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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
最終章〜平凡な英雄記〜
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1.人対神

「聞こえるか、旧人類共よ。」



頭の中でに声が響く。この世界の生物のすべてへと語りかけられている。言語の壁を越え、そもそも言語を持たない存在でさえもその声は聞こえる。神の力とはそういうものだ。



「終焉の時が来た。短い安息は楽しかったか?」



その声は聞くものを無条件に不安にさせ、絶望させていく。そこには底知れぬ恐怖が存在していた。



「今度こそ、世界は滅びを迎える。戦神は死んだ。しかし、だ。もう慢心はせん。確実に貴様ら旧人類を滅ぼそう。」



『戦神』グラドとの戦いは破壊神を慎重にさせるには十分だった。だからこそ、より確実に世界を滅ぼす手を打つ。一切の油断をせずに世界を滅ぼす。全ては再び自分が最高神の座に返り咲き、全知全能を得る為。



「これは、その為の一手だ。」



黒き月。そこからいくつもの黒い槍のようなものが降り注ぐ。それは五本の黒い槍。そしてそれは、滅びの槍であった。



「さあ、最後の戦いを始めよう。」






==========






その黒い槍は破壊の因子そのもの。触れるもの全てを壊す。それは世界の様々な所へ降り注ぐ。一本は海へ、一本はグレゼリオン王国へ、一本はクライ獣王国へ、二本はオルゼイ帝国へと。その槍は誰も止めることができないほど速く、地面へ落ちる。そしてその真の力を発揮する。


直径千メートル。あまりにも大きな破壊のエネルギーが大きな柱となってそこに弾けた。勿論、そこにいる全ては一瞬にして消滅して。



「グレゼリオン王国の領土の一部が消滅!ティスメイン領に甚大な被害が出ています!」



王宮魔法使いが王の部屋で国王であるカルテにそれを報告する。しかし国王はそれを驚くわけでもなく、嘆くわけでもない。冷静に現状の把握に努める。



「他国はどうなった?」

「同一の槍が四本!一本は海に落ち、一定範囲の海が消滅!もう一本はクライ獣王国へ!こちらも死者多数!」

「あと二本は?」

「オルゼイ帝国の中心部に一つ、辺境部に一つ!()()()()()()()()()()()()()()()!」

「オルゼイ帝国を狙ったか!」



国力で言うなら間違いなくグレゼリオン王国の方がある。しかし、軍事力だけならオルゼイ帝国はグレゼリオン王国でさえ勝てるか分からない。それ程まで強力な国が甚大な被害を受けたとなれば、戦力の低下は当然。



「……オルゼイ帝国への支援はできん!それに第一波にしても弱過ぎる!その地点で何が起きているか確認せよ!」

「はっ!」



そう言って魔法使いは下がる。それに入れ代わるようにしてグレゼリオン王国の王子、エースが出てくる。



「ディザストのみで対処が可能か?」

「……少々キツイだろうな。」

「ならば邪神へは三人だけを向かわせる。勇者、ファルクラム嬢、アクスドラ。それ以外は防衛に回そう。」

「……勝てるのか、勇者は。」

「五分五分といった所だ。勝敗は分からん。どちらにせよ邪神への足止めは必須だ。消耗させておかねば力を溜め続けるだけだからな。」

「そうか……」



国王はどこか苦しげに考える。既に打つ手は全てを尽くした。いくら竜人とはいえ、現国王は決して強くはない。だからこそ、後はもう信じるしかない。



「……エース。」

「なんだ。」

「……いや、なんでもない。直ぐに指示を出せ。お前の案を採用する。」



エースは何も言わずに部屋から出る。再びそれと入れ代わるようにして魔法使いが入室する。



「どうだった。」

「悪魔が領土内に多数出現!更に死んだはずの七十二柱の復活を確認!」

「なん、だと?」



死んだ生物は蘇らない。それは異世界とて常識である。



「見間違いではないのか!」

「いえ、間違いありません!騎士団長達が既に討伐に向かっていますが、流石に限度があるかと!」

「おのれ……想像より遥かに侵攻が早いな。」



更にもう一人が何も言わずに部屋に飛び入ってくる。その顔は間違いなく絶望に染まっていた。



「オルゼイ帝国より連絡あり!帝都、陥落ッ!オルゼイ帝国の国民はこれよりグレゼリオン王国への避難を開始するとのこと!」

「ッ!」



オルゼイ帝国は世界最高峰の軍を保有している。それが、負けた。それはただの負けより意味が大きい。人々が生きるのを諦める材料になり得てしまう。



「他国は!」

「まだ踏ん張っておりますが時間の問題かと!」

「この国が最終防衛拠点か……!」



グレゼリオン王国でさえ余裕があるわけではない。しかし、生き残っているのがこの国のみであるなら逃げ込むのは当然こことなる。



「冒険者も騎士も、戦える奴は総動員で動かせ!出来るだけ迅速に悪魔を全滅させよ!」

「「はっ!」」



二人は下がる。そして国王は疲れ果てた様子で椅子にもたれかかる。その額には汗が流れていた。顔は青白く、とても健康そうとは言えない。



「……頼むぞ、エース。」



そう言って国王は眠りについた。

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