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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第3章〜魔王と呼ばれた勇者〜
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12.勇者誕生 中編

今回の護衛が少ない理由は他ならぬ勇者自身がいる事だ。シンヤを倒せる奴なんて束になっても早々いやしない。だから格上相手でもシンヤが来れば倒せる。その思いで全員が時間稼ぎの為に戦ったのだ。


俺が対峙するのは素手で戦う大男。素早さで翻弄して避け続けるが、相手の防御が上手いせいか良い一撃が入らない。



「確かに速い。だが、この私には敵わない!」



大柄な男が急に加速し、俺へと拳を振るう。反射的に木刀で防御するが、木刀が折れ、そのまま俺へと拳が振るわれる。



「ジンさん!」

「ジン!」



シルフェとアクトの声が聞こえた瞬間、精霊宮殿の方に真っ直ぐぶっ飛んだ。



「がっ!」



足をしっかりとつき、徐々に減速して止まる。口から血を吐き出す。直ぐに体を魔法で回復させ、地面を蹴ろうとした瞬間。その思考は掻き消された。



「ジン!大丈夫か!やっぱり俺が出た方が……」



それは聖剣を抜かず、悩んだ顔をしたままなシンヤの姿だった。



「おいテメエ。何してんだ。」



俺は最近で一番怒り狂ったのかもしれない。ここまでバカだとは思わなかった。半分呆れに近い感情がある。



「なんで、聖剣を抜いてねえんだよ。」

「俺が、出た方が確実に対処できると思って……」

「なら何で今、戦ってねえんだよ。」

「だけど、聖剣を抜いてから戦った方が良い気もしたんだ。もしその間に聖剣が壊されたら……」



俺はシンヤの顔面を殴る。



「え?」



ああ知ってる。別にシンヤは痛くも何ともないだろう。それぐらい実力差があるのだ。そんなに力があって尚、こんな事をするのだから。



「今!戦ってる奴は全員お前を待ってんだよ!」



俺はシンヤの胸ぐらを掴み、そう言う。



「テメエなら一瞬で片付けられる奴と分かってて、聖剣を抜くのを待ってやってんだよ!」



シンヤが出たらあんな雑魚。十分あれば全滅する。それ程までに圧倒的な実力差があるのだ。



「なのにテメエは数十分ここで悩んでるだけか!?許されるわけねえじゃねえか!」



ああ、馬鹿だとは知っていたがここまでの愚か者だったとは。



「いい加減、全部自分で決めろよ!勇者になるのも!その七大騎士セブンスナイツっていう肩書きも!聖剣を抜くのも!人に言われたからで決めようとしてんじゃねえよクソガキが!」



子供じゃねえんだよ。いつまでも悩んでんじゃねえよ。この国では15で成人なんだよ。地球は二十歳だったかもしれんがな。



「選べ!神崎(かんざき)真也(しんや)!」



今思えば、同郷だと知っていたからこそここまで肩入れしたのかもな。



「俺は、俺は!」



シンヤは少し悩みながらも言葉を発する。



「勇者には、ならない!」



声が響く。精霊王達が動揺したのが伝わる。俺にとっては予想通りだが。



「なら、やる事は決まってんだろ?」

「ああ!」



シンヤは駆け出す。



「許されぬ。それはあってはならぬ。今、この場で勇者を誕生させねばならぬのだから。」

「然り。聖剣はこの機を逃せば、次に抜けるのは更に何年も先になってしまう。」

「うるせえよ。テメエらも聖剣なんかに頼ってんじゃねえよ。」



俺はシンヤの行く先にいる精霊王を『絶剣』にて切り裂く。例え遥か格上でも俺の絶剣は切り裂く。



「行けシンヤ!誰もお前を止めやしねえ!」

「ああ!わかった!」



シンヤは突き進む。もう迷う事は、ないだろう。






==========






ああ!そうだ!簡単な事だったんだ!自分の正しさも!自分が何をしたいかも!自分で決めてしまえば良かったんだ!


俺はグローリーを確かに殺した。しかし、俺はこの、魔物を支配する力をグローリーから受け継いだ。俺が持つ本来の能力は強欲アワリティア!全てを奪う力。全てを欲する力。何故、俺が自分自身を節制する必要があったのだ!


グローリーは楽になりたかったから殺されたんじゃない!俺にこの力を与えたかったから、()()殺される事を選んだんだ!他ならぬ俺自身に!


ならば答えは出た。俺は勇者にならない。勇者になりたくなんてなかったんだ。俺は、自分のやりたいように生きる。そこに聖剣が必要なかっただけの話。



「一応。名乗らせて頂こう。」



俺は確実に一歩踏み出し、魔力を溢れさせる。



「元勇者候補。七大騎士が筆頭、シンヤ・カンザキ。」



俺は体を変質させる。



「それが、俺の名だ。」

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