4.大会は近い
「お久しぶりですね。」
ここはファルクラム領の領主が住まう館。
「お父様。」
「確か今は学園に通っていた筈だが。」
「丁度休みなんですよ。」
「……そうか。」
領主の部屋にて二人の男女が会話をしている。片方はシルフェード・フォン・ファルクラム。ファルクラム家の一人娘。それに相対するはグラム・フォン・ファルクラム。シルフェード・フォン・ファルクラムの実父。
「今回は折り入って頼みがございます。」
「なんだ?言ってみろ。」
「ファルクラム家が代々受け継ぐ、あの力を継承して頂きたくここに来ました。」
「……そうか。」
父親は酷く冷淡に。しかしどこか悲しげに言う。
「良いのか?それはつまり……」
「承知の上です。どうしても勝ちたい相手がいるんです。」
「……そうか。」
諦めたかのように父親は椅子にもたれかかる。
「……付いて来い。お前の頼みに無理とは絶対に言わん。」
「ありがとうございます。」
グレゼリオンが極東に存在するファルクラム領は今日も静かに、活気良く動き続ける。
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ここは特殊部。何人もの人が大会に向けその能力の鍛錬に勤しんでいる。
「アクト。君のその能力は私達特殊部の中でも抜きんでている。その両眼はな。」
「はい。」
特殊部が部長にして、生徒会会長でもある男。リラーティナ公爵家次期当主、ロウ・フォン・リラーティナ。それがアクト・ラスの前に立つ男。
「本来、私が一人にしっかり物事を教えるというのは極力避けたいんだが。一回だけ、一回だけその熱意に免じて力の使い方を一対一で叩き込んでやろう。できるだけ自分で考えるのが一番いいんだがな。」
アクトの両眼は進化する。その万能とも言える両眼は。
――大会は近い




