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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第8章~八つの星はその地で最強を決する~
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13.天才vs天才①

準決勝が始まる。その前、会場への入り口。その通路にジンが壁にもたれかかるように立っていた。その通路をレイが通る。



「……勝機はあるのか?」



ジンがそう問いかける。そういう質問をする以上、普通にやったらレイが負けるとジンは思っているのだ。前世、一度たりとて勝てなかったレイすらも負けるかもしれない。それ程までにエースは底が知れない。



「あの王子。僕ですら何の隠し球があるのか読めない。武器の生成、竜人としての力、傲慢の力、因果を決定する力、そしてファルクラムを倒した謎の力。これでまだ恐らくオリジナルが出ていない。この世界は良い世界だけど、唯一の欠点があるなら何をしてくるか分からないって事だね。」



地球の人間は、みんなが出来ることしかやってこない。だからこそ、自分だけの力を持つ人が多いこの世界だと対処が難しい。



「まあ、勝機がないわけじゃないさ。せめて手札を全部公開させてやるぐらいはしてやるよ。なんたって僕は天才だからね。」



そう言ってレイは会場に入る。そしてその少し後、ジンがポツリと言葉を溢す。



「……その言葉が腹が立たないのはこの世でお前とエースだけだよ。」



それはその二人が、間違いなく生まれながらにして他者を蹴落とす強者が故に。その人生に栄光を約束された二人だからこそ。天才という言葉がどうしても似合ってしまう。



『さて、選手が入場しました!』



アナウンスが響く。準決勝に残るだけあって全員が桁違いの強者。観客が増えるのは当然と言えよう。



『一回戦の戦いで、その実力はもう分かったでしょう!間違いなく彼も強者!ここに立つに相応しい存在!他を圧倒する魔力量!魔力制御!魔法構築!魔法使いの一つの完成形に至っていると言えるでしょう!その圧倒的魔法の暴力で相手を圧倒するか!レイ・アルカッセル!』



歓声が響く。レイはその黒い長髪をたなびかせ、軽く笑みを浮かべている。そして向かいの入り口を見る。



『対するは!』



全てを見下すように、傲慢にその男が現れる。そしてそれが許されるのは、その男が力を持っているから。戦力、財力、権力。力の象徴とも言えるその存在。



『今大会の間違いない優勝候補!否、優勝者!そう言い切ってしまいたくなるほどのレベルの違う実力!その実力は一回戦から異常の一言に尽きます!殿下の持つどれか一つの力を持っているだけで、この大会で戦える!もしかしたら優勝できるかもしれない!それ程までに強力な力を複数持ち、未だに底が見えない!黄金王子!エース・フォン・グレゼリオン!』



両者が対峙する。二人ともジンが一度も勝てた事のない本物の天才。



『準決勝第一試合開始!』



その声と同時に、二人は動き始める。エースは無数の武具を、レイは無数の魔法陣を展開した。



「『光の流星群メテオ・ライト・シャワー』」



そしてその魔法陣からいくつもの光の球が放たれる。それをエースは無数の武具で相殺させ続ける。それどころかその光の球を押し除けて武具はレイへと飛んでくる。レイは頭を傾けてその武器を避ける。



「手数で我に勝てると思うなよ。」

「なら、他で勝てばいいだけだよ。」



レイは地面に手をつく。既に展開してある魔法陣を全て消し、自分の足元に魔法陣を展開する。正方形の結界がレイの足元に展開され、武具の攻撃を防ぐ。



「ほう……なら次だ。」



エースの手に光が集まり、一つの光り輝く剣が形成される。無数の武具が飛び交う中、エースは片手で剣を構える。



「『ブリテン王の聖剣(エクスカリバー)』」



エースが剣を振り下ろすと同時に光の砲撃が放たれる。その光の奔流は結界ごとレイを軽く飲み込む。光は少したった後に晴れるが、その中にレイはいない。しかしエースの目はその中に魔力の残滓を捕らえていた。



「転移か……」

「ご名答!」



エースの背後からレイが剣を持ち襲いかかる。その剣は魔法で形成されたもの。本来魔力でできた剣というのは魔力効率が悪く、使えたものじゃない。しかしレイが使うなら話は別。無限の魔力があるならそれも特段問題にはならない。



黄金鱗ゴールドスケイルっ言うのか。」



その剣はエースの周辺に張られる障壁に防がれる。それをレイは鑑定魔法でその名前を調べ、手をつける。



「黄竜の力を魔力によって障壁として張り出す。確かに強力だけど、魔力が絡むならこっちのものだ。」



その言葉と同時にレイは魔力を適切に流し込むことによって障壁を崩壊させる。これは相手の魔力の動きを完璧に捉え、その流れを相手に違和感を与えないように自然に誘導させることによって形を壊すという絶技。

これを実戦でやる魔法使いは通常いない。性質上その魔法に触れなければいけないという行動が、一瞬でも発動が遅くなれば反撃を喰らう可能性が非常に高い。そしてその難易度を高速でやるなどほぼ不可能。それを実戦で完璧にこなすレイがどれほどおかしいのかは、目に見えて分かるだろう。



「『傲慢之罪ルシファー』」



しかしエースも一筋縄ではいかない。傲慢とは、自分が全ての頂点に立つと思い込んでいること。つまり傲慢の力は支配。大気の魔力を支配し、形とする。



「『黄金爪(ゴールドクロー)』」



まるで爪のような形の黄金の三本線がレイの体を大きく裂いた。自分の魔力を使うのではなく、大気の魔力を使った一撃。魔法は自分の魔力と大気の魔力を混ぜ合わせて使うもの。何故なら普通は大気の魔力を操作できないから。だからこそ、レイは反応ができなかった。



「チッ!中々大変だね!」



レイは魔法で体を治しながら後ろに下がる。しかしそれに追撃するようにして武具が生成され、レイに休む暇を与えない。



「どれだけ人が汚そうとも、星の美しさは潰えぬ、それは決して侵されぬものであるから」



そして避けながら魔法を唱える。それは二十一の全天魔法の一つ。



「『純真星スピカ』」



白い膜のような結界がレイを覆う。それはエースの放つ攻撃を全て弾き飛ばす。



「いくよ、黄金王子。僕も本気を出す。」



レイは一言、それはこの世界の言葉ではなく、日本語で言った。



「僕は、賢者である。」

レイの夢想技能に悩んでたから昨日は投稿できなかった

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