14.王手
空から風を切り、竜が落ちる。三ツ首の黒竜が破壊神にのしかかる。破壊神も急な攻撃に直ぐには反応できずに、一度その攻撃を受ける。
「創造主に歯向かうとは、やはり貴様は欠陥個体だ……!」
破壊の力が吹き荒れ、アクスドラの体を削り取る。しかし破壊の因子による削りではアクスドラの体全てを削り切ることは叶わず、その肉片から一瞬にして体を再生させる。そしてその再生する中から『魔王』が飛び出る。
「『全てを奪いし覇王』」
多数の能力を並列同時展開。ありとあらゆる伝説技能を複合させた一撃が、その右手に集約される。
「『天魔之衣』『一撃必殺』『神霊降臨』『幻撃』『生命犠牲』『英雄の剣』『万象崩壊』」
それは一瞬だけではあるが、神をも殺しうる一撃へと昇華する。
「『悪魔的終焉』」
その右手の拳は破壊神へと放たれる。破壊神は破壊の因子によって障壁を展開するが、それをいともたやすく突き破る。
「ガァッ!!?」
破壊神はその一撃で吹き飛ぶ。しかしシンヤはこの程度では攻撃の手を緩めない。レイから受け継いだ魔法の力を手繰り寄せ、今発動できる中で最強の魔法を選択する。
「『禁忌』」
飛びゆく破壊神を黒き正方形の箱が包み捕らえる。その箱は三メートルぐらいの辺の長さから、即座に手で掴めるぐらいの大きさに縮む。そして辺りを覆い尽くす程の大爆発が響く。そしてトドメと言わんばかりに破壊神の体を中心として体の中から光の槍が生えた。
「ァ、ガッ!調子に乗るなよ、人間風情がッ!」
しかしそれでも破壊神は止まらない。自分の体から生えた光の槍を壊し、シンヤへと迫る。しかしシンヤの元へと辿り着くより早く、身体中を刻み込まれる。
「久しぶりだね、精霊王。」
「……すまないな、勇者よ。」
「気にするなよ、お前が誰よりも真っ直ぐな奴なのは俺が知っている。よくここで立ち上がってくれた。」
その双剣は二つとも聖剣。『スターダスト』と『メテオスター』。この世に三つしか存在しない聖剣の内の二振りを持ち、破壊神へと向ける。
「破壊神、ここからは一方的にお前が不利だぜ?」
その言葉と同時に破壊神の四方八方から武具が飛び、破壊神を貫く。本来は刺さらないはずの一撃は、因果を曲げる事により突き刺さる。
「因果は決定された。」
傲慢に、一人の男が空で大きく黄金の翼を広げた。その眼は、神ですら見下していた。
「終わりにするぞ、ジン。」
「ああ、言われなくても。」
本来なら、人数を増やしたところで破壊神相手に有利になることはない。戦車に徒党を組んだところで普通は勝てないように、それはこの場合でも同じ。しかしそれは、シルフェードがいなければという話だ。
「強化率はかなり数値ですよ。」
シルフェードの夢想技能は、共に戦う仲間の数だけ力を増す。この時の仲間というのは信頼しあえる仲間であり、決してそこら辺の人間では務まらない。仲間の条件は厳しい分、集まれば集まるほど有利になる。
「『絶剣』」
ジンの一太刀が破壊神を襲う。その一撃は先程とは違い、明らかに拮抗し始めていた。そして、それを黙って見守るわけがない。ジンの背後からヴァザグレイが走り、ジンがタイミングよく下がると同時に前に出る。
「王国剣術奥義五ノ型『羅旋』」
まるで舞を踊るようにしてヴァザグレイの双剣が揺れる。腕、首、腹、頭と次々と身体の部位を斬り裂く。
「『蒼き息吹』」
ヴァザグレイの背後にゆらりと青竜が現れ、その口から蒼き砲撃が放たれる。破壊神はそれを喰らいながらも食い破るようにして蒼き閃光の中から現れる。しかしそれを妨げるようにして、破壊神の頭上から槍が落ちて貫く。
「『死を告げる殲滅の槍』」
槍は中から棘が生え、破壊神の身体を
中から食い荒らす。破壊神はその槍を即座に破壊する。しかし世界最強クラスが複数人いれば、反撃の瞬間すら与えないのは容易なことだ。
「『傲慢之罪』」
シンヤの一言に一瞬だけ破壊神の動きが止まる。その一瞬があればジンも接近ができる。黒き聖剣に魔力と闘気を詰め込まれる。
「無銘流奥義複合ノ型『豪絶』」
鋭き一撃が破壊神を一刀両断する。そしてジンはそのまま破壊神と距離を取り、それに合わせて次の人が攻撃に入る。
入れ替わりで次々と連続で攻撃をし、少しずつではあるが相手を弱らせていく。世界を救う戦いにしては少々姑息な気もするが、それは確かに破壊神を弱らせていった。




