26.悪魔
俺たちは街中を全速力で走っていく。全力疾走で駆け抜けていく。昔魔力暴走による事件が起き、未だに再開発がされていない土地がある。それが南門付近の未開発土地。
「やっぱり犯罪者が逃げ込むのにうってつけの場所だからな!さっさと再開発を進めて欲しいんだが!」
「仕方ありませんよ!これでも9割がたは終わってますし、特にここら辺は魔力の乱れが酷いんですから!」
魔力が乱れていると魔道具が誤作動を起こす可能性があり、安易に住むのが難しい。現代で魔道具が使えないなんて不便すぎる。
「誰か倒れている人がいますね。」
男が身体中から血が出ている状態で倒れていた。ローブを羽織った男。恐らくは俺たちが追っているはずの教団員
「仲間割れ、ですかね?」
「……死んでいるな。どちらにせよ恐らく別にいるだろうな。さっさと見つけるぞ。」
気にはなるがそんな事より追いかける方が最優先だ。
「そうですねッ!?」
俺たちはその足を直ぐ止める。この魔力には覚えがある。こんなに悪魔みたいな魔力はしてなかったんだがな。
『ハハハハハハハ!遂にだ!あの雑魚どももやっと役に立ったな!』
「ミゴか!」
その姿はミゴ・アルスフレイン。しかし眼球は黒く染まり、体も所々黒くなっている。最後に見た姿とはかけはなれている。その周りには教団員が何人も転がっている。
『随分と気安く呼んでくれるな!もう私はお前らとは存在の格が違うのだぞ?』
「悪魔を、取り込んだのですね・・・!」
悪魔に実体は存在しない。いや、正確には存在するが本体は悪魔が生息する魔界に置いてきている。肉体までもをこの世界に呼び出すのにはそれこそ何万人分もの魔力が必要だからだ。
『ああ、その通り。あの雑魚どもを生贄にして悪魔を召喚して私に宿らせたのよ。その結果私は最強の力を得た!今なら誰にも負けはしない!』
あの死体もそういう事だったのか。教団の団体全員を生贄にして悪魔を召喚する。元々利害関係が一致していたから組んでいただけ。そこに情など働く余地がない。
『ジン・アルカッセル。手始めに私を屈辱した貴様から殺してやろう。シルフェード様、いやシルフェードはこの私に跪きその一生を捧げるというなら助けてやらん事もないがな。』
そう言った後に高笑いをするミゴ。
『さて、最後に何か言い残す事はあるか?」
「俺に勝てると思ってんのか、一度負けたのに?」
『クハ、クハハハハハハハハハハハハ!』
再び高笑いをする。
「次にお前は『逆に悪魔となったこの私に勝てると思っているのか?』と言う!」
『逆に悪魔となったこの私に勝てると思っているのか?……ハッ!』
俺は戦源を練り、体を低くして木刀を構える。
「……シルフェ。」
「わかりました。『身体進化』」
シルフェがバフをかける。負ける可能性など万が一にも存在しない。
「あんまり調子に乗らない事だなミゴ。人的有利って言葉を知ってるか?」
『おのれ……!』
闘気と魔力を纏い、戦闘の準備を整える。
「足を引っ張るなよシルフェ。」
「ジンさんこそ。」
俺は駆け出す。昔から俺たちの考え方は一緒だった。だから初めて戦った時から異様に連携がうまくいく。シルフェだからこそ俺は思うがまま全力で一緒に戦える。
「『高速弾』」
『そんな玩具きかぬわっ!』
なるほど強度はそこそこだな。しかしこんなもの元々あてにしていない。
『その程度かジン!』
「んなわけねえだろ。」
本来どれだけ弱くても悪魔の危険度は5だ。しかし、肉体があるならという前提条件がつく。悪魔の力は悪魔が一番使いこなせるのだ。たかが人間がその力を手に入れても結果は目に見えてる。
『なっ!』
「遅え!」
俺は相手の意識を掻い潜るように、正に一瞬で腕の肉を削ぐ。そしてすぐさま俺はバックステップで距離を取る。
『ば、馬鹿なっ!悪魔をも憑依させたこの私が!』
「お前は痛みに対する耐性をつけた方がいいんじゃねえか?少し斬られたぐらいで動きが止まるからダメなんだよ。」
本当に。悪魔を憑依させてこれか。
「あんまりにも弱すぎやしねえか?」
『くそッ!この私が破れるなど、ありはしないのだッ!」
・・・なんか興が冷めちまったな。久しぶりに技を試したかったんだがな。対人戦としては威力が高過ぎる技が多過ぎるんだよなあ。修羅もそうだし。
「それじゃあ拘束させてもらうぜ。大人しくお縄につけよ。」
「と言ってもやるのは私なんですけどね。」
そう言いながらシルフェが地面から木を出現させる。木が鞭のようにしなりながら、ミゴを拘束させようと動く。
『やめろ!近付くな!』
「大人しくしろよ。どっちにしろ俺らがやられたところでもっとヤバいのが出てくるだけだぜ?」
騎士とかはレベル5以上が最低条件だ。例え悪魔そのものが来ても下級悪魔ならボコボコにできる。
『私の側に近寄るなァァァァァァ!』
「ッ!?」
闇魔法が無差別に放たれる。魔力だけは無駄にあるからなほんとに。木が吹き飛び、俺たちは咄嗟に回避する。
『く、クハハハハハハ!さっきのは油断したからだ!今度こそ私の魔法で!』
「ジンさん!」
「おうよ!」
魔法が発動する前に懐に入り、首元に向かい突きを放とうとした瞬間。
『ああ?』
空気が変わった。ミゴは倒れる、否溶ける。
『ど、どうなっている!』
一度崩れて再び体を構築し直しているのだ。何か起こる前に叩き斬ろうと接近するが、それを飛び込む寸前でやめる。
「『氷壁』」
氷の壁が俺とミゴの間に現れる。しかしそれはいとも容易く砕かれた。このパワー、そして体の芯まで身震いするような魔力。
『感謝するぞ人間。そのおかげかこの体を乗っ取る事が出来た。』
「感謝する奴への態度かいそれは。」
その背中からは翼が生えている。悪魔の翼が。そして体は最早人間の原型をとどめていない。黒い皮膚と目、左右合わせて6本存在する手、身体中から生える角のようなもの。
『この私が直々に手を下すという褒美を与えよう。』
「悪魔に乗っ取られましたか!」
『クハハハハハハハ!こうなったらもう手加減はできんぞ!悪魔としての力の全てを使い、貴様らを軽く捻り潰してやろうではないか!』
そう言って悪魔は不敵に笑った。




