28.無銘流
圧縮させる。闘気と魔力が圧縮できるのなら、それが合わさった戦源も不可能なはずがない。木刀に全てを集中させる。
「一ノ型『豪覇』」
無名流が一ノ型。相手が避けるより速く悪魔を斬る。深くは斬れなかったが十分だろう。
「さあ、蹂躙しようか。」
あの感じからして危険度は4ぐらいだろう。普通のレベル3なら勝てないだろうが、生憎俺は普通じゃない。
『ば、バカな!それ程までに戦源を圧縮させるだと!?そんなの正気の沙汰ではない!一瞬でも気を抜けば自爆も有り得ぬというのに!』
俺は木刀に込める戦源の動きを変える。
「無名流奥義ニノ型『天幻』」
休む暇は与えん。俺は地面を蹴り、木刀を振るう。ただ最適化された動きで何度も斬るだけ。しかし速さに特化させた天幻はまるで相手が幻の刃に斬られているように錯覚する。
『図にのるなっ!』
しかしその中で半ば強引に悪魔が拳を振るう。避けるのは容易いが、折角だから使っておこうか。
「無名流奥義三ノ型『王壁』」
体の力を抜き、受けたダメージ分の速度で回転し悪魔に跳ね返す。
『ガッ!』
悪魔はそのまま吹き飛んでいく。
「これもう私いらなそうですね。」
「すまんな。」
「私別に強い奴と戦って喜ぶ趣味ありませんから大丈夫ですよ。」
俺だって戦いが楽しいわけじゃない。勝つのが楽しいんだ。負けるのが死ぬほど嫌なんだ。
『おのれっ!人間如きに!』
「その人間の体使ってる奴に言われたかねえよ。」
どこかにぶつかる前に翼を広げ、空中にとどまる。しかしそれは悪手だ。これは地上にいるより空中にいる方が当てやすい。
「無名流奥義四ノ型『竜牙』」
飛ぶ斬撃。月牙天衝や煩悩鳳のようなもの。しかし名高い剣豪が使うということはシンプルでありながらそれは強いということだ。それは悪魔の翼を容易に切り裂く。
『わ、私の翼がっ!』
「……とある宗教では六道というものが存在する。」
この世界でも地球から転生だか転移した住人が広げた知識が結構ある。その中の一つ六道がある。
「その中での修羅道は戦いの世界。闘争の世界。」
故にこの一撃は戦いを意味する一撃であるのだ。所謂、最強の一撃。
「無残に喰らうといい。無名流奥義五ノ型『修羅』」
俺の全ての魔力と闘気を戦源に変え放つ一撃。勝敗がどうであれ、全てを使う故に最後の一撃となる。
「言葉を発する暇もなく死ね。」
黒き刃が悪魔を切り裂く。
『レベルが上がりました。』
そんな機械音が頭に響く。それと同時に俺は倒れる。
「体の損傷が酷いですね。特に両腕ですが。」
「まだ未熟だからな。使いこなせねえんだよ。」
頭に響くレベルアップボーナスを聞き流しながらそう言い返す。
「兎も角お疲れ様です。ほとんど任せ切りで申し訳ありませんね。」
「いや、いい経験になった。」
やはり実戦でなければ見えないところもある。本当にいい経験になった。
「そういや、結局ミゴは殺して良かったのか?」
「……できれば生け捕りが理想的でしたが、アレはもう悪魔でしたし誰も文句は言わないでしょう。体が馴染んでいたらそれこそ人間の体ではなくなっていたでしょうし。」
ならいい。
「それじゃあ帰りますよ。軽く回復魔法はかけましたが、魔力も闘気も全然足りません。正直気を失わないのが恐ろしいぐらいです。」
「そりゃあ、慣れ、だよ。」
そう言う風に言っていると無性に睡魔が襲ってくる。俺はそれに一切あらがうことなく眠りについた。




