5.悪魔捜索
俺たちは再び図書室に集まった。目の前の机にはいくつもの悪魔の本が並んでいる。
「さて、学園長と生徒会長はなんと?」
「ああ、学園長からは少しヒントを聞けたぜ。部長からは『自分が知っていて学園長が知らない事はない』ってよ。」
「それでは、学園長どのように?」
悪魔は数自体ならゆうに万を超える。その中でたった一柱の悪魔を見つけるのは不可能と言ってよい。だからこそこの情報が重要なわけだが。
「七十二柱の悪魔、らしいぜ。」
「……根拠は?」
俺は苦々しい顔をしながらそう返す。七十二柱の悪魔から絞るのは比較的簡単だ。しかし倒すのが難し過ぎる。七十二柱の悪魔と対峙するならレベル10は必要。それこそが悪魔の最上位に立つ七十二柱の悪魔なのだ。
「召喚もせずに強制的に現れるのは相当な魔力がある証拠だし、何よりそのまま当時レベル6の冒険者だった親父を殺したっていう事は七十二柱クラスじゃねえとできない芸当だ。」
「まあ道理か。」
俺は机の上に置いてある本のうち、七十二柱以外の本を戻していく。図書室で本を独占し過ぎるのはよくない。
「それで、呪いをかけた悪魔の特徴は?」
本を戻すために俺だけ少し離れて話すからちょっと声をはる。
「豹の姿をした悪魔らしい。」
「豹ですか……」
シルフェが本を開き、調べ始める。
「で、他には?」
俺は再び席に戻り、座る。悪魔の本は大体同じのところにあったから戻すのにあまり手間はかからなかった。
「気付いたら既に契約を結んでいたんだってよ。多分思考誘導の能力を持ってるんだと思うぜ。」
「思考誘導系か・・・」
そのタイミングでシルフェが本を閉じ、脇に置く。
「一応、豹の悪魔は二体いるらしいです。序列第64位『狂気の知識』ハウレスと、序列第57位『不定形の世界』オセの二柱ですね。と言っても悪魔は体を変えられるタイプが多いので一概には言えませんがね。」
「あと、可能性が高いのは『正体不明』のビフロンスだな。」
序列第46位『正体不明』ビフロンス。こいつは豹の悪魔ですらないが、人によって見え方が違うという特性があるからたまたま豹に見えていた可能性がある。
「三柱とも全員姿を変えるのが得意なんですよねえ・・・むしろそのまま豹で現れる可能性の方が低いように感じますね。」
「いやまあしかし。無理矢理魔界から出てきてんだから無駄な消費は避けたいはずだろ。ここは姿を変えてないと見るべきじゃねえか?」
それに七十二柱の悪魔がわざわざ姿を隠す意味なんてあんまりない。父さんと一柱ずつで互角レベルはあるからな。
「ならやっぱりこの中ってことになるな。」
「ええ、そうですね。しかし絞りようがないですよ。もうちょっと情報はないんですか?」
「一分に満たないぐらいの契約だったらしいぜ。そんな特徴を出す時間なんてなかったんじゃねえの。」
「いや、ここまで絞れれば十分だろ。」
まだ絞れるところはある。
「悪魔の性格を参照していくぞ。わざわざ下界に降りて行動を起こしそうな悪魔がどれか。」
この三柱のどれかまで分かっただけ万々歳だ。俺はここまでは絞れないと思ってたからな。
『どれも厄介のが残ったな。』
まあ厄介だな。どれも神出鬼没だし、めんどくさい権能を持っている。
『オセなら厄介。ビフロンスならめんどくさい。ハウレスなら最悪だ。』
「どれがやってそうかわかんらんのか。」
『我輩は隔離されていたからな。性格までは分からぬ。』
そうかい。まあ、だから何の代償もなしに契約できたんだが。
「しらみ潰しに探していくしかないか。」
俺は睡眠欲をアクスドラに捧げながらそう呟いた。
人からこの作品がどう思われているか知りたいので、ポイント評価はいりませんが感想をくれると嬉しいです。




