9.馬
俺たちは突如現れた馬に対し、動揺を隠し切れない。一瞬幻覚魔法かとも思ったが、こんなところで余計目立つようにする必要があるだろうか?いや、ない。つまりこの先生は常にこういう姿という事になるが。
「ファルクラム。俺は獣人ってみたことないんだけど……あんな感じなの?」
「いえ、有り得ません。確かに上位の獣人はその姿を獣に変える事ができますが、部位変化など見た事がありませんしそんな事をする意味も感じられません。」
呪いでも受けてんのかよ。そうとしか考えられない気がするが。
「俺様の事が獣人に見えるのか。だが人間だぜ。」
どんなことがあってそんな風になるんだよ。
「と、俺様の話はどうでもいい。てめえらの事についての話だ。試合をやるんだよな。なら誰かがそれを公平に判断する、いわゆる立会人ってやつが必要になるぜ。賭け試合だからな。」
試合ってそんなんが必要なのかよ。
「本来こうゆうのは教師間では暗黙の了解でなしになってるんだが……まあ面白そうだし俺様が立会人になってやるよ。」
「それって先生としては駄目じゃないんですかねえ……」
「いいんだよ。実力はあるから誰にも文句は言わせねえ。」
俺もそう思うけど、まあちょうどいいだろ。勝手にパーティを組んで難癖付けられたくないし。
「俺様の名はベルゴ・ルーフェだ。ちょうどここに試合申込書があるし、いろいろ書いてさっさと試合受け付けしちまいな。」
そういって一つの紙をわたしてくる。今どこからだしたんだよ。さっきまで何も持ってなかっただろうが。
「明日、楽しみにしてるぜ。面白い試合を見せてくれや。」
そう言ってその男は去っていく。……なんでその頭してるのか聞くの忘れちまった。まあ考えても仕方がないか。
「とりあえず私が書いておきます。アクトさんは書き終わったら渡しに行って、了承をもらっておいてください。」
「俺は?」
「ジンさんはご自由に。強いて言うなら明日に備えるってことぐらいですね。」
じゃあいつもどうりってことだな。明日に備えるもなにもやることなんかなにもないし。
「わかったよ。それじゃあ任せた。」
「ええ、任せておいてください。」
そういって俺は体育館を出る。この学園は体育館も多いし、校庭も異様な広さがある。レベルが上がるとここがどんどん小さく感じてくるらしい。
「今日は魔法を先にやるか。」
そういいながら魔法を展開する。魔法の訓練でメジャーなのは自分の魔法と自分の魔法でぶつけさせるというものだ。
二つの魔法を展開し、威力や方向を間違えないように相殺させるのだ。これが案外難しい。ゆっくりなら簡単にできるが、速度を上げれば上げるほど打ち込む場所がずれたり威力を間違えたりする。
「よし!」
俺は展開されている魔法を次々とぶつける。魔力量や魔力操作なら修練の成果もあってかなかなかのものとなっている。その代わりに俺が使える魔法は少ない。使いやすくて凡庸性があるものが主だ。シルフェなんかは結界魔法や強化魔法、回復魔法などを幅広く使えるし、魔力操作ならシルフェが上だからな。
「うおっ。」
俺の足元に魔法がとんでくる。操作が狂った。もう一回やろうと魔法を再び展開しようとしたところで振り返る。
「エルか。」
「おや、覚えててくれてたんだね。」
猫系の獣人の少女。つまりエルだ。
「何の用だ?」
「いや頑張ってるようだから手伝おうかと。」
そういいながら俺に弓を見せる。
「僕が打つ弓を魔法で撃ち落とすんだよ。」
「矢がねえみてえだが。」
「もちろん魔法弓さ。」
魔法弓……ああそうか。矢を魔法で作るわけだ。
「じゃあ折角だし頼むぜ。」
「うん!任せてくれよ!」
そういってエルは弦に手を触れる。すると黄色の、雷の矢ができる。それも数十本の。
「さあ来い!」
俺も魔力をねり、いくつもの魔法を展開する。
「捉えられるかな?」
こうやっていつもとは違う訓練が始まった。
魔法とかは設定があるだけなんで、気にならない人は覚えなくても多分大丈夫です。




