3.強くなるために
君達はとある本を知っているだろうか?地球に存在する漫画だ。ジンの世代ではそれはもう古い書物であったが、前世から昔のものを好んだジンはそれを知っている。
――1日1万回感謝の正拳突き
それをレベル4のジンが重いと感じる『丸太』を持ち、行う。しかし彼が感謝を行う事はない。既に感情を失った彼に、その行為は意味を成さないのだ。
故に一日一万回の素振り。場所は山奥。特に人通りが悪く、近くに何もない事から人も寄り付かぬ山の頂上。
しっかり、一本ずつ仮想の敵を仕留めるつもりで打つ。ただ真っ直ぐ、速く、丁寧に、鋭く。完成された一撃を目指すために。
無論。一日目、二日目と最初は一日ギリギリに終わる事がほとんどだった。しかし日数を重ねる度に確実にその動きは速くなっていった。最初こそ鈍重な動きも時が経てば普通の木刀を振るように動かしていた。
そして時間が余るようになった頃。彼は残りの時間を闘気を増やす瞑想へと費やした。
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彼はこれをするために座学において先行でテストを受け、満点を取った。それによって一学期に限り、授業を全て免除した。帰宅部の活動もこれを行うために休んだ。
二週間が過ぎた頃。ジンの体内で不思議な感覚が生まれ始めた。何か、今まで斬れなかったものが斬れる感覚を突然感じたのだ。その微小な感覚を掴むために、更に何度も何度も腕を振った。
魔法によって幾度も回復し続けることによって魔力も増え、余った時間で行う瞑想で闘気も増える。素振りをするのに戦源を使う。
自分の全てを鍛えられる。この修行が良かったと確信していた。
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最終日。
素振りを三時間程度で終えたジンはゆっくりと下山を始めた。その山は頂上のみ荒れ果てた地となっており、ジンの修行の成果を物語っていた。
ここは後に『英雄王の修練場』と呼ばれ、様々な人が武を極めるために集まったのだが、それはまた別の話。




