11.護衛騎士
試合、なあ。俺は一人校庭で木刀を持ち立っている。朝の鍛練が終わったところだ。
「どういう戦い方をするんだか。」
見る感じ大丈夫そうだったが、少し不安がある。というのはこっちの世界に来てから対人戦をあまりしていないからだ。モンスターと人間にできる動きは大きく違うからな。
「まあ、考えても仕方ないか。」
今回の戦いでは手加減は一切なし。全力で潰せば良いだけ。俺は木刀を持ちながら学生寮に戻る。無論朝飯を食べるためだ。
「おい貴様。」
「ん?」
話しかけてきたのはミゴの護衛。学生寮の扉の前に立ってたことから、恐らく待ち伏せをしていたのだろう。
「今日の試合の詳細が決まった。試合会場は第1体育館で9時から行う。一対一で使用武器は自由。制限時間はなし。気絶するか降参すると敗北。何か質問はあるか?」
「ねえよ。」
「絶対に逃げるなどと卑怯な真似をするなよ?ミゴ様がわざわざ貴様ら如きに時間をかけてやっているのだ。」
随分と傲慢な考えだ。しかし傲慢さというのは実力があって初めて身を結ぶもの。残念ながら雑魚が言うならただの馬鹿に過ぎない。
「わかった。んじゃあまた9時で。」
「……いや少し待て。気が変わった。ここで貴様を打ち倒しておこう。」
「ええ?」
「そもそもミゴ様が直接手を下すまでもない。時間の無駄だな。」
そう言いながら鞘から剣を抜く。おいおいここで始める気かよ。
「試合以外での戦闘行為は禁止じゃなかったか?」
「それは建前上ではだ。確認を取ったが、余程大勢の前で行わなければ、問題はない。」
校則緩いな。いや騎士とかを育成する学園だし、気性が荒いだけで怒ってちゃ何もできないんだろう。
「これ以上言葉はいらん!一瞬で終わらせてやる!」
「そうかよ。」
俺は木刀を構え、こっちに飛び込んでくる護衛をよく見る。構えてるのはロングソード。典型的な騎士だ。そういやこいつの名前知らねえな。
「今日は随分と丈夫そうな剣だな。」
「昨日は使い捨ての剣だ。これが私がミゴ様より賜りし剣。魔剣『フェニックス』だ。決して折れず、壊れない。昨日のなまくらとは大違いだ!」
魔剣とは魔法を宿した武器。最強の武具といわれる神器に迫るための武器だ。
「遅い。」
しかし、どんな武具を持とうと使い手が悪ければ意味がない。切りかかってくる騎士の胴を最速で斬る。前世では多数のスポーツをやったが、その中で一番長くやったのが剣道。抜き胴など覚えきれないほどやった。
「ぐっ!」
まあたいそうなことを言ったが、結局腹を打つだけだ。
「どうした?この程度か。このままだと肩慣らしにもならん。」
痛みをこらえて立っているが、距離を取ろうともしていない。武器の構えが雑だ。魔法での牽制もしない。落第点だ。
「もっとできるだろ?」
俺は少し笑みを浮かべる。
「なあ、まさかこの程度じゃないだろ。」
氷塊が俺の周りに形成される。
「そら死ぬぞ。」
ためらいなく打ち込む。全部当たったら死ぬだろう。しかし問題ない。先に襲い掛かったのはあっちだし、こんなに弱いとは思わなかったとでも言っておけばいい。この世界ではよくあることだ。
「こ、こんなところでやられてたまるか!」
剣をふるい氷塊を壊していく。それでもいくつかは刺さる。
「なら眠れ。そのころにはもう終わっている。」
俺は頭を木刀で叩く。確か第一体育館だったな。




