7.シルフェードvsアクト
『ジン・アルカッセル選手の勝利!』
歓声が響く。決勝に行くには大体9試合から10試合はしなきゃいけないから、何回か消化試合が続く。ブレスレットなんてつけてないから、全力状態で戦っている俺に勝てる奴なんて早々いるわけがない。
「準々決勝にして遂にか。」
シルフェとアクトが遂に戦う時が来た。この試合が終われば次はもう俺の準決勝なのだが、俺は観客席にいる。この戦いを見届けないわけにはいかない。それにここでどれだけ成長したのかを見ておけば、決勝で戦う時に対策ができる。
『それでは準々決勝!アクト・ラス選手とシルフェード・フォン・ファルクラム選手の試合を始めます!』
俺は笑みを浮かべ、その戦いに意識を落とした。
==========
『それでは準々決勝!アクト・ラス選手とシルフェード・フォン・ファルクラム選手の試合を始めます!』
その言葉と同時にアクトは槍を、シルフェードは剣を構える。
「最初から全力で行きますよ。」
「こっちもな。」
シルフェードは魔石を砕き、アクトは眼に魔力を集める。
「我らに祝福を!『神の祝福』」
「目覚めな!『神帝の白眼』」
先に動いたのはシルフェード。即座に後ろに回り剣を振るう。
「らっ!」
それに対し、アクトは支配の魔眼をシルフェードにかける。動きを一瞬鈍らす事しか出来はしないが、その一瞬をつき、槍を振るう。
「甘いですよ!」
「なっ!」
だが支配の魔眼は肉体の動きを操作するもの。魔力の動きは止められない。アクトの槍には木が引っかかっている。
「はあ!」
剣がアクトの体を突き飛ばす。アクトは咄嗟に木を斬り裂き、槍を引っかかったままの状態にせず手元に槍を残した。だが、ダメージは確実に残る。
「『支配の魔眼』」
砂が盛り上がり、アクトのクッションになると同時にシルフェと足に砂が絡みつく。
「……予知の魔眼は使わないのですか?」
即座に距離を詰めてくるアクトにシルフェードはそう聞く。確かに予知の魔眼を使っていれば魔法の発動を予知できていただろう。
「ああそうだったな!最近使うの禁止されてたから忘れてたよ!」
「忘れてた?」
強化の魔眼により一瞬だけアクトが強化され、シルフェードをに突きを放つがシルフェードが上半身を逸らし回避する。
(アクトさんにとって予知の魔眼はメインウェポン。それを禁止していた?それにされてたという事は誰かから教えを請うていたという事になりますが。)
そこでシルフェードを思考を断ち切る。今考えるべき事ではないと判断したのだ。
「なら、さぞ通常戦闘能力が強くなったんでしょうね!」
「さあな!」
シルフェードの体がブレる。あえて一瞬動きを止める事によって残像を残し、アクトを錯乱させる。
「だけど折角だからここから使わせてもらうぜ!」
「ッ!」
シルフェードが飛び込んでくるタイミング、方角全てにおいて完璧な瞬間に槍をシルフェードに対し突き出す。それをシルフェードは跳躍してかわす。
「ああ知ってたよ!」
アクトの眼から白い光線が放たれる。まるで『空裂眼刺驚』とような。
「くッ!」
咄嗟にシルフェードは空中でかわそうとするが、足にモロに突き刺さる。
「それらよっ!」
しかし攻撃の手は止まらない。着地しようとするシルフェードに向かってアクトは槍を穿つ。
「流石に、これは喰らいませんよ!」
剣で咄嗟に防ぎ、2人は距離を取る。シルフェードの足の傷は直ぐに癒え、跡形もなく消える。
「やっぱりお前相手だと一撃で決めなきゃ意味ねえか!」
「やれるもんならやってみてくださいよ!」
瞬間、シルフェの剣が光り輝く。そしてアクトがその光の正体を理解するより早く、シルフェードはアクトに剣を振るう。
「なっ!」
槍で確かにアクトは防いだ。しかし槍ごと吹き飛ばされた。明らかに威力が違う一撃。
「『神の祝福』を武器に付与しました。武器に使うのには少し勿体無いほど魔力を使いますが、単純計算で二倍の威力が出ます。」
いくら予知できようが防ぎ切れない一撃、避けようのない攻撃は意味をなさない。元々シルフェードの方が身体能力が高い。
「まあ、この程度ではやられないでしょう?」
ぶつかった壁の瓦礫を押し退け、アクトがその中から姿を現わす。
「賞賛に値するぜ。その能力はな。」
アクトの眼は進化する。否、本来の力を取り戻す。
「だが、俺の方が強い!」
アクトの左眼が黒く染まった。




