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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第8章~八つの星はその地で最強を決する~
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17.魔王vs勇者②

俺は少し地面を滑りながら着地し、剣を構える。この大会やたら回復能力をもつ奴が多いが、俺は回復系の能力を持たない。これは大きく差が出る。全員が全員、ほぼ不死に近いぐらいの回復力を持っているのだからただの攻撃は決定打にならない。それに対して俺は首を飛ばせば終わりだし、腕を斬られれば十分不利になる。だからこそ、俺は如何にダメージを減らしながら戦うかが肝なのだ。



「行くぞ。」



俺は地面を駆ける。速度は間違いなく上。攻撃力も絶剣があるから恐らく俺の方が上。ただ防御力や再生力、そして応用力は明らかにシンヤの方が上だ。何より厄介なのがそのリーチ。体を変質させればどこまでも攻撃が可能。だからこそ、俺の間合いとシンヤの間合いには大きな差がある。



「無銘流奥義四ノ型『竜牙』」



俺は刀を振るう。その刀から飛ぶ斬撃が放たれ、シンヤを襲う。しかしそれをシンヤは全く意に返さず、そのまま突っ切ってくる。



「硬いな。」



相当硬いのを身に纏っている。有効打になりそうなのは絶剣とか豪覇の破壊力がある攻撃だけだな。そう考えながら距離を詰める。どちらにせよ、俺の剣は基本近距離武器。近づかなきゃ斬れない。



「させないさ。『悪魔神竜アジ・ダハーカ』」



シンヤの腕が取れる。その瞬間に腕はボコボコと急激に膨張していき、それは三つの頭を持つ竜の姿を形成する。しかし形を保つことができないのか、所々は溶け落ちていた。



「『絶剣』」



柔らかいな。明らかな劣化コピーだ。変化形の能力は劣化して使用できるのだろうか。しかし悪魔神竜は元々悪魔と竜の力が入り混じったアクスドラだからこそできる能力。体が適応できずに崩れ落ちていた可能性がある。



「まだだ!」



泥となって崩れ落ちていく悪魔神竜が俺の体をめがけて飛んでくる。俺はそれを瞬時に斬る。毒があってもおかしくない。体にふれさせるのは避けたい。



「『幻速ファンタジック・スピード』」



意識がそれていた瞬間、シンヤが俺の目の前に出現する。そしてその右手にエネルギーが収束しているのが分かる。



「『聖魔之衣カオス・フォーム』『無限加速アルガ・アクセラレート』『一撃必殺ザ・ワン』『神霊降臨クォンウィズム』」



次々とエネルギーが右手に収束する。それは俺の知らないスキルも含まれていた。だが、その全てがヤバい事は見え透けてわかる。



「『絶対防御アブソリュート・キャンセル』」



半透明の緑色の大盾を持ち、それを前に構える。



「砕けっ!」



しかしそれは容易く破壊され、そして俺の腹を大きく貫く。出血量は完全に致死量。そもそも内臓器官が潰れてんだからどうしようもねえ。だが、その代わりにオリジナルも大体読めた。



「なる……ほど、な。」

「この状態で、まだ喋るか。」



シンヤは俺の腹に腕を突き刺したまま抜かない。俺の距離を離せば、絶剣を使われると分かっているからだろう。



「この一撃に、幻撃ファンタジック・インパクトが使われなかった。それは実際喰らったからこそ……よく分かる。つまり能力には、回数制限がある……!」



俺はシンヤの腕を掴む。敢えて、喰らったのだ。回避の方法は確かに存在した。しかしどちらにせよ何らかのダメージは受けていただろう。だからこそ、ダメージを喰らって能力の解析の方を優先した。



「恐らくは一回……多くても二回か三回だろう。強化系や変化系の能力は……時間制限か?十秒ぐらいしか使えねえんだろ。」

「……例え、俺の能力を分かったとしてもこの状況が逆転できると?腹に穴を開けた状態じゃあ戦えないだろ。」

「いいや、戦えるね。」



俺を一体誰だと思っているのか。この程度の苦痛は死ぬほど浴びるように味わった。そして、何より俺は勇者なのだ。



「『その物語を続きから(コンティニュー)』」



奴隷制度を解消させ、弱者の味方となり、魔王を倒す人々の希望となった英雄。八代目勇者にして希望の勇者。その勇者は、死んでも蘇ったという。



「一度きりの蘇りだよ!」



俺は一瞬だけ体が半透明からし、シンヤの腕らかすり抜ける。そして今度はしっかりと実体を持ってシンヤの頭を掴み、地面へとたたきつけた。一度死ねるからこそ、あえて捨てたのだ。



「札を随分切ってくれたじゃねえか。さて、後何が使える?」

「ッ!!!」



倒せるという確信を持っての攻撃。だからこそ、もう使える技が少ないはず。だって使わなくて倒せないなんて洒落にならん。



「まあ、どちらにせよお前がどうこうするより俺が斬る方が速い。」



俺は剣を振り上げる。



「まだだッ!」



しかしこんなところで諦めるようならオルゼイ帝国の筆頭なんてできよう筈もない。しかし逃げるのはできない。それより先に俺が斬る。完全帰宅パーフェクトエスケープでもそれは変わりない。シンヤもそれは分かっている。つまりは行動策は一手のみ。



「『全能たる王(キング・デウス)』ッ!!!」



真正面からの殴り合いだけ。シンヤは胸元から腕を生やして、顔を抑える俺の腕を掴む。そして鈍い痛みが響く。折られた。しかし剣を振るうのは逆の手。そんなもの関係はない。



「『絶剣』」



俺の剣はシンヤの意識を刈り取る。聖剣を消し、俺は折れて使い物にならなくなった腕を押さえながら立ち上がる。



「俺の、勝ちだ。」

『決着!』



ああ、腕痛い。

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