4.友を救うために
俺とアクトは病室の前にいた。アクトは横長い椅子に座り、俺はその横で壁にもたれかかっている。
「……そうか。」
俺はアクトから話を聞いた。今までの全てを。
「で、どうするんだ?」
しかしそれは然程重要ではない。必要なのは今からどうするかなのだから。
「助ける方法を、なんとかして探すしかねえだろ。諦めるなんて俺にはできねえ。」
「ま、だろうな。」
むしろここで諦めるとか言うわけがない。家族が死にそうになっているのにな。
「俺は生まれてから何度もその方法を探した。この呪いを解く方法はねえのかって。だけどそいつを倒すしか方法は見当たらなかったんだ。それをしようにもどの悪魔がその呪いをかけたのかが分からねえ。」
「つまり手詰まりと。」
まあ当たり前か。最上位の悪魔ですら七十二柱も存在し、それ以外の悪魔は星の数ほど存在する。はっきり言って分が悪い。
「だがよアクト。正直に言わせてもらうぞ。お前はまだまだ甘い。」
「あ?どういうことだよ。」
「取れる手はまだまだあるはずだ。もう身内の問題に人を巻き込めねえとか言ってる場合じゃねえぞ。人に迷惑かけまくっても後で謝れば、その埋め合わせができるならなんとかなる。だけど失った家族はもう二度と帰ってこないんだからな。」
少なくとも俺とシルフェは全力で手伝う。俺もあいつも友人が困っているのを見てて、助けずにはいられないのだから。
「魔法を極めた学園長ならば何か知ってるかもしれない。それに俺が契約している悪魔ならばその悪魔を知ってるかもしれん。まだやれる事は腐るほどあるぞ。踏み留まっている暇はねえ。」
「……すまねえ。恩に切る。」
「友達に損得なんて関係ねえだろ。さっさと行くぞ。ここにいる時間も惜しい。まず俺はシルフェと合流して事情を伝えてくる。その間にアクトは学園長の方へ行っててくれ。」
「分かった!ついでに部長にも聞いてみる!」
「生徒会長か……確かに何かしらは知ってそうだ。」
タイムリミットは不明。もしかしたら一週間で死ぬかもしれない。
「アクスドラ。」
『このまま説明してよいか?』
「構わん。」
アクトは短距離転移を繰り返し、俺は加速で常に加速し続ける。屋根の上を走っていくから一分もかからず着くだろう。
『我輩の権能を使えば悪魔を強制的に呼び出すことが可能だ。しかしそれには悪魔の名前か、個体番号を知る必要がある。』
「そうかい!」
名前のある悪魔と個体番号で識別される名前の無い悪魔。悪魔にはこの2種類がある。七十二柱以外は生まれつきは名前がないらしい。つまり結局正体が分からなきゃどうしようもないわけだ。
「シルフェ!」
「どうしたんですかそんなに急いで。」
「図書室に行くぞ。悪魔に関する情報を全てかき集める。」
「ですからどうして?」
「行きながら説明する。急いでるんだ。」
「……わかりましたよ。それじゃあ急ぎましょうか。」
やはり正体を掴むのなら本を集める必要がある。アクトは以前母から悪魔の特徴を教えてもらっていたらしい。そこからどの悪魔か推測するしかない。さーて頑張りましょうか。




