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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
最終章〜平凡な英雄記〜
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7.戦争開始

悪魔が来る。何体もの悪魔が。その全てが思い思いの形をし、異形の存在として人を殺しに来る。それに対して数人の人が立ち塞がる。遠距離攻撃などによって後方支援をする人はおれど、実際に結界の外で戦うのはほんの僅か。しかしそれでも強い。



「貴様が破壊の槍で戦いを始めたのなら、我も同じように返してやろうではないか。」



エースは右手に槍を握る。それは北欧神話のオーディンが持っていた開戦の印にて勝利をもたらす槍。決して的を外さぬ槍。



「『勝利の魔導槍(グングニル)』」



竜人たるエースが全力でパワー込めて放った一撃。それは何体もの悪魔を貫き、大きく爆発する。



「行けっ!勇敢なる戦士達よ!」



爆発の中、エースが叫ぶ。それに反応して数人が飛び出す。決して多くはない。弱者はそこにいるだけで死んでしまうから。あの悪魔の対軍の中に進めるのはそれに相応しい強者のみ。



「人器解放ッ!」



そしてそのどれよりも速くアクトが前に進み、悪魔をその槍で貫く。切り払い、吹き飛ばし、貫く。一瞬にて数百の悪魔が地に落ちる。それを見ながら、一人の少女が大きなハンマーを構える。



「人器シリーズ0、人器『オリジン』」



クラウスターのその声に反応してクラウスターの右手の籠手が起動する。しかしこれはあくまでサポートの為の人器。本来なら人器を使うに値しないクラウスターが人器を使う為の補助道具。



「人器シリーズ2『フィナーレ』」



クラウスターは大きく振りかぶる。目の前に敵はいないというのに、体のバネを活かす為に大きく。



「『超常的な一撃(グランド・インパクト)』」



ハンマーは大きく空を切る。いや、切ったはずだというのに悪魔はそれに連動するかのように何体も吹き飛んでいく。



「試運転にしては上出来だナ!」



クラウスターはニカッと笑う。このように次々と何人もの戦士が悪魔の軍勢へ突っ込んでいく。青竜で敵を一掃したり、方向属性で敵を圧縮して潰したり、単純な力で相手を殺したり。それぞれが自分の力を惜しむことなく使って悪魔を一気に潰す。



「陛下ッ!準備ができましたッ!」

「よし、ならば撃て。」



そして戦士以外にも戦うものは存在する。大きく長い鉄の筒、そこから極太の魔力の砲撃が放たれる。狙いは甘いが、確かに多くの悪魔を減らせる。



「よし、ならばこの調子で撃ち続けよ。我も出る。」



そう言い残し、エースも黄金の翼をはためかせ空を飛ぶ。この魔導砲はいくつもの魔石を使い撃たれている。今回は世界の危機ということで、冒険者ギルドから全ての魔石を無償で提供してもらっていのだ。弾数は撃っても撃ちきれないほどある。



「……まだ七十二柱が見当たらないな。」



フィーノがポツリと呟く。そう、未だに七十二柱の悪魔が出てきていない。ならば苦しいのはこれからであろう。






==========






破壊神は今日、月から降りて自分自身で地上への侵攻を開始した。確実に安全を確保する為に、破壊神はわざわざ一日という期間を取ったのだ。ならば、今は月には誰もいない。そう知っているからこそ、二人の人間がそこにいた。



「おじいちゃん。何でここに来たんだ。ジンの死体を回収するためか?」



シンヤはレイにそう聞く。人というものは魂と体があって初めて機能する。体がなければ人は活動できない。だからこそ、死体を回収しに来たと考えるのが普通だろう。



「そんなもんもうないよ。完全に破壊されてるだろうからね。」

「じゃあ一体何を……」

「あれさ。」



そう言ってレイは指でとある場所を指し示す。そこには黒い刀があった。大地に深く刺さり、血に濡れた一振りの刀が。



「あれは、もしかして……」

「そう、聖剣だ。」

「ああ、なるほど!勇者の魂はあそこに封印される!その魂を引きずり出せばいいのか!」

「……体がないから意味ないだろ、それ。」

「あ、ほんとだ。」



レイは聖剣を地面から引き抜く。そして刀身を眺める。



「そもそも、この聖剣の中にジンの魂はない。」

「え、何で?」

「無条件で魂を宿す武器じゃないのさ。その役目を終えた時、台座に戻すと同時に魂を聖剣に入れ込む。つまりは本来の方法で返還されなければ聖剣に魂を宿す事はできない。」

「なら、なんでここに……?」



レイは聖剣をシンヤへと投げる。シンヤは危なげもなくそれを掴み取る。



「必要なのは、最後までジンに力をかさなかった九代目勇者の力だ。シンヤ、君が二人目の十代目勇者になれ。」

「俺が、勇者に?」

「別に今回限りだ。それに、勇者制度もこれが最後だろうからね。この為に、僕は()()()()()()()()()()()()。」

「ッ!!?」



シンヤは驚く。レイは苦々しい顔をして上を向き、右手で顔を覆い隠す。



「確実に勝てる方法は、これしかなかった。敢えて少数でジンを行かせて、殺させる。それによって聖剣の力を、正確に言うなら九代目の力を使う必要があった。」

「だからって、そんな……」

「……僕だって、かなり嫌だったんだぜ?何年あいつの親友をやってたと思ってるんだ。」

「それは……」



レイはシンヤを指差す。



「時間がない。文句なら、終わった後にいくらでも言いな。」

「……分かったよ。」



シンヤは聖剣を持ち、聖剣の中に意識を落とした。

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