6.狂気
前世から、俺はあいつと戦っていた。
たった一人の幼馴染にして、生涯の友だった。
あいつは天才だった。常に物事の本質を見抜き、常に完璧だった。恐らく考え方から俺とは違っていたのだろう。俺とあいつじゃ見る世界が違ったのだ。
俺は全ての分野において、常に優秀と言われる成績を出し続けていた。人はみな俺を天才と呼んだ。
しかしあいつは大学時代にノーベル賞を三つ受賞し、大学卒業後は起業し、世界でも知らぬ人はいない世界一の大企業となった。
しかし俺は諦めなかった。戦った。俺が諦めたら世界の、あまりにも残酷な真実を知ってしまう気がして。毎日のほとんどを勉強に費やした。ほぼ数え切れないほどの資格を武器に、大企業で昇進を重ねた。
しかし、俺は残念ながら平凡だった。優秀止まりだった。あいつには及ばない、各分野の天才達にすら敗北したのだ。
そして、そこで俺は諦めてしまった。屈してしまった。40年に渡る長い、長いあいつとの戦いに終止符が打たれたのだ。
そこから先、堕落するのは早かった。金は、使わなかったのもあって腐る程あった。会社を辞め、残りの人生を自堕落に過ごした。あらゆるアニメ、漫画、小説を読んだ。
そしてその度に劣等感は重なっていった。何故、俺はこの主人公のようになれなかったのだろう。こんな奴なんかよりも必死に努力したはずなのに。必死に頑張ったはずなのに、結局天才には勝てなかった。この地球では結局勝てなかった。
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俺は異世界で二度目の生を歩み始めた。前回の反省を活かして、様々な物語から学んだ知識を活かして。
そして今世でも俺はあいつの背を追い続けてきた。もういないあいつの背を。あいつならできるだろうと思う姿を想像し、それに追いつけるように戦ってきた。
そのためなら、禁術だろうがなんだろうが。手を染めてやると決意した。
強くなるために生贄が必要ならそこら中の人間を攫って生贄に捧げよう。
強くなるために必要なら国をも滅ぼそう。
強くなるためなら。
絶対に、強くなるために。全てを捨てよう。
友も、親も、幸せも、楽しみも、国も、平和も、自分も。
なにもかも、強くなるために捨てよう。
あれ。なんで俺、強くなろうとしてるんだろう?
書いてて気付いたけど二章あんま長くならなそう




