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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第1章〜国立グレゼリオン学園〜
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2.最強の一撃

国立グレゼリオン学園と試験はその時の試験官がある程度のルールに則り決める。つまり条件さえ守ればどんな試験でも有り得るというわけだ。



「試験内容は体育館内に放される魔物を1匹倒し、試験官に魔石を渡す事!これを一時試験とする!」



そう言った瞬間、沢山の魔物が体育館に現れる。大体危険度3。レベル2は頑張れば行ける範囲だし、レベル3の俺とかは余裕で行ける範囲。しかしレベル1でいくには相当の技術と強力なスキルを要する。つまりここで雑魚は振るい落とすつもりなのだ。



「ちなみに協力行為は失格とみなす!己が力のみで魔物を倒すのだ!」



体育館の上の方には監視カメラがある。恐らく光魔法を駆使した高性能の魔道具。地球ならともかくこっちならまず見ない。かなりの資金を持っている証拠だ。



「さて、始めますか。」



全員最初は唖然としていたが、直ぐに戦い始める。言われていないだけで時間制限もあるだろうし。



「どいつにしようかね。」



俺は周りを見渡して行く。すると一際目立つ魔物が端の方に居座っていた。見た目は亀に似ているが、大きさは俺のよく知る亀ではない。5メートルはあるだろう。あそこだけやけに人が集まっていない。というか魔物も近寄らない。



「おいアレ見ろよ。止まり亀だぜ?」

「マジかよ!危険度4の止まり亀か!?」



俺が近くに寄るとそういう話し声が聞こえていた。多分友達かなんかなのだろう。



「なあ。」

「あ?なんだお前。」



俺は迷わずその人に話しかける。興味が出た。止まり亀という名前の由来にも。



「その止まり亀っていうのはなんだ?俺は知らないんだが。」

「はあ?知らないでよくここに来れたな。正式名称だと不動亀っていう危険度4の魔物だよ。実力だけなら危険度5はあるらしいけど、攻撃を受けるまで全く動かないことからそう名付けられたらしいぜ。」



ほう。つまり一撃で仕留めろってことだ。なんともまあ、面白そうな亀がいたもんだ。



「まさかやろうなんて思ってねえよな?お前のせいで止まり亀が動いたらどうするつもりだよ。ここら辺の奴ら全員教会送りだよ。」

「教会送り、ねえ。」



教会送りってどうも慣れない言葉だな。地球だったら病院送りだし。



「お、おい!本当にやるつもりか!」

「やめとけって!どうせ無理だよ!」



そんなん試してみなきゃ分からんだろうし。無理だったらさっさと危険度3の魔物狩って、試験官に試験を終わらせてもらおう。亀がそんな速いとも考えられんしな。俺は亀の目の間に立つ。



「ふう。」



俺は大きく息を吐き、神経を研ぎ澄まさせる。剣に闘気を纏わせる。更にその闘気を圧縮させ、威力を高める。闘気圧縮という技術だ。ここ最近で身につけた。一発打ったら直ぐ解けるけど、元より一撃必殺なら問題なし。


更に俺は木刀に魔力を込めてゆく。強化属性強化魔法。強化属性は無属性の派生属性。水属性や光属性の強化魔法とは違い、魔力を纏わせて能力を強化する。どちらかというと闘気に役割が近い属性だ。



「斬れ。」



俺は一言。たった一言そう呟く。



「『修羅しゅら』」



戦いを意味するその一撃。全ての魔力と闘気を放つが故に、絶対に最後の一撃となる。それが勝利であっても、敗北であっても。亀に木刀が当たった瞬間、あまりにも呆気なくそれでいて轟音を響かせながら黒き刃が亀を通り過ぎる。



「散れ。」



闘気と魔力を混ぜ合わせる。正確に言うなら強化属性の魔力と闘気は混ざり合うことによって、強力な力を持つ。一般的には『戦源』と呼ばれるまた別の力へと変貌するのだ。



「終わりだな。」



魔力のように万能であり、闘気のように強固である。故に内側から破壊するなど容易いことだ。



「後は届けるだけか。」



俺は魔力となって消えた亀の死骸の中から魔石を拾う。



「おいおい!ちょっと待ってくれよ!」



俺の方に走りながらさっきの二人とは違う、1人の男が向かってくる。



「なあ、お前よく不動亀なんて倒せたな!それにその魔力と闘気の操作!見てて惚れ惚れするぜ!」

「なんだお前。」

「やだなあ。同じ受験生じゃないか。」



そう言いながら男は魔石を俺に見せる。



「俺はアクト・ラス。お前も同じ平民だろ。仲良くしようぜ!これから先ずっと一緒の学園で過ごすんだぞ?」

「まるでもう受かったみてえな言い方するな。」



傲慢というよりは自信があると言った感じだが。



「おい!魔石を持ってきたなら早く出せ!そこにいると邪魔だ!」

「あ、すんません。」

「かたいなあ。もうちょっと肩の力を抜いたらどうですか?」



俺らは揃って試験官に魔石を渡す。



「あ、そうだ。お前の名前を聞いてないな。教えてくれよ。」

「……ジン・アルカッセルだ。覚えてくれなくて良いぜ。というか随分と余裕だな。」

「まあ落ちるとは思ってないからね。」



大した自身だ。まあこんなに直ぐに魔物が狩れるということはそこそこ優秀な証拠だ。どれだけウザくても、強者は強者だ。



「それにしてもなんで木刀なんだ?そこまで強いなら真剣とか普通に使えばいいーー



俺は即座に木刀をアクトの首に添える。闘気も魔力もないが、首を突き刺すには十分だ。



「なあ。木刀の何がいけないんだ?ええ?ぶちのめすぞこの野郎。」

「お、おう。すまなかった。まさかジン君にとってこんなに触れて欲しくない話題だとは。」



木刀を馬鹿にする奴は誰であろうと許さない。



「で、何か用があるのか?」

「いやあ、交友関係を持ちたくてね。ほら、平民で強い人ってあんまりいないじゃん?」

「まあ、そりゃあな。」



さり気なく俺の事を平民と断定しているな。まあ貴族が木刀はないわなあ。



「俺は特待生になる事を目指しててね。というかそうじゃないと学費が払えないんだよな。」

「ん?この学校に入れるぐらいの実力があれば冒険者でそこそこ稼げるんじゃないのか?」

「ま、色々と事情があるんだよ。」

「ま、深くは追求しねえがよ。」



俺達はそう言い合いながら体育館を出る。



「さて、二次試験はどんなのだろうね。」

「多分、試験官との模擬戦闘だと思うぞ。いくら試験官が見てるとは言え、絶対にズルしてないかは分からないからな。」



試験官とは言うが確実に学校の先生でもある。先生は最低でもレベル7を超える猛者達。先ず俺らじゃあ勝てないだろうがな。



「ま、取り敢えず二次試験までに魔力と闘気は回復させなきゃな。」

「なんでそんな無茶な運用したんだよ。バカなの?」

「煽ってんじゃねえよ。」



まあ少し考えなしだった事は認めざるをえない。

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