11.決勝戦
俺は悠然と歩く。アクトの眼を奪えなかったのは失敗だったが、まあ問題ない。死ぬ気で挑むだけだ。
『これより!第1学年個人の部決勝戦を行います!』
俺とエースは同時に会場に入った。
『最早文言は必要ないでしょう!ここまでの試合を全て一撃で仕留めてきた二人!どちらが上か、その目でご照覧あれ!』
俺は静かに木刀を構える。
『試合開始!』
その一言と同時に俺の周りにいくつもの武具が展開される。剣、槍、斧。その他にもいくつもある黄金の武具達。これを超高速で射出するのがエースの戦い方。しかし、実体がある。そして目で追える。なら十分だ。
「無銘流奥義ニノ型『天幻』」
天幻とは、超高速で打つだけの技ではない。以前俺がそのように使ったのは戦源を使いこなせていなかったからだ。その本質は多重存在による完璧な同時攻撃。戦源は生命エネルギーである闘気と万能物質である魔力が混ざることによって存在を重複させる効果を得たのだ。故にこのようにいくつもの武器が飛んできた時も役に立つ。
「全て撃ち落とすか。」
「この程度で倒せると思ってんのか?」
「たわけが。我は遥か格下に対する戦い方を知らぬだけよ。どれだけ手加減しても簡単に滅ぶその身を恨むのだな。」
そうかよ。俺は地面を蹴り、距離を詰める。切り札はある。しかし、格下なら兎も角今相手にしているのは俺より格上。こいつを倒すほどの威力を出させるには少し条件が必要だ。
――無銘流奥義一ノ型『豪覇』
俺は戦源を木刀に集中させ、エースへと振り下ろす。しかしそれは結界に阻まれる。割れない。威力でいうなら最強級の豪覇でさえも。
「どうした。それは常時展開している結界だぞ?そこまで強度はないはずだがな!」
鎖が足元から出現する。空間が歪んでいるところから際限なくて出てきて、俺を縛ろうと追ってくる。
「フハハハハハ!どうした?その程度か?もっと貴様の力を見せよ!」
そこから更に違う武具も射出される。このまま避け続けていても意味はない。なんとかしてあいつの防御を破らなくては。
「借りるぜ!」
「ぬっ!」
俺は鎖を掴み、振り回して武器吹き飛ばす。鎖は直ぐに消えた。あいつの意思一つで出したり消したりできるんだな。
「『竜牙』」
俺の木刀から黒き刃が飛び出し、エースに襲い掛かる。これで傷一つつかないのは想定内。だから本命は次だ。
「グランヴァ・アンスト・ゲルト・バッシュ・グラ・シラン『氷獄』
エースの周りから氷の槍が出現し、エースの周りに放たれる。それはまるで牢獄かのようにエースを囲った。
「下らんな。」
しかしそれは簡単に壊された。少しエースが腕で押しただけで。
「身体能力も随分と高いんだな。」
「我はこの世界で唯一完璧な存在であるが故に、欠点など存在せぬ。」
悠然と、この世の真理を言うようにエースは言い放つ。
「少し期待していたのだがな。所詮この程度か。ただ普通より強くなった程度。この我の障壁一つをも破れないとはな。」
そう言いながらエースの右手に何かが展開される。そして俺はそれを本能的に恐怖した。あの剣は降らせてはいけない、そう直感した。
「『竜――「遅い!」
気付けば間合いに入られていた俺はいつ攻撃されたのか気付く間も無く、光に腹を切り裂かれた。
ちょっと今日は興奮し過ぎた。なんだよあの四周年記念。




