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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第8章~八つの星はその地で最強を決する~
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3.混沌vs太陽②

普通、あの規模の炎が人に当たれば死ぬ。それは異世界でも変わらない。特にロウの狂気之炎クトゥグアは中に入った物体を、一瞬で燃やし尽くす。しかし今回は相手が悪かったと言う他ない。



「後ろだよォ!」

「ッ!!」



確実に先程までそこにいたはずのジョーカーが背後にいる。転移魔法ではない。そもそも狂気之炎クトゥグアは魔力を歪め、遠距離への干渉を無効する。自分の周辺に魔法を展開する事は可能だが、点と点を繋げる転移魔法の発動は不可能なのだ。

しかし最速の朱雀を持つはずのロウが捉えられないスピードでの移動ができるはずがない。つまりそれは転移できないはずなのに転移をしているという矛盾が生まれているのだ。



「『混沌の一撃(カオス・スマッシュ)』」



ジョーカーの拳が背後からロウを貫く。ロウはそのまま闘技場の真ん中にある狂気之炎クトゥグアに叩き込まれる。



「骨は折ったけど、どうせ直ぐ治るんだろォ?早く来いよォ。」



ジョーカーはまるで道化師のように、余裕綽綽と手をこまねく。それに答えるように狂気之炎クトゥグアが形を変え、縮小しながら鳥の形へと変わる。それは先程より更に大きい朱雀の形を取っていた。



「神の炎を纏った朱雀だ。地上にこれより早いものは存在しない。」



それは自分の実力に対する圧倒的な自信と、事実であった。間違いなく地上にこれより速い物質は存在しない。未だに朱雀から放たれる熱気により魔力により転移は不可能。つまりは回避すらできずに燃え尽きるはずだった。



「ああ、確かにそうだねェ。」



喜びが混ざった声で突如、ロウの後ろにジョーカーが現れる。



「俺はあんなに速くは動けないよォ。」

「ッ!すざ――

「遅いなァ!」



光の棒。円柱型の長い光の棒がロウの四方八方から迫り、突き刺さる。それに連動するかのように朱雀は地面に落ち、炎と共に消えていく。



「……夢想技能オリジナル、か。」



ロウは答えを出す。確実に魔力的な要素ではない。だからといってあんなに予備動作なく、完璧な転移ができるスキルはほんの僅かな数。少なくとも現在発見されている中では、それが可能なのは怠惰之罪ベルフェゴールのみ。そしてジョーカーはそれを持っていないと、他ならぬロウが知っている。なら、答えは一つに決まる。



「そうさァ。『完全帰宅パーフェクトエスケープ』。俺が望んだ地点にありとあらゆる法則や理論を無視して移動するゥ。」



その範囲はなし。限界が存在しない。想像さえ出来ればどこにでも飛べる。それもなんのコストも制限もなしに。



「なら……私も本気を出そうか。奥の手も確認できたところでね。」

「この状況から抜け出せるのかいィ?」

「ああ、できるとも。真の可能性(トゥルー・ヴィジョン)。」



光が刺さる場所から炎が吹き出る。その体は徐々に燃えていき、まるで炎そのものへとなる。その名は、偶然にもジョーカーのものと似た名であった。



「『太陽之衣(コズミック・フォーム)』」



光の棒は全て燃やし尽くされ、ボロボロと炭になって消える。ジョーカーは反射的に転移をして距離を取るが、それは正解であった。



「『太陽降臨(ゴッド・オブ・サン)』」



火が、光が迸る。それは結界を覆う闇をも吹き飛ばし、火としての根源そのものがそこに現れた。



「無、水、木、土、雷、風、光、闇。この世界に存在する全ての属性は、人が育つ上で存在しなければ成立しなければならないもの。一つとして欠けては、生物は生まれなかった。その中でも火が担うものは、勇気、希望、力。人が進むための力。それこそが私が愛する炎。」



時には人を蝕むだろう。扱い方を間違えれば、容易く人の命を奪うであろう。しかしそれでも、人と共に生きてきた力。それが炎なのだ。



「見ろ!ジョーカー!これが太陽だ!これが炎だ!お前の混沌の力など、太陽の前ではあまりに脆いものに過ぎない!」



しかしジョーカーは止まらない。強大な力を前にしても、ジョーカーは止まらない。



「最っ高だねェ!いつも俺の前にお前は立ってくれるからよォ!」



ジョーカーはロウに手を向け、闇と光の棒がロウへ向かって放たれる。しかしその全てがロウのいる所へすら辿り着けず燃え尽きる。



「出し惜しみはなしさ!」



地面の炎へロウは腕を突っ込む。その炎の中から大きな、大きな槌を引き出す。持ち手が長い大きなハンマーであった。



「はっ!それはこっちのセリフだねェ!」



ジョーカーが一人、二人、三人と増えていく。それは偽物ではなく全てが本物。ジョーカーの完全帰宅パーフェクトエスケープは、望む地点であるならばどこにでも行ける。それは未来でも、平行世界という別の世界さえも。



「らっ!」



ロウは炎の槌を振るう。それを防ぐために一部のジョーカーを吹き飛ばす。しかし何人ものジョーカーがまだいる。



「いくぜェ!俺の最強の一撃をよォ!」



魔力が昂る。それは魔法という形を得て、最強の世界を生み出す。



「『混沌の世界(カオス・ワールド)』ォ!」



世界が歪む。ピキッという音と共に世界が歪み、それはロウの体の中から現れる。光と闇がロウの体を食い破るように現れ、喰らい尽くす。それはロウの力を喰らい、更に力を増し、ロウを喰らい続ける。



ぜなァ!」



そして混沌は大きな爆発を起こす。光と闇の奔流が世界を覆い尽くした。
















「『原初の始まり(プロローグ)其れは魂の灯火(イグニッション)』」















しかしその全てが、ロウの指先一本のその先の炎に収束する。蝋燭に灯るような小さい炎。しかしそこに全ての力が集まった。



「ジョーカー。楽しかったぜ。」

「……かあっ。俺は楽しかねえよォ。」



その小さな炎がジョーカーの胸へ当たり、弾ける。平行世界のジョーカーは消え、たった一人のジョーカーを燃やした。



「嘘つけよ。」



割れた仮面の中の顔は、堪らなく嬉しそうな顔であった。ここに、決着がついた。

完全帰宅パーフェクトエスケープ

自分が望んだ場所に自分だけが移動できるスキル。過去には飛べないが、未来、平行世界、神界にも移動できる。シンプルだが、それ故に物凄く強いスキル。


原初の始まり(プロローグ)其れは魂の灯火(イグニッション)

その場、周辺に存在する自分に対する攻撃全てのエネルギーを灯火に集約。そのまま攻撃の主の魔力や闘気を奪い、動けなくする。そしてそれを放つカウンターのようなオリジナル。連発できないので、最後の一撃に回すように使う。特性上、闘気と魔力のみしか吸収できない。神力による攻撃は防げず、絶剣のような理外の攻撃には弱い。しかし魔力と闘気を使う攻撃ならその全てを無効にして、確実に殺せる故にチート。自分で考えといてなんだが、ちょっと強過ぎたかもしれない。まあ破壊神との戦いでは一切使えないからセーフ。

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