23.仕事
実力の違いを実感した。入部試験の時も手加減されていたんであろうことを深く実感する。そりゃあ本気出せば、一秒ももたないだろうしな。
「はあ。」
もっと強くならなければならない。たかが同世代程度に二週目のこの俺が負けるなど怠慢に他ならない。修行の量を増やすか?いや、これ以上やれば体が壊れる。体を壊さないで無茶をする。睡眠をしなくていい方法。確かそんなのがあったはず。
「あ、ジンさん。こんなところにいたんですね。」
そうやって校庭の端のベンチに座っていたら、シルフェがやってくる。
「なんの用だ?」
「前に言った邪神宗教のことなんですが。」
そういや最近聞いていなかったな。なんか情報が見つかったのだろうか。
「アルスフレイン家の次男坊を覚えていますか?」
「……ああ、あいつか。」
一瞬思いだせなかった。そういやそんな奴いたなあ。確か名前はゴミとかそんなんな。
「あいつがどうしたんだ?」
「あのミノタウロスを召喚したネックレスのことです。あれは魔物封印石といいまして、魔物調教師の免許を所持する人以外の使用は禁止されているんです。」
ほう。
「ミゴ・アルスフレインは捕まりました。まあそれだけならよかったのですが……」
それだけじゃなかったのか?
「その魔物封印石の入手ルートを辿ってみると、前言っていた邪神宗教の団体と関係があるらしく。」
「国家反逆罪で罪状が増えたと。」
「はい。それで元より父から任されていた私が始末するということになりまして。」
まあ普通大きな組織とかなら、高レベルがいる可能性もあるし対処が出来ん。しかし宗教団体は魔法こそ精通してるが、基本的にどこかに引きこもってるからレベルが低い。だから俺らでも対処が可能なわけだ。
「それで、いつ行くんだ?」
「次の休み、私と出かけましょう。場所は既に学園長の協力で分かっています。そこを気付かれないように遠回りしながらさり気なく近付き、そして攻め入って捕える。一応緊急用の連絡魔道具を持っていくので大丈夫でしょう。」
「出かけるにしても、俺は街に全く興味がないぞ。終始死んだ目をしながら街の中を回る事になるが。」
「あなたはもうちょっと社会に興味を持ちましょうよ。」
だって興味ないからな。この世界でどの娯楽を体験しても、どうしても地球には劣ってしまう。地球は環境だけは異常に良いからな。だけどそれ以上に理不尽な部分があるわけで。高確率で生まれた瞬間バッドエンドとかどんな酷い世界だよ。
「なら武器屋とか図書館とか回りますか?それなら少しは興味出るでしょう。」
「了解した。元々嫌でも行かなきゃいけねえわけだし。」
「ちょっとした息抜きだと捉えれば良いんですよ。ジンさんはいつも根を詰めすぎなんですから。」
そうかなあ。根を詰めてたら今頃話す余裕なんてないと思うが。今も戦源の練習しかしてないし。
「この際だから話すのですが、私は希少属性を一つ持っていまして。」
「なんだ自慢か。」
「自慢じゃありませんよ。支援属性と言われるものです。」
支援属性。確か昔聖女と呼ばれた人が持っていた属性だっけ。
「そういうわけで私は一応ルスト教からある程度のバックアップを受けています。つまり後ろ盾ってやつですね。」
「それで、それが今回の件に何の関係があるんだ?」
シルフェが希少属性を持っているなどどうでもいい。興味がない。まああの出鱈目な強化率には納得がいったが。
「それも踏まえて少し教会にも寄りますから。ジンさんは護衛名義で付いてきてください。」
「俺がお前の護衛かよ。」
守られるような強さじゃないだろ。そこら辺の山賊なら足元にも及ばねえじゃねえか。
「それではまた明日。」
シルフェはこっちに背を向け、そのまま学生寮の方に歩いていく。俺は、引き続き戦源の練習でもするかな。
主人公をどうやって最高にイかれた奴にするのか。それがこの物語の鍵です。




