0.英雄記は最後の項へ
最終章、開幕。あまりにも早過ぎる展開、あまりにも自分の書きたいを追求した最後の話。正直言って理解させる気がない書き方をしているな、と思いつつもやめらんねえ。最後まで見れるもんなら見てみやがれ!
君達はあの空間に来ている。白き大地が地平線の彼方まで続き、空はどこまでも黒い。何もなき地、神界へと。
「やあ、閲覧者諸君。」
そして一人の神は君達に語りかける。
「どうもご機嫌よう。私は支配神、全知全能の神である。」
どこか仰々しく彼はそう言い放った。蒼い髪と目、そして黒い眼鏡をかけている。痩せ細っており、のこか弱々しそうにも見える男。
「君達が今から見るのは伝説。時代が移り変わる瞬間。かつて神代からこの時代に移った時と同じように、この戦いの先に新たな時代が始まる。それは人が勝利しても、邪神が勝利しても変わる事はない。」
時代が壊れる事で新たに始まるか。それとも新たに切り開かれる事で始まるか。それを決めるのは、人だけだ。
「だからこそ、俺は人と神の戦いを見届けよう!どちらを勝利させるも俺にとっては容易な事だ!しかしそれは人の営みから外れる!」
彼は、人の可能性を愛している。だからこそ、絶対に人を守ることはない。
「人の文明は、価値は!切り開かれていったからこそ意味がある!幾人もの偉大なる人物が積み上げ!生み出し!そして守る!与えられた力を行使するだけの人の、なんと薄っぺらくつまらないものか!」
彼は人を助けることはない。それは人を助けてしまえば、それは自分の愛した人でなくなると知っているからだ。もし人がそうなってしまうのならば、彼は迷いなく人をその手で滅ぼすだろう。
「これは人が勝ち取るべき戦いである!幾人もの犠牲者が出るだろう!何度も絶望をするだろう!しかし俺は知っている!それでも人は折れることはないと!止まることはないと!」
それは確信を込めた言葉であった。全知全能の神として、何度もそんな人間を見てきたからこその言葉。
「さあ、これから始まるのは単純な英雄記だ!」
自信満々に、それでいて確かに一言ずつを噛みしめるようにして言う。
「世界を脅かさんとする邪神と!世界を救わんとする人!あまりにもそこら中にありふれた物語!探せば無限に出てくるような平凡な物語!」
しかし、それでもそれは間違いなく英雄記だ。誰もが憧れ、渇望するもの。最高の物語。
「それこそが平凡な英雄記!平凡故に、誰もが愛した英雄記!誰もが渇望した英雄記!誰もが憧れた英雄記!」
王道とは、誰もが愛するものであるが故に。
「さあ!ここからはお前らが見ろ!他ならぬお前達が見るんだ!世界を救う英雄記を!」
文面に書き写すとなんとつまらなくありふれた物語か。だからこそ簡単に語ることは許されない。その細部を、その末端まで、その目で見る事に最大の意味がある。
「平凡な英雄記は、そうやってしか語れない。」
さあ、始めよう。伝説を――




