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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第9章〜脅威と平穏は直ぐ隣に〜
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1.クリスマス

新章開幕

時は流れて、雪が降る季節となった。まあ十二月だ。この世界でも十二月二十四日はクリスマスイブだ。由来は分かっていないが、少なくともグレゼリオン建国当時からは存在したらしい。まあ偶然名前と日付が一致した可能性なんてほぼ無いに等しいから、凄い昔から転生者が転移者がいたんだろう。



「……どうする?クリスマスパーティやる?」

「やりませんよめんどくさい。」

「だよなあ。」



まあ俺達には一切関係なかったりするんだが。俺達は10歳ぐらいに出会ってから大体5、6年ぐらい経った。しかし一度も互いの誕生日はおろか、おおよそ何かのイベントを祝うということをしたことがない。



「あ、ですが祝勝会ぐらいならしますか?ジンさん勝ちましたし。」

「もう一ヶ月ぐらい前だろ。」



俺は机に上体を倒す。武闘祭が十一月。そして今日、クリスマスが十二月だ。そんなわけで食堂、ではなくシルフェの屋敷にお邪魔してる。俺はもう最近どこにいても目立つのだ。碌に飲食店にすらいけない。学園も丁度良く冬休みに入ったから、ファルクラム家の当主様が『おいでよ』と言ってくれたわけだ。



「それに、人が集まらない。」

「……まあ、確かにそうですね。」



パーティというのは人が沢山いるから楽しいもんだ。だというのに俺達の友人は全員所在すら掴めない。エースとエルは決戦の為に王国内を飛び回ってるし、アクトとクラウスターは新しい人器を作るとか言って王国外に向かって行った。フィーノはエースについて行ったし、シンヤはオルゼイ帝国に帰った。レイも支配神からの用事でどっかいった。まあ何が言いたいというのなら、俺達しか暇な奴が今はいないのだ。



「そういや、文化祭って何やんだっけ。」

「……やはり一年の行事一切確認してないんですね。少し調べれば直ぐ分かることでしょうに。」



シルフェは呆れたようにして俺を見る。まあ一々見る意味ねえし、どうせシルフェに教えてもらえばいいからな。



「文化祭は二日にかけて行われます。二日とも一般公開で、戦闘学部以外の学部がそれぞれ出し物をするといった感じです。基本的に出し物は全て商学部と協力し、それぞれの学部に合わせた出し物が出されます。例えば魔導学部は生活に便利な魔法陣を作って売ったり、魔法を活かした劇とかをやったりしますね。」



へえ。まあ中々面白そうな気もするな。俺も巡ろうかな。多分当日までにはマップみたいなのも手に入るだろうし、色々と見て回るのもいいかもしれない。



「特に二日目の最後には花火が上がるらしいです。毎年かなり派手らしいですよ。私も見たことはないんですがね。」



……ほう。花火か。恐らく火薬じゃなくて魔力使ったやつなんだろうけど。ま、綺麗なのは間違いないだろう。



「……ふむ。まあ文化祭とかはまだ時間はあるし、後で考えるとしよう。ところでシルフェ、ちょっと窓を開けてくれ。」

「……?いいんですけど。」



シルフェは疑問に思いながら窓を開ける。いや、別に開ける必要はないんだけどそっちの方が被害少ないだろうし。



「……ああ、なるほど。」



シルフェも気付いたのか、なにか吹き飛びそうなものを片付け始める。俺も窓の近くに立つ。そろそろ空を切る音が聞こえ、遠方に何かが見える。それは正に矢のようなもの。しかし超高速で飛来する物体がただの木の矢で耐えれるはずがない、多分何かで加工してあるんだろうなあと思いつつ。よく矢を見る。



「よっと。」



俺は超高速で飛来する鉄の矢を掴み取る。あっつ。てかちょっと溶けてないコレ。



「『冷凍フローズン』」



即座に冷やして溶けた鉄を床に落とさないようにする。弁償なんかできないし。矢には紙が括り付けられている。多分魔力で補強した紙だろう。燃え尽きてないし。



「誰からの矢文ですか?」

「知らん。覚えはない。」



まあ矢文だよな。この威力で矢を投げれるやつと、もしも窓ぶっ壊しても怒られないぐらいの地位があるやつ。それでいてあまり人に知られたくない事を俺に話したいってことだろうけど……誰だ。思いつかん。



「まあ見れば分かるだろ。」



俺は紙を取り外し、広げる。裏には魔法陣が書かれており、恐らくこれで紙自体の強度を上げているのだろう。表面を見るとそこには差出人の名前と要件が書かれてあった。



「……総騎士団長様からの手紙だな。」

「それはまた……」



人類最強。ディザスト・フォン・テンペスト。恐らく俺が人類で唯一勝てない可能性のある人物。その紙には城に来いという事を長ったらしく書いてある。



「城に来いってさ。」

「邪神討伐に関する作戦ですかね。」



かもなあ。まあ、それなら一々こんな手段はとらない可能性が高い。だから割とプライベートなことかもしれない。



「あ、見てくださいよジンさん。」



シルフェはちょうどさっき開けた窓から体を乗り出す。俺もシルフェの後ろから外を見る。そこには少しずつではあるが、雪が降り始めていた。



「いわゆる、ホワイトクリスマスというものでしょうかね。」



子どもがはしゃぎまわり、大人も年に一度のイベントをそれぞれ楽しんでいる。……まあ一部呪詛を唱えてるやつもいるけど。あと数ヶ月で邪神がやってくるなんて信じられないぐらいだ。



「……剣振ってくる。」

「雪、降ってますよ。」

「そんなん気にしないことぐらい知ってんだろ。」



まあ何があっても、俺はいつも通り剣を振るうだけだ。最近、サボり気味だったし丁度いいね。

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