3.お見合い開始
俺は直ぐに手紙を読み始める。少し読んだところで少し思考が停止し、手紙の文字が見えるように机に置く。
「……ちなみにもう目は通したので?」
「もちろんだ。エース殿下からはむしろ読むようにと言われていたからな。」
分かったうえで俺がここにいんのかよ。
「ここに書いてあることは、俺を臣下にさせたいからシルフェと婚約させろってことなんだが?」
「知っている。殿下はお前のことを随分と気に入っているようだからな。公爵家の一員とし、捕まえておきたいのだろう。」
「自分の娘をあったこともない平民と婚約させようと?」
「私に抵抗などない。殿下もこれは強制ではないと明言しているからな。必要なのはシルフェードの承認のみだ。」
「……常識的に考えてただの仲のいい友達が婚約はありえねえんじゃねえの?」
「貴族間でも仲の良い二人が結婚させられるということがよくある。何の問題もない。」
エースは俺という人材を欲しがっている。しかし、平民を国に拘束することはできない。だから俺とシルフェを婚約させて貴族にさせたがっているんだ。公爵家の一員が簡単に国を出るなんてできないからな。
「シルフェは絶対断るぞ。」
「男がうだうだ言うな。それを確かめるためにこれからお見合いを行うのだからな。」
俺は腕を掴まれ、扉の方へと連れて行かれる。引き剥がそうにも俺の腕を潰さんばかりの握力。引き剥がせない。そのままグラムは乱雑に扉を開け、俺を投げ入れる。
「見合い相手を連れてきたぞ。」
部屋の扉の先が部屋ってのは普通ならおかしいが、恐らく空間魔法なのだろう。こんな状況でも受け身はしっかり取れているので既に立ち上がってシルフェの存在を確認する。
「準備はできたな。」
気付けば俺の服装はタキシードになり、知覚する間もなく椅子に座っている。
「空間魔法を極めるとこんなこともできるようになるのだよ。」
俺が着ている服は正に礼装というのに相応しいタキシード。この部屋には様々な装飾が施されており、物凄く豪華だと誰だって一目で分かるだろう。
俺はそんな部屋の真ん中にある机の椅子に座っており、その向かい側には二人の男女が座っている。
女性の方はシルフェ。その整った顔や、美しい髪、何よりそのジト目はよく見る。だが一番違う点はドレスを着ているところだろう。俺は今まで学園の制服や、冒険の格好しか見たことがなかったから新鮮に見える。
男性の方は今日初めて会ったグラム公爵。少なくとも美男だというのは分かる。若々しさはなく、少し老いているように感じるものの、その眼光は鋭さを感じさせる。服装を見ても威厳ある貴族という風に感じさせる事だろう。
「さて、お見合いを始めようか。」
そうして全く表情を変えないまま、どこか嬉しそうに男が言い放つ。いや、まあ、どうしてこうなったのだろうか。何故俺がシルフェとお見合いをしている。本来の目的はそうではなかったはずだ。
「どうして、こうなった……」
何を間違えた。
次回で終わらせたいなあ




