3.勤勉の過去
とまあ部活動の合宿としてはこんな感じだ。二日目はずっとダンジョンを彷徨っていたし、三日目はボロボロになって帰っただけだからな。まあ別に、なんでもない。強いて言うならレベルが6に上がったぐらいだ。
モンスターハウスで十二時間ずっと魔物を倒し続ける話なんて聞いてもしょうがないだろ。一匹一匹は大したことなかったし。
「ほれ、書け。」
そんなわけで学園に帰ってきた俺は生徒会の手続きの紙を書いている。あの後学園長に呼ばれ、これを書かされているのだ。
「なんで一々呼び出すんだよ。書類なんて部屋に直接送ればいいのに。」
「おぬしと話がしたくての。特にその勤勉についてじゃな。」
勤勉。俺を支える要素の一つ。そして俺が世界で一番努力しているという証拠でもある。
「今までわしは三人その能力を保有した人を見たことがある。努力の果てに自分の体を壊し、二度と立てなくなってしまった男。魔導を知り過ぎたが故に悪魔に殺された女。武の頂に一度は辿り着いたが、その代償にそれ以外の全てを失った男。どれも極度の努力によって大きな力を得たものの、失敗した奴らじゃ。」
まあ、だろうな。
「勤勉の保有者で歴史に名を残したのはニ代目勇者のヴァザグレイ・フォン・ファルクラムのみじゃ。」
「ファルクラムってことは……」
「まあシルフェードの祖先という事になるの。」
へえ。あそこ勇者の血族だったのか。勇者についてはあまり知らないからな。
「他の美徳系スキルを保有した人間はほとんどが歴史に名を残るような何かをしておる。勤勉は異常なのじゃ。」
「そりゃな。勤勉過ぎるってのは、人間として何かを失うと言っているようなものだ。人との関わりすらも無駄の断じ、一秒たりとて無駄にしないために行動する。」
天才の努力と凡人の努力は違う。天才と凡人ではそもそも世界の見え方が違うのだ。天才はやりたいと思うから努力する。凡人はやりたくないけど努力する。根本が全く違う。
「過剰な勤勉は悪徳だよ。」
「欲望がない人間など本来はおらんからな。品行方正の塊のようなエルフでも休息を好み、何かを欲するのじゃから。」
無欲は罪だ。何かを求めが故に一致団結するのが人間なのだ。それは歴史が証明している。
「それでなんじゃが、お主は勤勉でありながらそれを克服した非常に稀な人間じゃ。」
そう言いながら一つの手紙を俺に投げる。
「今、学園は夏休みに入っておる。それが明けると同時にこの学園に留学するという名目で一人の男がやってくる。」
俺は手紙を開け、中を読む。
「オルゼイ帝国が七大騎士筆頭。『魔王』シンヤ・カンザキを勇者候補として精霊界へと連れて行く。そのための補佐をお願いしたいのじゃ。」
「シンヤ・カンザキ。ふーん。」
カンザキ。シンヤならまあいなくはないが、カンザキか。同郷の可能性もあるな。
「生徒会副会長で同い年じゃからちょうど良いしの。」
「わかった受けよう。」
「なら、その時にもっと細かい説明をしよう。それまでは普通に過ごしてて良いぞ。」
「了解。あと書き終わった。」
俺は生徒会の用紙を学園長に渡す。
「……よし。それじゃあ任せたぞ。あと、折角だから夏休みを楽しむのじゃぞ。」
そんな感じで俺は学園長室をでた。
書いてたら三章というほど長くならないし、重要性ないな
と思い2.5章へと変更しました。




