25.そして
場所は本当に直ぐ近く。距離的には1キロほど。俺なら1分ぐらいで着く。民間人は俺の事を騎士だと思っているのか立ち止まって話してはいても、俺に話しかけたりする奴はいない。
「まあやる事は騎士となんら大差ねえからなあ。」
俺の目の前に映るのは倉庫だ。確かここは現在使われてない倉庫だったな。
「『氷河の世界』」
俺は倉庫に手を触れ、倉庫の床や壁などいたる所を凍らせる。
「はあっ!」
扉まで凍ってしまったので、木刀でぶち壊して中に入る。中には足が凍り、動けなくなっている男達がいる。俺はゆっくりその男達に近付いていく。
「な、なんだお前は!」
「ん?ただの一般人だよ。」
こんな薄い氷レベル1でも頑張れば壊せるぐらいしかない。しかし、こいつらには効果的だろう。
「さてまあ一応聞いておこうか。お前らの他に仲間はいるか?お前らは何を研究していた?」
「ふん!お前に教えることなど何一つとしてないわ!」
「ふむ。それじゃあ他にも仲間はいそうだな。」
「ッ!」
反応の仕方が絶望した感じではなく、まだ余裕がありそうだからカマをかけてみたんだが。まあ分かりやすい。
「よし。それじゃあ用はねえよ。ゆっくり眠ってな。」
その言葉を最後に全員が唐突に倒れる。雷魔法による気絶だ。使える階位は限られてるが、バフもかけられてないレベル1相手なら余裕で気絶させられる。
「ジンさん!」
外からそんな声が聞こえる。随分と来るのが速いな。もっとかかると思ってたんだが。
「もう終わったんですか?」
「おうよ。取り敢えずこいつら連れて、拷問とかなんかして情報を聞き出せばいいだろ。他に仲間もいるみたいだしな。」
俺は欠伸しつつそう言う。
「取り敢えず今日はもう暗いし、さっさとこいつら連れてって帰ろうぜ。」
「なら早くやりましょうか。」
男達を担いでいき、俺たちはその場を後にした。
「いや、追加任務じゃ。」
その声が響くと同時にローブを羽織った男達が浮かぶ。
「学園長!?」
「ミゴ・アルスフレインの脱獄が確認された。他の教団メンバーが手助けしたようじゃの。」
そう言いながら学園長は一枚の地図をこちらに渡す。
「こいつはわしが運ぶ。その地図のここにおるはずじゃから、向かってくれ。」
地図の一箇所が燃える。ここは確か未開発土地だったはず。
「それじゃ任せるからの!」
そう言いながら空を飛んで学園長はどこかに去った。
「行きましょうか。早めに始末しなければ何をするか分かりません。」
「分かってる。」
俺とシルフェは再び駆け出した。
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私は、私はミゴ・アルスフレインだぞ!たかが平民如きに敗れるはずがないんだ!
この世界の人間は全てこの俺より劣っている。この私に民は財を投げ、女は付き従う。それが当たり前であろう!
この私さえいれば世界は上手く回る。この国は大きく発展する。私には大きな野望とそれを叶えられる力があるのだ!
だというのに!たかが公爵如きが私を侮るなど有り得てはならぬ!しかしそれには力が必要だ。全てを覆す力が。
ならばあの教団も利用してやる。この私が全てを利用してやるのだ。
絶対に失踪だけはせんぞ……!




