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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第3章〜魔王と呼ばれた勇者〜
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6.翻弄

俺はいつも通り、日が昇る少し前に校庭に出て木刀を振っていた。特に回数は決めず、俺が満足するまでずっと。



「ここにいたんだね。」

「ん?」



俺は声がした方に振り返る。シンヤか。こんな朝っぱらから何の用なのだろう。



「君の部屋に行ったのにいなかったら、探すのに少し苦労したよ。」

「俺の魔力をを追えば良かったろ。」

「あ、その手があったか。」



本当に思いついてもいなかったのか。驚いたような顔をしている。



「で、何の用だ。」



俺は木刀を振るのを止め、シンヤに向き直る。



「いや、そう言えばお礼を言ってなかったのを思い出してね。」

「感謝されるような事をした覚えはねえよ。」

「君はなくても俺にはあるから。」



どうもこの遠慮さ加減に違和感を感じる。修羅場を潜ったような人間の口調じゃない。レベルを上げるのには修羅場を潜り抜ける必要がある。そしてその戦いを乗り越えるには絶望せずに、挑まなければならない。こいつにはそんな感じがない。



「俺は結局、自分がグローリーを倒したのが正しかったのか。それだけを考えてきた。その答えは未だに見つからない。だけど今、何をなくちゃいけないかを考えたんだ。そしてグローリーが俺に何をして欲しかったか。俺は勇者候補だ。未来を見て、みんなに勇気を届けなくちゃいけない。」

「……そうかよ。」



そういうのが、英雄らしくないって言ってんだがな。どこまでもまあ、強そうに見えない奴だ。



「ああそれで、特別授業についてなんだけど。時間は大丈夫かい?」

「食堂で待っててくれ。直ぐに行く。」

「分かった。」



そう言ってシンヤは寮の方に歩く。



「使命とか、そんな事を考えてるうちはまだ駄目なんだよ。」



君たちは誰かに任されたからなんとなく勇者をやり、魔王を倒した勇者がいたと思うだろうか。否、いやしない。全員が、己の欲望の元に魔王を倒した。それにまだ気付かない。あれ程の力があって、なぜ万人に従うのだろうか。






==========






「よし。これで全員だね?」

「ああ。」



俺たちは一つのテーブルに座っている。アクト、シルフェ、シンヤ、俺の四人。



「それじゃあ自己紹介をしようか。俺の名はシンヤ・カンザキ。今回は手伝ってくれてありがとう。」

「いいってことよ!ジンの奴がいねえんじゃ、俺たちもダンジョンに本腰入れられねえからな!」



アクトはそうやってフレンドリーに返す。



「俺の名前はアクト・ラスだ。短い間だけどよろしくな。」

「ああ、よろしく頼む。」



そうやってアクトとシンヤは握手をする。



「どうも初めまして。私はシルフェード・フォン・ファルクラムと言います。今回はよろしくお願いしますね。」

「ああ。こちらこそよろしく。」



「さて。」と、シンヤが言って話を始める。



「今回話すことは来週行われる特別授業だ。目的は一年生にレベル10がどれほどの高みか教えるためだね。それで具体的な内容について何か提案はあるかい?」

「無難な案ですが、模擬戦などはいかがでしょう。手っ取り早く実力は教えられるのでは?」

「まあ、他に良い案がなければ俺もそれだと思うけど。戦う相手がいないのが唯一の問題なんだよ。」

「それなら、ジンさんが戦えばいいのでは?」

「やらねえよ。」



俺は即答をする。勝機がない戦いはしない。それが鉄則だ。



「なら、多対一はどうですか?戦闘学部一年全員対、シンヤさんが一番いいと思いますけど。」

「『手加減』でレベル5ぐらいでなら丁度いいと思うぜ。」



俺はシルフェの言葉にそう同調する。



「うん。じゃあそうしようかな。」

「おいおい。そんなにあっさり決めていいのか?」



アクトがそう聞き返す。



「なら、もう少し話し合うかい?」

「いや時間は少ねえのはいいんだがよ、こんなにあっさり決めるとは思わなくてよ。」

「と、言われてもなあ・・・」



シンヤがそんな風に苦笑いする。



「別にこれでいいだろ。場所は校庭でいいよな?」

「ああ。ここの校庭は広いから、充分に戦えるだろうしね。」



じゃあ後はこの資料をまとめて先生に提出するだけか。



「じゃあ資料の作成は私に任せてください。三人で流れの確認をお願いします。」

「了解。じゃあ任せた。」



俺はシルフェにそう答える。さて、後はどういう風に進めるか決めなくちゃな。

ちなみにこの勇者候補のテーマは『自分で決められない子』ですね。

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