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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第3章〜魔王と呼ばれた勇者〜
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11.勇者誕生 前編

アクスドラから勇者の話を聞き終わった頃、精霊の内の一人がこっちに来る。



「そろそろー勇者様が聖剣を抜くらしいよー。精霊王様が来ればってさー。」

「はい。お伝えいただきありがとうございます。よしお前ら行くぞ!」



騎士の隊長らしき人が受け答えし、聖剣がある場所へと騎士達が向かう。それに合わせて俺たちも向かった。俺たちが歩いていくと、途中で大きな建物が見えてくる。


それは大きな宮殿のように見える。横に広く、白を起点として作られた小さくはないが大きくもない宮殿。



「あれは精霊宮殿ですね。精霊王が住まう宮殿です。」

「あそこに聖剣もあるのか?」

「はい。住処に近い方が守りやすいのでしょう。」



確かにな。防衛において重要なものを最も安全な場所に置くのが一番良い。そうやって精霊宮殿の中に進んでいく。


結構長い間廊下を歩いていると、中庭のような場所に出る。真ん中に台座と、それに刺さった聖剣がある。そこには六人の精霊と、聖剣の前に立つシンヤの姿があった。



「これより聖剣の儀を執り行う。」



精霊王のうちの一人、緑色のオーラを纏った女性の精霊王がそう言う。



「我ら六柱の精霊王の名において承認を行い、シンヤ・カンザキに聖剣を抜く権利を与える。」



青いオーラを纏う男性の精霊が続いて言う。



「ここにて、今一度相応しい者か審議を行う。」



精霊王の中で最も年老いた男性の精霊がそう言い、辺りに魔力が満ちる。そして六人の精霊王が順にシンヤへと問う。



「汝、聖剣に認められし者であるか?」

「然り。」



「汝、勇気ある者であるか?」

「然り。」



「汝、人のために剣を取る者であるか?」

「然り。」



「汝、愚者に非ずか?」

「然り。」



「汝、人々に認められし者であるか?」

「然り。」



「汝、魔王を討つ者であるか?」

「然り。」



六人との問答を終え、赤きオーラを纏う男性の精霊王が口を開く。



「ならば抜け。そして挑むが良い。我らが汝を第十代勇者として認めよう。」



その言葉を最後にシンヤは聖剣へと手を触れ、今抜こうとした瞬間。



精霊界が、揺れた。



周りをよく見れば魔法が発動した感覚を感じた。



「何百人もの人が一気に精霊界へ攻め入っている!」

「ッ!門を護衛する者はどうしたッ!」



俺の言葉に反応し、隊長がそう言う。精霊が逃げ惑い、草木が燃えていく。



「すみませぬ精霊王。原因を調べるための時間をくれませぬか?」

「構わぬ。しかし、聖剣の儀は続ける。さあ新しき勇者よ剣を抜くが良い。」



精霊王がそう催促するが、シンヤは見るからに動揺している。



「いや、だが、私が出た方が良いのでは?」

「ならば余計に早く抜けば良い。」

「聖剣を抜くのには数十分間かかるのであろう?その間に何かあったら……」

「心配いらぬ。聖剣と勇者は守ろう。他の精霊が死ぬのはもはや仕方ない。さあ、聖剣を抜け。」



しかし、それに対し淡々と精霊王も返す。ま、合理的にいくならそうだな。



「シンヤ。俺に任せておけ。」

「ジン……」



俺はシンヤの肩を軽く叩いてそう言う。俺が出るのがいい。そのためにここにいる。



「よし行くぞ。アクト、シルフェ。」

「分かってら。そのためにここに来たんだしよ。」

「さっさとやりましょう。」



俺は全力で地面を蹴った。俺は夏休みの初めから生徒会長から指導を受けていた。夏休みの間、生徒会長のスキルへの膨大な知識と俺のたゆまぬ努力によって完成した。新たなスキル。



「『加速アクセラレート』ッ!!」



一歩、二歩、三歩と徐々に加速し、アクトとシルフェを置いて一早く外に出た。勤勉インダストリアを変質させ作り出したスキル。ただ名の通り加速し続ける。



「よく聞け精霊界の住民よ!」



そこにいたのは黒いローブを見に纏った集団。その先頭に立つ男が大声で演説するように話している。



「我らは現在の偽りの神の支配から人々を解き放ち、正統なる神である『破壊神』様に神位を取り戻させる為にここに来た!魔王とはこの破壊神様の使徒である!それに仇なす勇者を誕生させてはならんのだ!」



俺は地面を蹴り、止まる気配なく接近する。騎士達は警戒してか様子見しているが、そんなの知らん。



「貴様らルスト教などという邪宗教の横暴もここまでだ!我々アグレイシア教が全てをひねり潰してやろう!」

「てめえらがッ!」



俺は空中で体を捻り、その目で先頭に立つ男を捉える。



「邪宗教だろうがッ!」



顎を蹴り抜いた。



「司祭様っ!?」

「この、野蛮人めが!」

「うるせえんだよ。人殺ししといて何良い子ぶってんだよ。平和的に会話で解決しろよバカが。」



そんな事を言っているうちに魔法を撃ってくる。まあ当たるわけがないが。



「かかって来いよ!全員一気に片付けてやるからな!」



確かに全員、並大抵の実力者ではない。しかし、勝てない相手では決してない。



「総員!突撃せよ!極力捕縛し、不可能だと判断した場合は殺害を許可する!



隊長がその隙を見て、即座に突撃命令を出す。



「『幻影青竜(ファントム)』」

「目覚めな!『神帝の白眼』」



シルフェとアクトも既に臨戦態勢に入っている。



「さて!蹂躙するか!」



戦いが始まった。

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