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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第7章〜神を打ち砕く英雄達〜
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8.新しい無銘流奥義

敵は二人。こういう時は先に片方を潰して一体一に持ち込むのがセオリー。しかし三代目の防御は厚い。一万を超える魔物を一人で抑え込んだという逸話はあまりにも有名だ。ダメージが通り安いのは五代目の方。そっちを片付ける必要がある。



「何ちんたら考えてんだ!」



五代目がそのダガーを振り、俺に次々と攻撃を放つ。片手だからか少しいつもより受けにくいのもあって、どんどん押されていく。



「この戦いを楽しもうぜぇ、なあ!」



そう言って五代目が地面を踏み込んだ瞬間、歪む。視界が、空間が、全てが。フィーノの戦いと同じような状況。しかし違ったのはここから。



「狂気に沈めよ。」



腹部に強烈な突き刺さる感覚とともに、体が浮遊した感覚がある。恐らく蹴飛ばされたのだろう。



「視界が歪むだろう?頭が痛いだろう?頭がよく回らねえだろ?」



頭痛がする。頭を何かで殴られているような。思考もよく回らない。気持ち悪い感覚だ。更には視界までどんどん歪むときたら、最悪だな。



「さあ、死に晒せよ。」



そう言って立ち上がろうとしている俺へと、五代目が駆けているのが分かった。



英雄剣術グラングレイル、力を貸せ。」

真の可能性(トゥルー・ヴィジョン)?』

「違う、そっちじゃない方だ。今まではできなかった。だが、お前と語り合える今なら、技に対してしっかりと向き合った今なら、できるはずだ。」



前々から、なんなら前の武闘祭の頃からずっとやりたい技があったのだ。そして今、英雄剣術グラングレイルを覚醒させた今だからこそ。できる技がある。



「無銘流奥義複合ノ型」



七ノ型『神鬼乱血』は元々は、こっちを作るために出来た技だった。全部を合わせる方が、正確に言うなら全魔力を込めた修羅は簡単なのだ。しかしそれ以外の型を複合するのは簡単ではなかった。剣術では可能でも、魔力、闘気をも完璧にコントロールしなければならなかったから。



「『豪天』」



だが、今ならできる。豪覇と天幻を合わせた一撃。超圧縮した戦源を、分裂させる。本来なら成り立たない技を、今ここに実現させる。



「アガっ!」



多方向から迫り来る刃が、全てが最強の刃となりて五代目を切り裂く。トドメを刺すために次の一撃を放とうとした瞬間、俺の目の前に巨大な盾が、いや三代目が現れる。



「やらせんぞ。」

「こっちこそ。」



そのまま盾を構えたまま俺へと突進しようとこっちへ来る。これは単純で強い技だ。盾がある以上、余程のことがない限り自分へとダメージは及ばない。避けようとしてもその時点で味方を守るという目的を果たせる。だからこそ、ここで必要なのは正面から喰い破る勇気だ。



「『豪絶』」



豪覇は外側から全てを破壊する物理最強攻撃。絶剣は過程をすっとばし、斬ったという事実だけを発生させる技。それを合わせるならどうなるか。



「なん、だと?」



盾ごと三代目を斬る。答えは、互いに相乗効果を発生させ威力を何倍にも上げる。細かい原理は説明しないが、そういう結果が残るわけだ。



「ヒハハハハハハ!!!!なんだなんだ面白くなってんじゃねえかよ!」



その倒れる三代目の後ろから五代目が飛び出てくる。



「やろうぜ!戦いをよう!」



血塗れになりながらも俺を殺さんとその両手のダガーに力を込めて、駆ける。そのスピードはさっきより遥かに速い。



「『血塗れた劇場(ブラッディ・サーカス)』」

「『天王』」



俺の四方八方から血でできた偽物が生まれ、俺へと同時に攻撃を仕掛けてくる。それに返すは天幻と王壁の複合奥義。

その全ての刃を、同時に防いでそして全てを返す。血の人形は勿論、五代目も。



「ま、だ。これから、だぜ。愉しくなってきたなぁ、オイ!」

「いや……もう終わりだ。」



五代目がなおも立ち、戦いを続けようとした。しかし三代目が背後から俺に斬られた盾で頭を殴る。五代目はそれで気を失った。



「これ以上は魂の損傷が酷い。回復しなくなる。」

「じゃあ、俺の勝ちでいいのか?」

「ああ、そうだ。俺達はお前を認めよう。それに、戦闘能力という意味ならお前は全勇者でも群を抜いている。片手を失ってもそれなのだから認めざるを得ない。」

「そうかよ。」



お前らも、十分ヤバいと思うけどな。三代目が持つ盾が現役の頃持っていた盾。つまりスターダストだったなら、俺はアレを斬れなかっただろう。更に言うなら五代目も、魂の体でないならばもっと戦い続けたはず。何故かは知らないが徐々に強くなっていたことを見るに、俺も勝てたか怪しい。



「……納得してなさそうだな。」

「そりゃな。」

「ああ、だがそれでいい。いいか、人というのは多少納得できない力でもいいから、勝てばいいのだ。卑劣な力でなければそれでいい。」



そういうもんかね。



「さらばだ十代目。破壊神との戦い、我々も力を貸そう。」

「ありがとよ。」



俺はそう言ったのを最後に、聖剣の外へ出た。

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