表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡な英雄記  作者: 霊鬼
最終章〜平凡な英雄記〜
237/240

17.また

真正面から敵をねじ伏せ、破壊神を唯一殺しえたジンの一撃すらも耐えた。これから先はエネルギーの回復を待つだけで、破壊神の勝ちは確定している。



「フフフフフフ、フハハハハハハハハハ!」



破壊神は勝利に酔いしれるようにして笑う。もはやこの世界に破壊神を止めることができるものは存在しない。



「ハハハハハハハ、ハ、ハ……は?」



破壊神は笑いながら空を見たときにはじめて気付いた。そこには一つのお守りがあった。そのお守りの表面には、日光により見にくいが()()()()()()()()()()()。そんなお守りが空で静止していた。



「なん、だ、これは。」



破壊神は世界の記憶(アカシックレコード)を閲覧することにより、全ての情報を得ることができる。しかし破壊神はそれが分からなかった。世界の万象を記録する世界の記憶(アカシックレコード)には存在しないもの。本来、あるはずのないものが破壊神の目には映っていた。



「時は、巻き戻る。」



既に破壊神の手によって魂ごと壊されたジン・アルカッセル。その声を、確かに破壊神は聞き取った。お守りは燃える。燃え盛る。そして一瞬の何かが歪んだ感覚を破壊神が感じた時、その眼前に刃が迫る。



「『絶剣』」



全てを斬り裂く刃が、破壊神の胸元を貫いた。



「な、あ、が、馬鹿な。」



ジンは聖剣を引き抜き、破壊神はその場に崩れ落ちる。



「……俺の、二つ目の夢想技能オリジナル。」



ジンはその左手に燃え盛るお守りを持つ。お守りは少しした後に燃え尽きて塵となった。



「『果てなき戦い(ロード)』」



それは時間を巻き戻す力。支配神から貰ったお守りを代償に一度だけ使える夢想。



「馬鹿、な。ありえない。魂が壊れたのだぞ。体内時間の巻き戻し如きで、どうにかなるものではない。」

「ああ、確かにな。『その物語を続きから(コンティニュー)』みたいな体内時間の巻き戻しは、完全に破壊されたものは元に戻せない。特に魂とかの貴重なものなら尚更だ。」



しかし限定した時間の巻き戻しでさえなければ、話は変わる。



「世界そのものの時間を巻き戻して、記憶を過去に飛ばした。ただそれだけだ。」

「それこそ、有り得ない。ならば私の力も元に戻っているはずだ。」

「忘れたのか、お前がそれを壊したんだぜ?」



世界は巻き戻り、全ての状態が元に戻る。その中で唯一、ジンのみが記憶を保持できる。ただそれだけの力。相手の情報を引き出したり僅差で負けた場合は役に立つが、圧倒的な実力差があるならそれは意味なさない。そう、意味をなさないはずだったのだ。



「本来なら、お前の記憶はここまで持ち越されず、体もしっかりと元に戻ってた。だが、他ならぬお前がそれを壊した。ただのやり直しが、必殺の一手に昇華したわけだ。」

「そ、んな、ばか、な。」



破壊神は絶句する。もしも破壊神が壊したのが『破壊神に虚無世界ゼロが干渉できる』という概念だったのなら、そうはならなかっただろう。破壊神は慎重さを欠いたのだ。



「死にな、破壊神アグレ。お前の負けだ。」

「……ッ!!!」



破壊神は自分の体が崩れていくのを感じながらも、激しい憎悪の感情をジンへと向ける。



「まだだッ!せめて貴様だけは道連れに!」

「……永遠の眠りにつけ、原初の神よ。既に神代は、終わりを迎えている。」



ジンの聖剣に魔力と闘気が込められていく。



「『神鬼乱血』」



最後の一撃が、破壊神の命を刈り取る。あまりにも静かに決着がついた。ジンは疲労からかその場にゆっくりと座り込み、空を見る。



「終わり、か。」



ジンは英霊としてこの場にいる。それは文字通りの終わりである。この戦いが終われば、冥界に行かねばならない。例え英霊であってもその絶対原則に背くことは許されないのだ。



「……シルフェ。」



愛おしそうにその名前を呼ぶ。気を失いながらも、しっかりと生きている姿を見てジンは優しく笑った。ジンは立ち上がり、側に寄ろうとしたが、それよりも早く迎えがくる。



「またな、シルフェ。」



ジンの体が光の球となって崩れていき、天に登っていく。それはジンだけではなかった。各地から光の球が天に登っていく。それは戦いの終わりを示した光であった。



地面から光の雪が登った日、神と人の戦いは終幕を迎えた。

ロードはloadとroadというダブルミーニングとなっています

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ