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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
最終章〜平凡な英雄記〜
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5.世代は変わり

深夜、暗き空がどこまでも続く時。エースは王の部屋にいた。



「……報告をしよう。」



エースの声が響く。その声にいつも程の覇気はない。しかし確かな想いが、その声には宿っていた。



「『勇者』ジン・アルカッセルは死亡。しかし、レイの奴があいつを連れ戻す方法があると言った。戦力的な問題点はない。」



そもそもエースは今回の戦いを全員が生き残って終えられるとは思っていなかった。だからこそ半数以上の人類最強クラスの死を覚悟していた。真っ先に勇者が死んだのは驚きだったものの、予想外ではない。それに事前にそういう方法があると聞いていたからこそ、あの状況でジンを行かせた。勝つ為に。



「恐らく、悪魔を倒すのは難しくはない。しかし邪神を倒せるかどうかは、分からない。この我でさえもこの戦いの勝者は分からぬ。」



この戦力であれば、間違いなく悪魔は倒し切れる。しかし悪魔を全員倒し切った後、邪神と戦うほどの余力を残していられるか。それが問題なのだ。こちらは国民が全滅したら負け、しかしこちらの勝利条件は一人残らず殺す事。



「そして七十二柱の復活は、恐らくだが『悪魔王』バアルの反転剣の力によるものだろう。何かしらの条件付きで七十二柱の擬似的な復活をしたと見ていいはずだ。」



七十二柱は一柱いるだけで脅威となる。二柱いれば国も滅びかねないというのに、それが未だに数十柱もいるのだ。戦力差は絶望的。それでもエースは勝てると断言した。それは慢心からか、確かな策があるからか。



「国内ではまだ暴動は起きていない。……国民からの信頼だけは、歴代随一なだけはある。」



第七十二代国王であるカルテ・フォン・グレゼリオン。彼は歴代国王の中でも、凡庸な男だった。新しい事をする事はできず、おおよそ王に向いているとは思えない性格と才能。しかしここまでこの男は王をやってきた。

未だに国民からの反乱が起きないという事実が、カルテという男がいかに国民から信頼されていたかを如実に表している。常に王国中を飛び回り、ほんの少しでももっと幸せな王国を作る為にその命を王国に捧げた男。彼は決して賢い王ではなかったが、間違いなく良い王であった。



「王国は我が守る。決してこれ以上は被害を出させない。」



エースは王の前にある机の上の紙を掴む。王は椅子にもたれかかったまま、ピクリとも動かない。しかしどこか幸せそうに椅子にもたれかかっていた。



「後は任せよ。勝率は低いが、必ず勝ってみせる。」



エースは膝をつく。そして王の前に跪いた。あの傲慢で、人の下にいる事を許さぬエースが。



「お疲れ様でした、父上。」



一言そう言ってエースは立ち、部屋を出た。その部屋の中には、病によってその命を失った一人の男だけが残った。しかしその顔は、未だに安心できない状況だというのに満足げであった。

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