたいに美人びじんだったらよかったのに。未央ちゃんはいいよね。目が大きくてモデルさんみたいな顔してるし背が高くてスタイルもいいし本当にうらやましい。ねえ、ママ知ってた? この間、未央、お母さんと一緒に原宿はらじゅくに買い物に行ったでしょう。そしたら、スカウトされたんだって。今までに四回も芸能事務所げいのうじむしょの人から声かけられたらしいよ」


と美波が言う。


「知らないけど、 あなただって綺麗じゃない。もっと自分に自信を持って。保護者面談(めんだん)むらかみ先生が言ってたわよ。美波は足が速いし、明るくて成績もいから、みんなの人気者だって。あなたにあこがれてる女子はたくさんいるって先生が言ってたわ。だから、自信持ちなさい」


とママがはげました。



◇◇



それから数日後、パパは仕事から帰ると

驚いた。


「ただいま」


とパパが二階のリビングのドアを開けると、

先に学校から帰っていた美波はテレビの前の

ソファの上、手鏡てかがみ持って一人でケラケラわらってる。


「何やってるんだ?」


パパが声をかけ、いた美波の顔を見てもうビックリ。


「おお、神様! 何てこった!」


美波の眉毛まゆげがほとんどくなっている。


ソファーの上にはてられた美波の眉毛とハサミがあって、美波はおふくみたいな眉毛でパパを見て笑ってる。


「あちゃー、お前、何やったんだ!」


って言ったあと、パパもして、二人でしばらくゲラゲラ大笑おおわらい。ひとしきり二人で笑ったあと一息ひといきついてパパがいた。


「何でそんなことしたんだ?」


「あのね、 パパ。 私、 今日学校から帰ってね、宿題終わって、ひまだったから、ドラマを見てたのね。そしたらね、主人公の男優だんゆうさんがすごいカッコいいんだけど、とても眉毛まゆげい人だったの。私の眉毛とてるなーって思って。この人眉毛切ればいいのになって思ったの。そう思ったら、私も自分の眉毛を切ったらもっと綺麗に見えるんじゃないかってひらめいちゃったのよ。それでハサミで切ってたんだけど、なかなか左右さゆうふとさがそろわなくて、少しずつ切ってるうちに、こんなになっちゃったのよ、キャハハ!」


と美波が笑った。


「何じゃそりゃ! 明日から学校どうするんだ。その眉毛で行くつもりか? ママが帰ったらおこるぞー、こまったもんだ、まったく」


と言って、パパはまた吹き出した。



◇◇



しばらくして、ママが仕事から帰ってきた。


でも、予想よそうはんしてママはあんまりおこらなかった。


美波はもうわけなさそうにうなだれて、ソファのすみっこにひざかかえて座ってる。


美波の顔を見てママは少しクスッと笑ったが、パパから事情じじょうを聞いてこう言った。 


「美波、眉毛がうすくてこまっている人もたくさんいるのよ。もっと自分を大切にしなさい。あなたの眉毛は、たしかに女の子にしては少し太いけど、ママはあなたの眉毛が大好きよ。眉毛がいと、顔全体がキリッとして意志的いしてきに見えるでしょ。もうこんなこと、やったらダメよ。分かった?」


「ママ、おこってないの?」


「もう、パパからさん(ざん)しかられたでしょ? ちょとこっちに来てみなさい」


とママは言って、バッグからアイブローペンを取り出し、美波の眉毛をきれいに書いてくれた。


それが本当に上手じょうずで、美波もパパもビックリ仰天ぎょうてん


まるで魔法まほうのように美波の眉毛がもとどおり。


さっきまでの心配もいっぺんにんだ。手鏡てかがみを見て美波がさけぶ。


「ママって凄い! 本当に魔法使いみたい。

さっきまで美波もパパも明日から学校どうしようってなやんでたのに。これでもう、いつものように胸をって学校に行けるよ。ママ、本当にありがとう!」


と言って、ママの胸に飛び込んだ。


「じゃあ、もうしないって約束やくそくして

くれる?」


「分かった。もう眉毛を切ったりしない、約束する。だけど、どうしたらこんな風に上手じょうずに眉毛が書けるの? まるで本物みたい!」


「コツがあるのよ、後で教えてあげる。全部カミソリでったわけじゃないから、簡単かんたんだったわ。このペンあげるから眉毛が伸びるまで、毎日自分で書いて学校行きなさい。たぶん二週間くらいでえてくるわ。ママだって経験けいけんあるから、ちゃんと分かるのよ」


と言って、ママは美波をやさしくきしめ、

オデコにキスをした。



◇◇



それから二週間、美波は毎朝自分で眉毛を書いて学校に行ったが、友達のだれも美波の眉毛のことに気づかなかった。


[人間って、案外あんがい他人たにんの顔をじっと見たりしないんだ]


と美波は思った。



ただ一人だけ、美波の大ファンであるさくらちゃんだけが、美波の眉毛のことに気がついた。


学校の帰り道、二人だけの時、

小さな声で桜ちゃんがつぶやいた。


「美波ちゃんの眉毛まゆげ最近変さいきんへん」 


「シッ!」


と美波はくちびる人差ひとさし指を当て、ヒソヒソ声で桜ちゃんに事情じじょうを説明した。


「私の眉毛に気づいたの桜だけだよ。いつも私のこと、気にしてくれてるのね。ありがとう。でも、もう少しでもともどるから、みんなには秘密ひみつにしといてね」


茶目ちゃめたっぷりに言った。



ママの予言よげんどおり二週間後、美波の眉毛は

もとのキリッとした素敵すてきな眉毛にもどった。

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