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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第1章〜国立グレゼリオン学園〜
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24.追跡

ストックが切れたァァァァァァッッッ!

俺は校外の噴水の近くで待機している。言わずもがな、シルフェを待っているのだ。あいつが遅いというわけではなくて、ただ俺が一時間前ぐらいからもう来ていただけだ。



「なんでもういるんですか。まだ10分前ですよ?」

「俺は人を待たせるという行為自体が苦痛なんだ。そんなに俺が早く来てると意外か?」

「意外ですね。そんな思考回路があるとは知りませんでした。」



そう言ってシルフェとたわいもない会話をする。



「それじゃあ行きましょうか。」

「ちなみに聞いてなかったんだが、今日はどこに行くつもりなんだ?」

「色々なところですよ。」



随分とあやふやな回答だな。まあ最終目的地は決まってるんだから、過程なんてどうでもいいっちゃいいけど。



「取り敢えず服屋に行きましょうか。」

「……何で?」

「ジンさんの服のレパートリーが少な過ぎるからです。ジンさんの服装の種類を二つ以上見たことがありませんよ。」



まあ、一着だけ買ってそれで汚れ全部魔法で落とすって感じで使い回してるし。いくつも荷物があるとめんどくさいんだよな。だから俺が持ってるのは一着の私服と制服のみ。



「だからって別に二人で買いに行く必要あるか?」

「こういう時に無理矢理買わせないと、ジンさんは絶対買いませんからね。もうちょっと人間らしくしてください。」

「お前はお母さんかよ。」



いや、まあいらなくはないんだろうけど。



「ほら、行きますよ。」

「はいはい。」



俺は気怠げにシルフェに着いていった。






==========






疲れた。肉体的にではなく精神的に。



「殆ど俺の生活用品買って終わったじゃねえかよ。」

「だってジンさんは驚くほどに生活力がありませんから。しょうがない事だと思いますけど?」

「必要ねえだろうがよ。」



生活において、省ける無駄は省きたい。そうすると自然に部屋の中は元々あったもの以外は何もない状態になる。ものもないから散らかる事もない。あれ程整頓された部屋はないんじゃないだろうか。



「それは整頓されているんじゃなくて、ただの空き部屋みたいなもんですよ。」

「!?」

「ジンさんは行動パターン驚くほど単純ですから、何を考えてるのか最近分かるようになりました。」



うわ怖い。そのうちこいつ俺の生活まで管理し始めるんじゃないかと内心ビクビクしている。



「それじゃあそろそろ行きますか。」

「お、やっとか?」



俺は腰から木刀を抜く。



「ええ。直ぐそこですからね。アレですよ。」



シルフェはそう言って指先で民家を指す。ま、だろうなあ。悪人が怪しげな路地裏にいたり、工場にいたりっていうパターンなんて普通ない。こういうどこにでもあるようなものに紛れるのが普通だ。



「『身体進化フィジカルエクステンド』切り込み任せますよ。私は結界張って待機してるので。」

「オーケー。」



シルフェの身体強化の魔法が、俺の体を軽くする。この世界に鍵なんてものはない。あっても防犯用の魔法陣とかそれぐらい。だが何も入り口から馬鹿正直に入る理由などどこにもありはせん。



「『氷化(アイスエクステンド)』」



体そのものを氷に変える。それによって壁が凍る。今の体は氷と同一。つまり凍った場所は全て俺の行動範囲内だ。俺は体を瞬時に二階の窓付近に移動させ、二階の窓を木刀で破壊する。



「な、なんだっ!」



なんか杖を持って儀式っぽい事をしてる典型的な悪党魔法使いに向かい、俺は木刀を投げつける。



「なっ!」



魔法使いは思わず防御の姿勢をとるが、もう既にここの下の地面は全て凍っている。ならば俺の活動範囲内だ。俺は空中で魔法使いに向かって飛ぶ木刀を掴み、そのまま思いっ切り斬り伏せる。



「ァ、ァアアアアアアア!!!!!」



奇妙な声を出すが、直ぐに喉を潰し声を止める。



「真っ二つに斬れたわけじゃねえんだからそんな騒ぐなよ。」



そういいつつ、氷化アイスエクステンドを解除。氷も消える。ついでに下に刻まれてた魔法陣も発動の術式を燃やす。



「さて、こいつだけじゃねえよな。」



宗教家が一人とは思えん。布教するにしても、何をするにしても多人数の方が有利。魔力は一階に集まっている。なら残りは一階か。



「魔力反応……まさか!」



俺は全力で駆け出す。階段を飛び降り、直ぐに居間に行くが既に魔法の光に包まれている。



「くそっ!待ちやがれ!」



俺の魔法が発動するより早く、その姿は忽然と消えた。やはり転移魔法か。そりゃあ緊急脱出用のものは用意しとくよなあ。



「だがそこまで遠くには行ってないみたいだな。」



俺は取り敢えず魔法陣の中の自動消滅の術式を消す。証拠隠滅のために魔法陣を消そうと、自動消滅の術式を入れる奴は多い。まあその術式を消してしまえば何の意味もない。



「座標はまだ王都。魔力がかかるからそんな遠くに転移先を設定してなかったんだろうな。」



だが場所さえ分かれば追跡できる。短期決戦。直ぐに決着をつけねえと。



「ジンさん!捕まえられましたか?」

「二階にいた一人だけ捕まえた!後は転移で逃げられたが、術式から逆算できてる!俺は直ぐに追いかけるぞ!」

「私は二階にいる奴を連行します!後からついて来ますから先に言っててください!」

「了解した!」



俺は駆け出す。場所はそう遠くない。俺なら直ぐ追いつける。

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