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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
序章〜英雄の第一歩〜
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4.模擬戦

6歳になった。闘気を体に纏うという技術を習得するのは中々大変だった。アレを使えば身体能力が大きく上昇する。原理は分からない。地球とは法則が違うのだろう。そんなわけで遂に剣術の稽古をつけてもらう事になった。



「剣術つっても一概には言えねえからな。取り敢えず素振りからするか?」



父さんがそう言う。素振りか。剣道をやっていた頃に何度も振っていた。まあ終ぞ完璧には至れなかったけど。俺は地面に置いている木刀を拾い、両手で振るう。前世の幼馴染(天才)ですら完璧な素振りをする事は出来なかった。つまり人力では完璧に至る事はほぼ不可能であるという事を示しているのだ。



「振り方は上手いな。だが自分より遥かに小さい敵や、大きい敵にはそれじゃあ当たらねえ。片手で振れ。片手の方が小回りが効く」



ああ、そういやこの世界には魔物がいるんだよな。大きい奴も小さい奴もいるわけだから、全部に対応できるように整えるのが道理か。剣道は自分と同じぐらいの大きさの敵を想定しているからな。少しぐらいならともかく、身長の半分以下だとか2倍以上じゃ戦いにくすぎる。



「闘気を使いながらやってみろ。」



俺はそう言われると同時に、体に闘気を纏わせる。闘気操作もかなり慣れてきた。体に闘気を纏わせると身体能力を上げることができる。攻撃、防御、速度全ての能力がアップするわけだ。あまり上手くはいかないな。斜め、横、縦と振ってみるが両手をいつも使っていたからか違和感がある。片手剣術などやったことはないし。



「まあまだ汚ねえが、初めてにしては上出来だ。素振りは毎日やっておけよ。」

「うん。」



そう言って素振りをやめる。すると今度は父さんが体に闘気を纏う。流れるような闘気操作。単純な慣れもあるのだろう。しかしそれを踏まえても相当な鍛錬を積んだはずだ。



「適当に打ってこい。悪いところから直してやる。」



そう言われると同時に容赦なく父さんに木刀で斬りかかる。が、軽く父さんの木刀で防がれる。



「片手を使えとは言ったが、両手を使うなとは言ってねえ。相手にダメージを与えたけりゃちゃんと両手を使え。」



その言葉と同時に後ろに引く。使い分けろってことか。



「おらっ!悩んでる必要はねえぞ!」



父さんも容赦なく上段から斬りつけてきた。咄嗟に避けるが、既に下段から二撃目が飛んできている。木刀の横の部分、いわゆるしのぎで微妙にズラす。防ぐよりはいなす方が簡単だ。少しでもそらせれば当たりはしない。そしてそこから腹に向かって木刀を振るう、が。



「あめえよ。」



木刀ごと右足で体を蹴られる。そうだな。この世界には闘気があるもんな。そりゃあダメージ無視で行動できるわけだ。俺は少し涙目になりつつ、立ち上がる。痛い。が、こんな直ぐに諦めちゃ何にもできやしない。



「『土壁アースウォール』」



父さんの目の前に土の壁を作る。打ってこいとは言われたが、魔法は禁止とは言われてない。俺は一直線に壁に向かって走る。



「邪魔くせえ。」



土の壁は簡単に破壊されるが、その程度想定内。戦いにおいて攻撃は隙をうむ。だからこそ俺は土の壁から横に飛び出し、父さんの真横から攻める。これなら蹴りも間に合わない。



「遅えよ。」



しかしその策は理不尽すぎるほどの身体能力で覆された。即座に体の向きを変え、俺の攻撃を防いだのだ。



「ッ!」

「まあ中々いい攻撃だったが、わざと隙を作ってやったんだからもう少し行って欲しかったぜ。」



まあ、手加減してたのは知ってた。だって動きが単調な上に、全く動いていない。これを手加減と言わずなんと言おうか。



「お前は結構理にかなった攻撃をする。あとは発想力の問題だ。どうやったら相手の隙をつけるか、とかな。んでもう一回やるか?」

「もちろん。」



俺は体に回復魔法をかけながら立ち上がる。人の戦い方っていうのは同じ流派でもかなり異なる場合が多い。なぜなら攻撃を主体にしたいか、防御を主体にしたいか、反撃を主体にしたいか。色々な自分の性格に合った戦い方を選び、最終的には自分だけの技術を身につける。武術というのはそういうもの。俺がやろうとしてるのはその延長線。剣道で培った理論をもとに対応力を上げる。



「それじゃあ今度はこっちから攻めるぞ!」



父さんが飛び込んでくるのに対し、両手で木刀を持ち防ごうとする。相手の攻撃には全てが有り得る。故に全てを警戒する。最悪のパターンがいつ有り得てもおかしくない。故に常に最悪を想定して行動する。



「戦う上で四肢は何よりも大事だ。ちゃんと守っとけ。」



鋭い足払いで、俺は体制を崩してしまう。しかしそれは理想論である。それができれば俺は天才だった。故に何億、何兆もの戦いの末にそれを見つけるのだ。俺は地面に手をつき、魔法を打ちながら後ろに下がる。



「格上相手に必要以上の距離をとるな。どうせ意味なんざねえからよ。」



一瞬で再び距離を詰められる。速い、避ける、防ぐ、いなす、無理。



「ぐあっ!」

「無駄を徹底的に省け。無駄な行動っていうのは、それをフェイントに組み込めるようになって初めて使っていいんだよ。」



だがこの程度で折れちゃあ意味がない。



「もう一回!」

「……はあ。めんどくせえのを弟子にとったかもしんねえな。」



目標を叶えるためならどんな手段でも使う。当たり前だ。

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