10.罠
受け身をとったせいで土が制服についている。しかもところどころ傷がある。エルは移動しながら弓を俺に向かって打ち続けるのに対し、俺は迎撃しかできないから俺だけがダメージを喰らう。
「この制服かなり丈夫だな。」
「学園長の『賢神』が考案したものらしいからね。」
いくつか当たったが傷一つつかない。相当上位の魔法式を刻んでいるのだろう。
「明日、試合するんでしょ。結構目立ってたよ。」
「まあ目立つだろうな。あんなキラキラした装飾品つけてる奴なんて他にいねえからな。」
ゴミ、いやミゴは体育館に来る時から結構人の目を引いていた。それぐらい普通ではない。
「まあ負けるとは思ってないけどさ、頑張ってくれよ。」
「……やたら気にかけるな。なにか気になることでもあるか。」
昨日いってたことだけじゃ納得できない。
「アハハ。単純にシルと一緒にいた人に興味があってね。」
「シル?……ああシルフェか。」
ということはシルフェの友人かなんかなのか。
「まあ幼少期に一回会ったきりだけどね。それで君に話しかけたのさ。」
「シルフェには話しかけないのか?」
「多分もうあっちは忘れてるだろうからね。誰とか言われたら立ち直れなさそうだし。」
「そうかい。」
あいつってそういうの忘れないタイプだと思うけどな。あ、もう暗くなってきた。
「じゃあな。また会おうぜ。」
「うん。それじゃあまた。」
寮に帰って瞑想でもするか。闘気も増やしたいし。
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sideミゴ・アルスフレイン・ディヴァニーア・ジャルゴ・ティスメイン
私は授業を切り上げ、寮に帰ってきた。パーティを組まなければ迷宮には入れない。しかし一回決めれば変更の手続きがかなり面倒だ。だからこそ我が手にシルフェード様を手に入れるまで、登録するわけにはいかない。
「ファルクラム家の後継はシルフェード様ただ一人。私が取り入れば公爵家にもなれる!そしていずれはあの王族すらも制圧してやろうではないか!」
「素晴らしい計画です。」
ミゴの言葉に護衛が同調する。
「あいつは私より弱い。しかし、どんな汚い手を使ってくるか分かったものではない。」
「はい。卑しき平民です。何をしてもおかしくありません。」
「だからこそ念には念を入れなければなあ。」
私は右手に指輪をつけていく。それぞれが強力な能力を持つ魔道具。そして箱の中にあるネックレスを取り出す。
「やるなら完膚なきまでにだ。」
そのネックレスは禍々しく、ただの魔道具には見えない。しかしそのネックレスを躊躇いもなくつける。
「さて、仕掛けをしに行くぞ。」
「はっ!」
そう言って暗闇の中、試合会場となる体育館へ向かった。




