15.ここに、二人の英雄が
光がはれ、俺の目の前にさっきの男が映る。もう精霊王は一人もいない。台座には既に聖剣はない。
「聖剣は、どうした?」
「……」
俺は一歩ずつ男に近付く。
「まさかお前のような一般人を聖剣が選んだと?」
「……」
俺は右手に微かな空間、柄を握れるほどの空間を開ける。
「お前のような臆病者を、自己中心的なものを聖剣が選んだというのか!?」
「聖剣が選んだんじゃねえ。」
光が右手に集まり、右手に重みを持たせる。
「俺が聖剣を選んだんだ。」
閃光が走る。無銘流奥義四ノ型『竜牙』。いつもと違う光の刃が男を襲う。
「ぐっ!馬鹿なっ!」
しかし光の刃は弾かれる。ああ、知っている。この程度でやられはしないだろう。
『俺は鍛治王と共に作り出したこの剣を、原材料の星屑から名付けた。故にこの名は――
「『希望へと続く一振りの星』ッ!!!」
隕石から作られた剣。故に星屑。それがこの聖剣の名。
『俺の名を呼びな!』
頭の中に声が響き、聖剣から知識が流れ込んでくる。故に、躊躇わずに名を呼ぶ。
「『極光之英雄』」
二代目勇者に使用が許可された名。聖剣はその中にある歴代勇者の名を本人から許可され、更に条件を達成することによって勇者の能力の一部を使用できる。
「それが悪しき行いでない事」
これが二代目勇者ヴァザグレイが出した条件。これが悪しき行為でないのは明白である。
「極光よ。」
聖剣に光が集まり、纏う。これが、これこそが二代目勇者の力。固有属性極光属性。これを聖剣を通して限定的に使用することができる。
「『星の監視者』」
眩い光が、まるで流星群かのように男に降り注ぐ。
「ッ!!抉れっ!」
空間が歪み、轟音と共に空間そのものを抉り出した。しかし、光は滅びぬ。その程度では嫌がらせ程度でしかない。次々と光が男とぶつかる中、ゆっくりと聖剣を構える。
「斬れっ!」
光の刃が相手が反応するより速く、切り裂く。
「無銘流奥義六ノ型『絶剣』」
確認などしない。絶剣に斬れないものはないから。だが、右腕の氷が形を保てず、溶け始める。
「やっぱり、魔力が足りてねえか……」
あんな大規模魔法だ。持たねえのは分かっていたが。
――今回は見逃そう
声が辺りに響く。さっきの男の声だ。
――次は本当の体でお前と戦ってやろうではないか
光がの中で砂となって崩れゆくローブを羽織る男の姿が一瞬見えた。
「はは……これでただのゴーレムかよ……」
随分とぶっ飛んだ奴だったんだな
『レベルが上がりました。』
『レベルアップボーナスを実行します。』
『スキル[剣神]とスキル[神域の瞑想]、当人の人智を超えた技術を確認。伝説技能[英雄剣術]を取得しました。』
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全ての魔物の良いところを組み合わせ、完璧な体を作り出す。それこそが俺の決戦形態。
「『究極生命体』」
天使の翼。竜の皮膚。鬼の手足。その他にも様々な細かなパーツをかけ合わせた姿。
「『竜の咆哮』」
それだけで、殆どの動きが止まり、雑魚は死ぬ。もちろん騎士に被害は出ないように結界を張って。
「『殺戮の舞踏会』」
俺の体から様々な魔物の爪が、刃が、牙が出現する。そして、瞬く間に死ぬ。
「聞け。お前たちが誰に敵を回したのかを。」
血の海が広がり、その血ごと肉体は全て俺に取り込まれる。これが強欲の能力。
「人の魔王。オルゼイ帝国が最強の矛。」
たった一人残る男の前で悠然と笑う。
「シンヤ・カンザキだ!」
『スキル[強欲]が伝説技能[強欲之罪]に進化しました。』
やっとジンを勇者にできた




