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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第2章〜勝利のために〜
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13.敗北

視界が光に満たされる。喉を目を体を鋭き雷が焼き焦がす。



「どうした。まだ一発目だぞ?」



一瞬の一撃だった。しかしその一瞬で俺の体はもう崩れていた。



「もう倒れるのか?」



地面に俺は倒れている。体は焦げ、意識が途切れそうな中。俺はエースを睨み続ける。体はもうほとんど動かない。



「……見込み違いだったようだな。久し振りに楽しめると思ったが、所詮この程度か。まあこの一瞬だけは楽しみせてもらったぞ。」



鼓膜が破れたのか、エースが何か口を開いているのは分かるが何を言っているのか聞こえない。しかしエースが踵を返し、会場から出ようとした瞬間。俺の体は再び動いた。



勤勉インダストリアの能力制限が解除されました。』



勤勉インダストリアは使用者が狂うほどにそれを願うなら、できる限りで答えてくれる。



『残り能力制限は一つです。』



故に俺は再び立った。



(たかが俺を殺した程度で。)



俺は心で強く言葉を発する。それを王眼が読み取ると知っているから。



――俺に勝てると思うなよ?

「フ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」



エースは高笑いしている。



「良いだろう!なら貴様の全力をぶつけて来い!」



俺は木刀を構える。もう持ち手の部分しか残っていない。しかし、それでいい。持ち手さえあればいい。



――無銘流奥義()()()



振るうは六つ目の刃。世界で俺だけが至った剣の境地。果てなき剣の道の一つの到着点。






その時、会場全体が死の恐怖に襲われた。圧倒的な強者であるエースも、世界最強の魔法使いであるオーディンも、学園最強のロウでさえも。



(死ぬッ!)



そしてエースの短い生涯の中、初めて感じた生命の危機だった。アレは単純な威力がある一撃ではない。恐らく子供でも受け止められるような威力。しかし、そんなものに恐怖している。アレはそういうものだった直感したのだ。



「『黄金鱗(ゴールドスケイル)』ッ!!」



結界の名をエースは叫ぶ。全力を込めなければ死ぬと直感したのだ。そしてその判断は正しかった。



――『絶剣ぜっけん



聞こえぬはずの声が、心を読む王眼を持つエースだけが聞き取った。それは結界をまるでないものかのようにすり抜け、自分の持つ無尽蔵な闘気と魔力をも無視してエースに届いた。刃が腹まで届いたところで、ジンは崩れ落ちた。身体中から血を吹き出して。



「フハ、ハハハハハ。」



今度は力無くエースが笑った。



「奥の手は使っていないにせよ、我に防御を取らせただけでなく傷を負わせるとは。」



エースの直感はジンが振るった刃の正体を大まかに把握した。そして結界を張らねば死んでいたという事を再確認したのだ。結界を貫通した分エネルギーを使ったから自分の体は斬られずに済んだと。



「ジンよ。もう何も聞こえぬと知っているが、敢えて言おう。前言を撤回する。」



プライドの高く、自分を最強と、最高の存在であると信じて疑わぬエースが前言を撤回する。ここに彼のことを知る者がいたら記憶喪失を疑うだろう。



「貴様は優れた戦士だ。故に、人間になってまた会おう。貴様は我が期待に応えた。」



エースは振り返り、試合場から出る。



「次に戦う時は、全霊を持って相手をしてやろうではないか。ジン・アルカッセル。」



こうして、ジン・アルカッセルは敗北した。

無銘流奥義六ノ型『絶剣』

ジン・アルカッセルが創り出したオリジナルの奥義。その特性上、五ノ型と対照的に魔力と闘気を使わない。あまりにも綺麗すぎる一撃を世界がスキルであると誤認。その効果が分からぬ故に使用者が思い浮かべる効果を生み出す。つまりありとあらゆるものを切り裂く万能の刃である。

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