1.どうしてこうなった
四章の前に、ちょっと必要だけど必要じゃない話をどうぞ。
俺が着ている服は正に礼装というのに相応しいタキシード。この部屋には様々な装飾が施されており、物凄く豪華だと誰だって一目で分かるだろう。
俺はそんな部屋の真ん中にある机の椅子に座っており、その向かい側には二人の男女が座っている。
女性の方は見知った顔だ。その整った顔や、美しい髪、何よりそのジト目はよく見る。だが一番違う点はドレスを着ているところだろう。俺は今まで学園の制服や、冒険の格好しか見たことがなかったから新鮮に見える。
男性の方は一度も会ったことがない。少なくとも美男だというのは分かる。若々しさはなく、少し老いているように感じるものの、その眼光は鋭さを感じさせる。服装を見ても威厳ある貴族という風に感じさせる事だろう。
「さて、お見合いを始めようか。」
そうして全く表情を変えないまま、どこか嬉しそうに男が言い放つ。いや、まあ、どうしてこうなったのだろうか。何故俺がシルフェとお見合いをしている。本来の目的はそうではなかったはずだ。
この話を説明するにはちょっと前に戻らなくてはならない。本当に最近、つまり一日前に――




